2011年7月6日水曜日

リスク論に基づく安全・安心の合理的な考え方

[タイトル]
リスク論に基づく安全・安心の合理的な考え方

[著者]
氏田 博士

[掲載]
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学, Vol.51, No.10, pp.646-654, 2006.

[アブストラクト]
まず最近多発する組織事故や不祥事とは何かを考察する。次に安全を担保するための深層防護やリスク概念などの方法論を整理しさらにその基本となるリスク論の問題点を摘出する。リスク論が安全・安心の考え方の基本として認められるためには、人間信頼性評価や組織の信頼性評価の方法論としての十分な検証が必要である。さらに、安全性向上のためには、そしきとして技術的に考慮すべき安全文化や技術者倫理やリスクリテラシーなど、また社会側から組織や技術システムへ働きかける仕組みも不可欠である。最後に、安全性を向上するための安全ファンドなどの積極的な枠組みの動向についても述べる。

[キーワード]
リスク概念、方法論の検証、安全組織、安全のプラス評価

[要約・感想]
前半はつまらないが後半の倫理・リスクリテラシー、安全文化に関する話はなかなか面白い。

・「技術者は社会生活の中で自然にモラルを身に着けている。しかし、問題意識として、追い詰められた状況では誤った判断をする可能性がある。そこで学習目的は、学生の余裕のあるときに事例研究し、すぐに正しい判断ができるように訓練しておく」ことが必要である。

・組織事故や不祥事の「分析をしていて感じることは、その根底にある関係者、技術者の安全意識の低下が見受けられること」。
 →安全管理・リスクマネジメントを「仕事」としてしている。「仕事をよりよくこなす」という点では頑張っているが、そこに「ethics」がないように感じられる。

・「国際原子力機関(IAEA)による安全文化の定義は、「安全にかかわる諸問題に対して最優先で臨み、その重要性に応じた注意や気配りを払うという組織や関係者個人の態度や特性の集合体」である。

・すなわち安全文化とは、「組織が共有すべき暗黙の作業モラルや組織的なモチベーション、熟練技能、等の総体である。広義の安全文化は、価値観、倫理観、等の観念的な基層文化に基づき、労働観、組織観、道徳観、等として表出する表彰文化の一形態とも定義できる」。

・リーズンは安全文化を4つの構成要素からなるものとしているが、「日本の安全文化が有効に機能するには、「議論の文化」を追加すべきと考える。中でも「何事にも疑問を感じそしてそれを表明する態度」が需要。

・「組織は本来ある目的をもって作られる(機能体)が、時間とともに共同体化するわけだが、それを機能体に維持するためには、トップが常に創業者精神を忘れないことであろう」。

・技術者は「会社人の前に社会人、組織の一員の前に一個の個人という当たり前のことを当たり前に認識する」必要がある。
  → 「一個の個人」という点がポイント。あくまで「自分自身としてどう思うか?」という問い掛け。

・「倫理観の醸成のためにはNobless Oblige「高い身分または地位には、勇気、仁慈、高潔、寛大などの徳を備える義務」の自覚が重要」
  → 「誇り」にもつながる話か。職業威信の論文でもこのフランス語は引用されていたな。

0 件のコメント:

コメントを投稿