2011年7月14日木曜日

被職業スティグマ意識と対処方略

[タイトル]
被職業スティグマ意識と対処方略

[著者]
上瀬 由美子, 堀 洋元, 岡本 浩一

[掲載]
社会心理学研究, Vol.26, No.1, pp.25-35, 2010.

[アブストラクト]
The present research investigated relations between percieved occupational stigma and their attributes, the coping strategies of those affected by occupational stigma, and the effects of perceived stigma on global and occupatinal self-esteem mediated by coping strategies. Data from 501 erspondents, a representative set of data stratified by age and gender, showd that (a) approximately 10% of the respondents perceived themselves as occupationally stigmatized, (b) low-income men, especially young or contigent workers, were apt to show awareness of their occupational stigma, (c) five coping strategies in particular (Re-evaluation, Group identification, Social comparison, Attribution of discrimination, and Disengagement) were common, (d) group identification positively enhanced occupational self-esteem in persons who perceived occupational stigma strongly. Lastly, the characteristics of the coping strategies and issues for further research were discussed.

[キーワード]
職業スティグマ, 被職業スティグマ意識, 自尊心, 対処法略

[要約・感想]
スティグマ
・・・人々(自分)の社会的価値を低下させる望ましくない属性。

職業スティグマ(Occupational Stigma)
・・・社会的価値を低下させる望ましくない属性のうち、特に現在その人がついている職業に関するもの。

被職業スティグマ意識(Perceived occupational stigma)
・・・自らの職業にスティグマが付与されていると感じ、そのことによって職業に関連して自らの価値が社会的に低められていると感じている意識のこと。

○研究を通じて全体としてわかったこと。
・まず手続きについて
被職業スティグマ意識は「ステレオタイプ脅威」と「スティグマ自覚」の2つの因子で測ろうとしたが、この2つの因子は因子分析でも抽出された。
ステレオタイプ脅威とは、自分の就いている職業についてステレオタイプが存在していて、それに基づいて自分の社会的評価がなされるのではないか、という不安・怖れ。
スティグマ自覚とは、実際にそのような評価がなされたという自覚。

・被職業スティグマ意識の高低を分けるために、この二つの尺度を用いてクラスタ分析をかけた。その結果、3つのグループに分かれた。さらに、この三つのグループの上記の2つの尺度に関しての分散分析から、両方の尺度とも、3つの群の主効果が有意であり、高低の傾向も両方の尺度で同じであった。このことから、このクラスタ分析にしたがって、被職業スティグマ意識の高低群を分けた。

・対処法略では、「(社会的)価値付け」「集団同一視」「社会的比較」「差別への帰属」「脱同一視」という5つの対処方略が抽出された。

・対処法略と被職業スティグマ意識の高低とで分析をかけると、被スティグマ意識が高いと、、「(社会的)価値付け」「集団同一視」「社会的比較」「脱同一視」が有意に高くなる。
 一方で、全体的自尊心、職業的自尊心を比べると、被職業スティグマ意識が高い群は低い群に比べ、有意に低い。

・パス解析からは、
→スティグマ自覚は職業的自尊心を低下させる。
→ステレオタイプ脅威は集団同一視を導き、集団同一視は職業的自尊心を導く。

・特に集団同一視に関わるパスから、他のスティグマへの対処法略と同様に、職業スティグマについても、集団のほかの成員と結びつきを強め、類似の職業に就く者と自分を同一視する方略が、ストレスフルな状況の対処に有効であることを示している。→要するに、同じ職業に就く人たちの「村」ができる。
なお、ここでの集団とは、「所属集団」ではなく「帰属集団」である。

・なんとなくと思うのは、個々で取り上げている対処法略というのは、態度であって、これらの態度の形成が、意図的に行われたのか、あるいは無意識的であっても、スティグマをうけたことによって促進されたことなのかはわからない。実際に論文でもそう指摘されている。

・スティグマ自覚やステレオタイプ脅威が高いと「価値付け」が高くなる、というのは不思議。認知的不協和??

・なんとなく、「価値付け」と「自尊心」がどういう関係にあるのかは興味がある。

***

なんとなく、「ステレオタイプ」というのがすごく会社を覆っている気がする。いや、会社だけではなく、社会全体でもそうだな。。。
ステレオタイプは、働きがいや誇りという概念と関連性を持った概念だとは思うな。

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