2011年7月28日木曜日

企業内におけるメンタルヘルス風土に関する研究

[タイトル]
企業内におけるメンタルヘルス風土に関する研究

[著者]
金井 篤子, 若林 満

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.38, No.1, pp.63-79, 1998.

[アブストラクト]
本研究では、企業のメンタルヘルス風土に関する測定尺度が構成され、その規定因と影響について検討が行われた。無記名による質問紙調査が、民間企業に働く男女595人(有効回答率73.0%)を対象に実施された。因子分析の結果、企業のメンタルヘルス風土測度からは3つの因子が抽出され、「メンタルヘルス風土評価」「メンタルヘルス不調不安」「メンタルヘルス理解」と名付けられた。重回帰分析の結果、メンタルヘルス風土評価は企業の取り組み施策によって規定される一方、職務満足度やディストレスに影響を与えていることが明らかとなった。また、メンタルヘルス不調不安、メンタルヘルス理解は創造的組織人行動の下位尺度であるリスク需要に影響を持つことが明らかとなった。これらのことから、良好なメンタルヘルス風土の醸成の重要性が確認され、そのための方策として、メンタルヘルス施策の実施が提案された。

[キーワード]
メンタルヘルス、労務管理施策、組織風土、創造性

[要約・感想]
論文で直接取り上げているテーマと自分のテーマとが微妙に違うのでなんとも・・・なのだが、とりあえず自分の着目した点をまとめると、以下の通り。

職務満足度の尺度構成として
 「やりがい満足」(「自分の能力を生かして何事かなす機会」「じぶんのしごとそのもの」他2項目)
 「仲間満足」(「自分の職場で仕事をやっていく上での仲間との関係」「職場の雰囲気」他1項目)
 「上司満足」(「上司のリーダーシップ」「決定を行う際の上司の有能さ」他1項目)
 「処遇満足(「この会社での昇進の機会」「仕事の程度から見た給与の程度」ほか4項目)
という下位概念を想定した尺度を構成している。

なお、職務満足度とは別に充実感という構成概念を置き、その測定尺度の中で「充実した気分や自分に対する誇り」という尺度を設け、「誇り」という言葉を充実感に関連させて用いている。ここでは、職務満足度ややりがい満足度と充実感を分けている点が興味深い。

調査の結果から、
ストレッサー要因のうち
 役割曖昧性、役割葛藤、仕事質過重
がやりがい満足度に影響を与えるとともに、
メンタルヘルス風土評価(メンタルヘルスを会社として理解する風土があると思うかについての心理的評価)、
メンタルヘルス不調不安(メンタルヘルスに不調をきたしたときに会社員生活を維持できるかの不安)、
メンタルヘルス理解(メンタルヘルスというものについての理解)
もやりがい満足度に影響を与えていることを示唆する結果が得られている。

さらに、役割葛藤とメンタルヘルス理解には交互作用も存在することも示唆されている。

さらに、職務満足の下位尺度の合計を総合満足度とした上で、重回帰分析の結果、
総合満足度は、
役割曖昧性、役割葛藤、会社のメンタルヘルス施策実施度
と負の因果関係があり、
メンタルヘルス風土評価、リスク受容性
と正の因果関係があることが示唆された。

金井らは特に役割曖昧性が創造的問題解決や充実感、やりがい満足などの企業における個人の前向きな行動や感情を大きく阻害しているとし、役割曖昧性がメンタルヘルス風土を検討する上で重要な要素となるとしている。

2011年7月27日水曜日

職務動機づけ向上に関する発達的プロセスの検討

[タイトル]
職務動機づけ向上に関する発達的プロセスの検討

[著者]
戸梶 亜紀彦

[掲載]
感情心理学研究, Vol.17, No.3, pp.231, 2010.

