2011年7月27日水曜日

組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

[タイトル]
組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

[著者]
田中 堅一郎

[掲載]
経営行動科学, Vol.15, No.1, pp.1-28, 2001.

[アブストラクト]
The purpose of the present study was to review the studies on the measurements of organizational citizenship behavior (OCB), determinants of them, the similar and the related concepts of OCB. Several major definitions of OCB were indicated and compared with similar concept (i.e., prosocial organizational behavior, organizational spontaneity, extra-role behavior, contextual performance), and related concept, i.e., whistle blowing, organizational retaliatory behavior. The author commented on the various OCB scales used in the previous studies, e.g., Smith et al. (1983) and Podsakoff, et al. (1990). Factors affected on OCB were examined: organizational justice (procedural justice, interactional justice, distributive justice), supervisor's leadership, job satisfaction, organizational support, organizational commitment, mood in workplace, personality factors, and demographic factors, and the reasons people performed OCB were examined. Finally, the future direction of sudies on OCB was discussed.

[キーワード]
組織市民行動, 組織コミットメント

[要約・感想]
組織市民行動についてのレビュー論文。
参考になる点がちらほら。読みながら考えた点をいくつか書き出すと・・・

1.「組織市民行動とは何か」という問いに対しての既存研究の答えの問題点として、「本人たちがどう捉えているか」という点が考慮されておらず、「役割内外」という議論を「外から見て(職務規定から見て)外か内か」という点で議論している点をあげている。たとえ職務規定になくても、当人たちが役割内と思っていればどうするのか?という点に課題がある。

2.組織市民行動の構成概念(定義に基づく組織市民行動は、さらにその中でどのような行動に分かれるのか)に関して、Organの構成概念にあるスポーツマンシップが面白い。内容として挙げられているのは「不満を言わない、ささいな苦情を口にしない、無礼に対する不平を言わない、そしてつまらないことを裁判沙汰にしない」。これは、まさに高校13年生的風土(の裏返し)!

3.組織市民行動はあくまで「行動」という点がポイント。例えば、「部外者が組織を批判していたらそれに反論する」はあくまで行動であり組織市民行動(忠誠行動)。一方で「部外者が組織を批判していたら嫌な気持ちなる・反論したいと思う」だとこれはあくまで心の中の動きであり組織コミットメントや集団アイデンティティとなる。ここで大きな問題。行動と心の関係。心の動きがあったからといって行動がなければそれはどうなのか?逆に行動があるからといってその人はコミットメントが強いといえるのか?
→実際に論文の中でも指摘があった。
「組織市民行動が組織に対する「行動」の概念であるとすれば、組織コミットメントは組織に対する「態度」の概念であるといえるかもしれない」

4.「組織市民行動が態度概念というよりも行動レベルの概念であるので、組織市民行動は組織内の自分以外のメンバーに「彼は積極的に行動する」などと認知されてはじめて組織市民行動としての意味を持つ」⇒ここポイント。計測する上では主観評価だけでなく客観評価も必要だということ。

5.アメリカ、オーストラリア、日本、中国を比較した研究から、日本・中国ではアメリカ・オーストラリアと異なり、「礼儀正しさ」は職務としてすべきことという認識。このことから、著者は、「日本企業では従業員が長い期間勤務すればするほど、彼らの自社に対する忠誠心や「愛社精神」が育まれて、個々の従業員が組織への自発的な貢献が仕事の一部のように見なされていくことをも示唆している」と結論している。

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