2008年12月26日金曜日

運転手順書記述に基づくプラント異常時対応操作のナビゲーションに関する研究

タイトル
運転手順書記述に基づくプラント異常時対応操作のナビゲーションに関する研究

著者
西尾 拓也, 五福 明夫

abstract
(1)Visual Disctop Unitを活用して異常時の対応手順をナビゲーションしたい。そこで、そのための、システム設計を検討した。

(2)具体的には、運転手順書に記述された操作手順に基づき、実施しようとする操作(VDUなので操作をモニタリングできる)の妥当性を評価し、誤操作と判断される操作は却下する。効することでコミッションエラーを防げる。

(3)ナビゲーションシステムのデータ構造設計に当たっては、より上位の抽象操作を下位の抽象操作や単一操作に展開していく木構造で表現するとともに、単一操作については、ペトリネットを参考としながら、制御的操作(あるタイムスパンで状態のモニタリングとマニュアルでのコントロールを行う操作)にも対応できるように、多少のモディファイを加えた。これらを最終的には、テーブル型のデータ構造に落とし込んだ。その他、判定アルゴリズムも作成した。

(4)これらの構想を元に、実際に蒸気発生器細管破断事故への対応手順のナビゲーションシステムを試作した。

(5)今後は、プラントシミュレータと提案したナビゲーションシステムを結合させ、異常が発生した時のプラントの挙動の変化に対する適切な対応操作候補の提示について検討を行う。また、機能モデルを用いて運転員の操作がプラントに与える影響波及を推論し、より迅速で適切な対応操作を運転員に提示するシステムの開発を行う。

引用元
日本機械学会第9回動力・エネルギー技術シンポジウム講演論文集, pp.243-248 (2008)

keyword
Operator support system, Operation navigation, Operation manual, Visual display unit

独自のkeyword
データ構造, ペトリネット, 異常時対応

要約・感想
まあ、話として、それほど難しいというか、高度な話ではない。ポイントは、「ペトリネットを制御系操作にも応用できるようにモディファイした」というところだけか。
技術報告だね。完全に。

2008年12月25日木曜日

Passenger and Cell Phone Conversations in Simulated Driving

タイトル
Passenger and Cell Phone Conversations in Simulated Driving

著者
Drews, F. A., Pasupathi, M., Strayer, D. L.

abstract
(1)本論文は、車の運転と携帯電話の使用に関する論文である。

(2)Groeger99によると、車運転のパフォーマンスは3つのレベルで構成される。すなわち、①予め想定したコース上に車をキープするといった「Operational or Control level」、②車に異常接近したり、交差点で左折(日本では右折)する際に他の車のことを考えずに運転するといった「Tactical behavior level」、③ナビゲーションタスクの実行時の失敗などSituation Awarenessに関連した「Strategic peformance level」である。これまでのところ、携帯電話で話をしながら運転する場合のStrategic performanceに対する影響を実験的に調査した研究は少ない。すなわち、他のレベルと同様に、Strategic levelも低下するのか?あるいは、このレベルは携帯電話の使用の影響は受けないのか?が不明であるのが現状である。

(3)「運転に対する注意」という観点で分析する考えがある。「携帯電話を使用していると、運転に対する注意がそがれ、運転のパフォーマンスの低下し、事故のリスクが増す」ということが、いくつかの結果から、示唆されている。しかし一方で、同乗者がいて、同乗者と会話をしている場合には、事故のリスクは低下するという結果もある。この違いはどのように説明されるのか?また、これらの違いは、注意配分の違いによるものなのか?「同乗者との会話と携帯電話での会話は注意や運転パフォーマンスに対してどのような影響をあたえるのか」というQuestionは理論面、応用面両方の点から重要である。理論面では、これら二つの比較から、運転士の注意容量へのそれぞれのContextの影響の同一な面と違いの面が明らかになるという点である。本論文では、著者らは、「異なるContextがタスクに対する注意配分の能力に異なる影響を与える」ということ、すなわち、「たとえ同じようなタスクであっても、そこでの注意配分は文脈に依存する」という考えを提起する。応用面では、どのような文脈が運転者の注意配分の能力に影響を与えるのかをより深く理解することへの一助となるという点である。