[アブストラクト]
None

[キーワード]
モチベーション、 動機付け、 職務特性 ハックマン&オルダム 

[要約・感想]
社員の動機付けの発達モデルを職務特性理論をベースにしながら構想している。
あくまで構想しているだけで実証はまだまだ。

職務動機付けを高める要因として�職務の意味理解、�職務の達成、�パフォーマンスの評価、�ソーシャル・サポート、�職務の自覚という5つを挙げている。これはなるほどなぁと思う。

大学生が行う対人サービス活動のやりがい感、効力感の低下・向上要因

[タイトル]
大学生が行う対人サービス活動のやりがい感、効力感の低下・向上要因

[著者]
関谷 大輝, 湯川 進太郎

[掲載]
感情心理学研究, Vol.17, No.3, p.228, 2010

[アブストラクト]
None

[キーワード]
感情労働, 情動知能 楽観製

[要約・感想]
「やりがい」で検索をかけた結果でてきた論文。

目的は、「大学生が行うアルバイト、ボランティア、実習の諸活動(対人サービス活動)において、表出すべき感情と本心の齟齬から生じる一種の葛藤である感情的不協和に伴う不快感が活動態度に及ぼす影響をかくにんすること、および、情動知能(EI)および楽観製が活動態度悪化意に対して持つ緩和効果について検討すること」である。

結論は「対人サービス態度に関しては、他者の感情を敵s手うに理解して、自己の行為の指針にする能力に着目する必要があることが明らかになった」

重回帰分析をかけてるんだけど、そもそもR2が低すぎない??有意だといっても、これでは・・・。

経営理念の浸透が顧客と従業員の満足へ及ぼす効果—事例企業調査研究から—

[タイトル]
経営理念の浸透が顧客と従業員の満足へ及ぼす効果—事例企業調査研究から—

[著者]
松葉 博雄

[掲載]
経営行動科学, Vol.21, No.2, pp.89-103, 2008.

[アブストラクト]
The purpose of this research is to verify the management metho based on the concept of Service Profit Chain (SPC) advocated by Heskett et al.(1994, 1997). The proposed hypothesis is "The permeation of the management philosophy is the tool that makes Customer Satisfaction (CS) and Employee Satisfaction (ES) to be compatible". However, the management method based on SPC is a chain of causality, and the primary factors in this chain of causality, especially the primary factor that links CS and ES, were not known to us. In order to verify the hypothesis, I have applyied SPC as the management method in actual management. As a result, it became clear that deep permeation of management philosophy is a factor in making CS and ES compatible. An interesting discovery is that the CS is being detemined almost entirely by human interactions. I discussed the point at issue from five different viewpoints and finally state the solution.

[キーワード]
Service Profit Chain, customer satisfaction, employee satisfaction, management philosophy

[要約・感想]
「CSとESが両輪となって、相互に結びついている」というモデルについて、「CSとESを結び付けているのは企業理念である」とする仮説を立てて検証している。

ただ、ここでのポイントは企業理念が「CSをESによる良循環経営」というものをである点。
なのでこの研究は、ようするに、そもそもそういうことを志向する企業文化を創りたいという意識があるなかで、本当にCSとESが「企業理念の浸透」という要素を軸にして結びついているのか確認しているというもの。
なので、あくまでそういうことを企業理念に掲げている点がポイント。一般化は難しいだろう。

結果としては、経営理念の浸透度がCSとESを両立させている要因であることが確認された。

FW: 組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

追記 
従業員のポジティブな気分も組織市民行動に結びつくことがいくつかの研究で報告されているらしい。
気分一致効果?

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Wednesday, July 27, 2011 1:42 PM
To: '論文DB'
Subject: 組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

[タイトル]
組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

[著者]
田中 堅一郎

[掲載]
経営行動科学, Vol.15, No.1, pp.1-28, 2001.

[アブストラクト]
The purpose of the present study was to review the studies on the measurements of organizational citizenship behavior (OCB), determinants of them, the similar and the related concepts of OCB. Several major definitions of OCB were indicated and compared with similar concept (i.e., prosocial organizational behavior, organizational spontaneity, extra-role behavior, contextual performance), and related concept, i.e., whistle blowing, organizational retaliatory behavior. The author commented on the various OCB scales used in the previous studies, e.g., Smith et al. (1983) and Podsakoff, et al. (1990). Factors affected on OCB were examined: organizational justice (procedural justice, interactional justice, distributive justice), supervisor's leadership, job satisfaction, organizational support, organizational commitment, mood in workplace, personality factors, and demographic factors, and the reasons people performed OCB were examined. Finally, the future direction of sudies on OCB was discussed.

