2011年7月13日水曜日

モチベーショナル・リーダーの条件

[タイトル]
モチベーショナル・リーダーの条件

[著者]
デイビッド C. マクレランド、デイビッド H. バーナム

[掲載]
DIAMOND ハーバードビジネスレビュー編集部監訳:新版 動機づける力 モチベーションの理論と実践, pp.175--210, 209

(日本語原典)Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2003年4月号

(英語原典)
David C. McClelland, David H. Burnham: "Power Is The Great Motivator", Harvard Business Review, July, 1970.


[アブストラクト]
優れたマネジャーの条件とは何か。
マネジャーの欲求パターンを分析することでこの根元的な問いへの答えを求めた。
その結果、組織全体の利益のためにその権力を行使したいという欲求を抱く「組織志向マネジャー」こそ
マネジメント効果が高いことが判明した。
このようなマネジャーは、部下に責任と権限を与え、組織目的を明確にし、チーム・スピリットを醸成する。
逆に、己の成功に走ったり、八方美人を振る舞ったりすると部下のコミットメントが損なわれてしまう。
(ハーバード・ビジネス・レビュー 2003年4月号より)

[キーワード]
動機傾向、権力動機、達成動機、親和動機、マネジメント・スタイル

[要約・感想]
一見すると達成動機が一番望ましく、権力動機は他者を支配し服従させることを欲することをいうような印象を持ってしまう。自分もそう。
でも、この本を読んでみて、ちょっと違うのではないか、ということがわかった。

達成動機は、あくまで上昇志向をもっているかどうか、まさに「成果を上げる」ということへの欲求をもっているかどうかということ。
一方で、権力動機は他者に影響を及ぼす、そのように振舞うことへの欲求。

マクレランドの調査方法を振り返ってみれば、これらが何を言っているのかよく分かる。逆に、調査方法を知らないままこれらの言葉面だけを受け取ってしまうと、大きな誤解を招く。

マクレランドの調査方法は、マクレランドの別の原著から整理すると・・・
マクレランドは、写真を見せて、その写真に好きなストーリを作るように被調査者に指示する。そうして出てきたストーリは、その本人がどのようなことを考える傾向性を持っているかを表す。達成に関するストーリを描いたのならば、その人は達成というものを志向した物事の考え方をする、ということ。他者に影響を与えることに関するストーリを描いたのならば、その人は権力というものについて考えやすい傾向を持っているということ。
なので、マクレランドのいう「動機」とは、その人の生き方・行動の仕方がどういう傾向・志向性をもっているか、ということである。
(おそらく、こういうことから原著の翻訳においては「動機傾向」という言葉が使われているのだろう)

さらには、本書の終りの方(207ページ)にも有るように、以下のような質問が成される。
・マネジャーが以前よりも成績や効率を向上させることについてどのくらいの頻度で考えているのか(達成動機)
・他者と友好的な関係を確立し、維持することについてどのくらい考えているのか(親和動機)
・他人を動かし、影響を与えることについてどの程度考えているのか(権力動機)

このことから、権力動機を持っていることと、「権力を振りかざして支配的・強権的にふるまう」ということとは別の話。権力動機がなければそういう振る舞いはでない、ということは言えるだろうが、権力動機を持っているからといって、そういう振る舞いが必ず起こるということではない。
むしろ、権力動機が低く、達成動機が高いひとは、自分自身の達成だけを志向する人、一匹狼的な人、ということになるだろうし、親和動機だけが高い人は仲が良いという点だけにしか着目しない人、ということなる。

権力動機が悪さをすることもあろうが、優れたマネジャーであるための必要条件として権力動機は求められる、ということである。

もちろん、本書では、権力動機が悪さをするパターンへの手当てとなる概念として「自己抑制」という概念も必要条件として加えている。
これが足りないと、権威主義的に走るが、これがあると、社会的に品のないことをしなくなる。社会に目を向け、その上で、人を動かせられるように振舞う。

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