(4)既往研究では、「統制」された会話を実験タスクとしていたため、真実にいたっていないと考えられる。そこで、本研究では、特に、「自然な会話」をタスクとし(そのために、被験者と会話する実験協力者は被験者の有人とした)、また、計測する項目についても、(2)で述べた3つの概念に基づいて運転パフォーマンスを計測することとした。さらに、会話のダイナミクスの変化についても着目することとした。

引用元
Jounal of Experimental Psychology, Vol.14, No.4, pp.392-400 . Year

keyword
shared attention, driver distaraction, driver distraction, cell phoneand converasation, passengerconversation

独自のkeyword
Keyword

要約・感想
まだ、最後まで読み終わっていない。

2008年12月24日水曜日

ブレーキ操作解析による列車運転士の異常検出の検討

タイトル
ブレーキ操作解析による列車運転士の異常検出の検討
著者
長谷川 靖, 綱島 均, 丸茂 喜高
abstract
(1)鉄道運行における事故の予防のために、運転員の「不安全な運転行動」を事前に検出できる方法が必要である。そこで、運転士の運転操作から上記を検出する方法を検討する。

(2)特に以下の2つの仮説を立てた。
【A】運転士が正常な状態ではない場合、ブレーキのスムースな調整(ノッチ投入、緩めの操作の仕方)が行えなくなる。(すなわち、ノッチの変更の大きさや変更の頻度が多くなる。
【B】運転士が正常な状態ではない場合、ブレーキの修正が遅れたり不適切となり、実減速度が理想的な減速度に収束しなくなる、あるいは、収束するのに時間がかかる。(すなわち、各レベルのノッチを適切な時間配分で投入するということが難しくなる)。

(3)この仮説が実際に成り立つのであれば、ブレーキの操作量(ノッチ変更の頻度や向き)計測、あるいは、実減速度の計測をすることによって、運転士が正常な状態か異常な状態かを推察できる。

(4)シミュレータを用いた実験の結果、Aについては、熟練した運転士の場合、体に染み付いた癖があるので、ノッチの変更の頻度や変更の向きは、注意量が制限された状態でも違いがないため、Aの仮説は成り立たない。一方、Bについては、注意量が制限された状態と制限されていない状態とで、明確な違いがある可能性が示唆された。

(5)この結果から、Bは、うまく使うことにより、運転士の状態の異常(←パニックになっていたり、他事を考えていたり、で運転に向けられる注意量が低下している状態)を検出できる可能性がある。

引用元
第15回鉄道技術・政策連合シンポジウム講演論文集, pp.225-228, 2008

keyword
ヒューマンファクタ, マンマシンシステム, 運転行動

独自のkeyword
Keyword
要約・感想
とにかく、内容よりも論文の体裁がグダグダな論文。ただ、中身は面白い。特に、上記のBの仮説は、今後、何かに応用できるのではないか?

2008年12月19日金曜日

安全教育としての危険体験の展開

タイトル
安全教育としての危険体験の展開
著者
中村 隆宏
abstract
「危険体験」をはじめ「体験型教育」、「体感教育」といった安全教育手法が注目されている。その内容や手法は多岐にわたり、今後ともさまざまなに発展する可能性を示している。一方で、今後の普及およびさらなる発展のためには、どのようなコンセプトに基づく教育であるべきかといった議論が不可避であり、危険体験という教育手法についてその成り立ちや経緯、実施上の問題点や課題についても検討・整理する必要がある。

 本研究においては、さまざまな展開を示しつつある危険体験教育について、安全教育としての実質的な効果を高め有効な教育手法としての発展の方向性を探る観点から、危険体験教育を実施する教習機関などへの聞き取り調査を実施した。本稿では、調査結果の報告を含め、教育手法開発の背景、教育実施上の課題など、危険体験教育の問題点と今後の展開について検討する。
引用元
安全工学会誌, Vol.47, No.6, pp.383-390 (2008)
keyword
安全教育, 危険感受性, 体験型教育, 体感教育
独自のkeyword
体験教育の実施に対する心構え
要約・感想
全体として、体験型教育を実施する際の心構えを説明した論文。

