2011年7月28日木曜日

企業内におけるメンタルヘルス風土に関する研究

[タイトル]
企業内におけるメンタルヘルス風土に関する研究

[著者]
金井 篤子, 若林 満

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.38, No.1, pp.63-79, 1998.

[アブストラクト]
本研究では、企業のメンタルヘルス風土に関する測定尺度が構成され、その規定因と影響について検討が行われた。無記名による質問紙調査が、民間企業に働く男女595人(有効回答率73.0%)を対象に実施された。因子分析の結果、企業のメンタルヘルス風土測度からは3つの因子が抽出され、「メンタルヘルス風土評価」「メンタルヘルス不調不安」「メンタルヘルス理解」と名付けられた。重回帰分析の結果、メンタルヘルス風土評価は企業の取り組み施策によって規定される一方、職務満足度やディストレスに影響を与えていることが明らかとなった。また、メンタルヘルス不調不安、メンタルヘルス理解は創造的組織人行動の下位尺度であるリスク需要に影響を持つことが明らかとなった。これらのことから、良好なメンタルヘルス風土の醸成の重要性が確認され、そのための方策として、メンタルヘルス施策の実施が提案された。

[キーワード]
メンタルヘルス、労務管理施策、組織風土、創造性

[要約・感想]
論文で直接取り上げているテーマと自分のテーマとが微妙に違うのでなんとも・・・なのだが、とりあえず自分の着目した点をまとめると、以下の通り。

職務満足度の尺度構成として
 「やりがい満足」(「自分の能力を生かして何事かなす機会」「じぶんのしごとそのもの」他2項目)
 「仲間満足」(「自分の職場で仕事をやっていく上での仲間との関係」「職場の雰囲気」他1項目)
 「上司満足」(「上司のリーダーシップ」「決定を行う際の上司の有能さ」他1項目)
 「処遇満足(「この会社での昇進の機会」「仕事の程度から見た給与の程度」ほか4項目)
という下位概念を想定した尺度を構成している。

なお、職務満足度とは別に充実感という構成概念を置き、その測定尺度の中で「充実した気分や自分に対する誇り」という尺度を設け、「誇り」という言葉を充実感に関連させて用いている。ここでは、職務満足度ややりがい満足度と充実感を分けている点が興味深い。

調査の結果から、
ストレッサー要因のうち
 役割曖昧性、役割葛藤、仕事質過重
がやりがい満足度に影響を与えるとともに、
メンタルヘルス風土評価(メンタルヘルスを会社として理解する風土があると思うかについての心理的評価)、
メンタルヘルス不調不安(メンタルヘルスに不調をきたしたときに会社員生活を維持できるかの不安)、
メンタルヘルス理解(メンタルヘルスというものについての理解)
もやりがい満足度に影響を与えていることを示唆する結果が得られている。

さらに、役割葛藤とメンタルヘルス理解には交互作用も存在することも示唆されている。

さらに、職務満足の下位尺度の合計を総合満足度とした上で、重回帰分析の結果、
総合満足度は、
役割曖昧性、役割葛藤、会社のメンタルヘルス施策実施度
と負の因果関係があり、
メンタルヘルス風土評価、リスク受容性
と正の因果関係があることが示唆された。

金井らは特に役割曖昧性が創造的問題解決や充実感、やりがい満足などの企業における個人の前向きな行動や感情を大きく阻害しているとし、役割曖昧性がメンタルヘルス風土を検討する上で重要な要素となるとしている。

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