特に強調されているのは、「体験自体を目的とするのではなく、あくまで、「教育」の中の一つの手段として体験を位置づけるべし」という点。

すなわち、何をどのように教育するのか、体験をさせることを通じて何を教育するのか、何を学ばせるのかをはっきりと定めておく必要がある

このことは、訓練生側にもいえるのではないか?なにを学ぶのが目的で体験をするのかがはっきり分からないと、教育効果がないとはいえないまでも、効果は低くなるだろう。

たとえば、「最初に体験をさせて→説明して(単に、対処手順や、中身を先生→生徒の関係で説明するだけでなく、みんなで議論もいいだろうし、コーチング手法で振り返りさせるの良いだろうし)→再度体験させて」といった教育プロセスを明確にしておく必要がある。

心拍変動にようブリッジチームマネジメント評価に関する基礎研究

タイトル
心拍変動にようブリッジチームマネジメント評価に関する基礎研究
著者
村井 康二, 林 祐司, 塩谷 茂明, 若林 伸和, 河口 信義
abstract
(1)ブリッジチーム員のチームワークの良い悪い、あるいは改善の要・不要の判定などをするにあたって、チームワークの現状を把握しなければならない。そのための、チームワークの効果の評価指標が必要となる。
(2) この研究では、チームワークを、各メンバの心的負荷の大きさや時間変化の具合等を通して、評価できるのではないかと考えた(実験仮説)。
(3) そこで、心的負荷の大きさを測定する方法として、「心拍変動の計測」という生理計測の方法を使い、チームで対応しなければならない課題を遂行中の心拍変動を計測し、各メンバの心拍変動の時間変化をメンバ間で比較し、与えたチーム課題におけるチームワークの効果を分析・考察した。そして、その結果を通じて、心的負荷の計測からチームワークの効果を評価できないかを検討した。(仮説の厳密な検証ではなく、仮説が成り立つかどうかを予備実験的に調べてみた。おそらく、暗に評価方法についても検討したことを言っている。)
(4) 分析の結果、あるメンバが心的負荷が上がる時には、他のメンバは心的負荷が下がるという傾向が継続して見られ、「各役割に応じて適所に緊張状態を作り出し、メンタル面において『メリハリ』がついている」状態が維持されていることが分かった。この結果から、実験対象としたチームでは、「良い緊張感が持続している」ことが推察される。(本当は、主観評価やパフォーマンス評価も必要だろう!!という突っ込みがここで可能。)
(5) この結果から、「各メンバの心的負荷の時間変化のメンバ間での比較」という方法を通じて、チームワークの効果を評価できる可能性を見出せた。
引用元
日本航海学会誌, No.160, pp.18-20 (2004)
keyword
ブリッジチームワーク, 心拍変動, 心的負荷
独自のkeyword
CRMとの関連, 生理指標計測, プロフェッショナルメンバが展開するBTMにおける各メンバのメンタルワークロード
要約・感想
本当に基礎研究。また、論文も抄録っぽいので、詳細な記述はない。ただ、必要な情報は記載されていてる。

仮説の厳密な検証ではなく、仮説が成り立つかどうかを予備実験的に調べてみたというように理解した。おそらく、暗に評価方法についても検討したことを言っているのだろう。

あくまで、この論文では可能性を示唆しているだけであるが、「その時々のメンタルワークロードの変化傾向をメンバ間で比較することによりチームワークの効果を評価する」という方法は面白い。

鉄道安全へのヒューマンファクター研究の取り組み

タイトル
鉄道安全へのヒューマンファクター研究の取り組み
著者
四ノ宮 章
abstract
近年、鉄道の運転事故は大きく減少しつつある。しかしながら、一度発生すると大きな被害をもたらす可能性の高い列車事故(運転事故のうち列車衝突事故、列車脱線事故及び列車火災事故)の3~4割は、運転士等、鉄道従業員のヒューマンエラーに起因しており、今日においても、ヒューマンファクター研究の課題は少なくない。本稿では、鉄道の安全のルールと仕組みの発展を概説した上で、鉄道従業員のヒューマンエラー事故防止に向けた最近の研究の取り組みと課題を紹介する。また、件数としては運転事故の過半数を占めている踏切事故防止対策や人身事故防止対策、そして列車事故時の被害軽減対策に向けた最近のヒューマンファクター研究を紹介する。
引用元
日本信頼性工学会誌, Vol.23, No.2, pp.186-193 (2001)
keyword
Keyword
独自のkeyword
Keyword
要約・感想
本当に、概説。まあ、勉強にはなるが、それ以上のものは得られない。まあ、解説論文である以上、そこまで期待するほどのものでもないが。

鉄道の安全の仕組みとヒューマンファクター

タイトル
鉄道の安全の仕組みとヒューマンファクター
著者
楠神 健
abstract
鉄道の安全を支える信号保安装置の概要とその歴史について、システムのデザインとヒューマンエラーの関係を考察しながら解説した。また、ヨーロッパと日本における高速鉄道の信号保安装置の性格の違いを見ながら、自動化と人間の関係について言及した。
引用元
電子情報通信学会技術報告, Vol.104, No.76, pp.3-5 (2004)
keyword
Keyword
独自のkeyword
Keyword
要約・感想
後半のヨーロッパと日本の高速鉄道の保安装置に関するポリシーの違いが面白い。特に、過度の自動化は「やりがいの低下」「注意力の低下」「異常時への対応力の低下」を招くとするヨーロッパと、高速・高密度運転における安全の確保を運転士の注意力に大きく依存するシステムとすることは、運転士のワークロードの増大を招くとする日本の考え方は、いわば、両方とも正しいとも受け取れ、これらがジレンマにあることを推察させる。

Distributed Cognition: A Conceptual Framework for Design-for-All

タイトル
Distributed Cognition: A Conceptual Framework for Design-for-All
著者
Fischer, G.
abstract
In most traditional approaches, human cognition has been seen as existing solely ‘inside’ a person’s head, and studies on cognition have often disregarded the physical and social surroundings in which cognition takes place. The fundamental assumptions underlying our research are: (1) distributed cognition provides an effective theoretical framework for understanding what humans can achieve and how artifacts, tools, and socio-technical environments can be designed and evaluated to empower humans beings and to change tasks; and (2) applying this framework to people with cognitive disabilities in design-for-all approaches creates new unique challenges, and in return will create a deeper understanding of distributed cognition.
引用元
Proceedings of HCI International 2003, pp.78--82 (2003)
keyword
Keyword
独自のkeyword
Keyword
要約・感想
直接的には、あまり参考にはならず・・・。内容的にも、それほど学術的に目新しいことを言っているわけではなく、「こういうシステムをこういうポリシーで開発しました」という程度のもの。

パイロット訓練用ビジュアルシミュレータ

タイトル
パイロット訓練用ビジュアルシミュレータ
著者
三浦 道哉
abstract
Nothing
引用元
映像情報メディア学会誌, Vol.26, No.11, pp.125-129 (1972)
keyword
独自のkeyword
Keyword
要約・感想
非常に古いフライトシミュレータの解説記事。トレーニングの状況についての簡単な記述があり、それを見ていると、やはり、基本は、「異常時の手順を体で覚えさせる。それを通じて、抽象的な異常事対応技術・知識を身につけさせる」という方向であることが伺える。すなわち、焦り等を直接的に訓練しているのではなく、基本動作を身につけさせて、「焦った場合でも確実に基本動作を取れるように体に覚えさせている」という方向の様子。

2008年12月18日木曜日

大学における事故事例の収集に関する研究

タイトル
大学における事故事例の収集に関する研究

著者

太刀掛 俊之, 山本 仁, 臼井 伸之介

abstract

本研究では、大学における事故事例を体系的に収集及び分類を行い、事故傾向や背景要因について検討した。その結果、事故の発生は実験研究時に多く、事例は大きく2つのタイプに分けられることが明らかになった。多くの事例は、動作やスキルに挙げられる個人の要因によるものであったが、思い込みやコミュニケーションの齟齬といった個人間の要因による事例が認められた。後者については、重大事故につながる危険性があることから具体的事例に基づき、教職員と学生との間の経験及び知識の相違に注目し、大学の教育研究時における安全確保のあり方について論じた。

引用元
電子情報通信学会技術報告, Vol.105, No.238, pp.1-4 (2005)

keyword
事故, 人的要因, 安全教育, 大学
独自のkeyword
具体的な事例の紹介
要約・感想
技術報告ということもあり、かなり記述にあいまいな点がある。

論理的根拠には乏しいが、「権威勾配によってコミュニケーションが薄くなることは、学生の間違った理解を、教員が正す機会を逸し、エラーにつながる可能性がある」という、特に、「理解の誤りを正す機会の喪失」という指摘は面白い。