[キーワード]
組織市民行動, 組織コミットメント

[要約・感想]
組織市民行動についてのレビュー論文。
参考になる点がちらほら。読みながら考えた点をいくつか書き出すと・・・

1.「組織市民行動とは何か」という問いに対しての既存研究の答えの問題点として、「本人たちがどう捉えているか」という点が考慮されておらず、「役割内外」という議論を「外から見て(職務規定から見て)外か内か」という点で議論している点をあげている。たとえ職務規定になくても、当人たちが役割内と思っていればどうするのか?という点に課題がある。

2.組織市民行動の構成概念(定義に基づく組織市民行動は、さらにその中でどのような行動に分かれるのか)に関して、Organの構成概念にあるスポーツマンシップが面白い。内容として挙げられているのは「不満を言わない、ささいな苦情を口にしない、無礼に対する不平を言わない、そしてつまらないことを裁判沙汰にしない」。これは、まさに高校13年生的風土(の裏返し)!

3.組織市民行動はあくまで「行動」という点がポイント。例えば、「部外者が組織を批判していたらそれに反論する」はあくまで行動であり組織市民行動(忠誠行動)。一方で「部外者が組織を批判していたら嫌な気持ちなる・反論したいと思う」だとこれはあくまで心の中の動きであり組織コミットメントや集団アイデンティティとなる。ここで大きな問題。行動と心の関係。心の動きがあったからといって行動がなければそれはどうなのか?逆に行動があるからといってその人はコミットメントが強いといえるのか?
→実際に論文の中でも指摘があった。
「組織市民行動が組織に対する「行動」の概念であるとすれば、組織コミットメントは組織に対する「態度」の概念であるといえるかもしれない」

4.「組織市民行動が態度概念というよりも行動レベルの概念であるので、組織市民行動は組織内の自分以外のメンバーに「彼は積極的に行動する」などと認知されてはじめて組織市民行動としての意味を持つ」⇒ここポイント。計測する上では主観評価だけでなく客観評価も必要だということ。

5.アメリカ、オーストラリア、日本、中国を比較した研究から、日本・中国ではアメリカ・オーストラリアと異なり、「礼儀正しさ」は職務としてすべきことという認識。このことから、著者は、「日本企業では従業員が長い期間勤務すればするほど、彼らの自社に対する忠誠心や「愛社精神」が育まれて、個々の従業員が組織への自発的な貢献が仕事の一部のように見なされていくことをも示唆している」と結論している。

組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

[タイトル]
組織市民行動—測定尺度、類似概念、関連概念、および規定要因について—

[著者]
田中 堅一郎

[掲載]
経営行動科学, Vol.15, No.1, pp.1-28, 2001.

[アブストラクト]
The purpose of the present study was to review the studies on the measurements of organizational citizenship behavior (OCB), determinants of them, the similar and the related concepts of OCB. Several major definitions of OCB were indicated and compared with similar concept (i.e., prosocial organizational behavior, organizational spontaneity, extra-role behavior, contextual performance), and related concept, i.e., whistle blowing, organizational retaliatory behavior. The author commented on the various OCB scales used in the previous studies, e.g., Smith et al. (1983) and Podsakoff, et al. (1990). Factors affected on OCB were examined: organizational justice (procedural justice, interactional justice, distributive justice), supervisor's leadership, job satisfaction, organizational support, organizational commitment, mood in workplace, personality factors, and demographic factors, and the reasons people performed OCB were examined. Finally, the future direction of sudies on OCB was discussed.

[キーワード]
組織市民行動, 組織コミットメント

[要約・感想]
組織市民行動についてのレビュー論文。
参考になる点がちらほら。読みながら考えた点をいくつか書き出すと・・・

1.「組織市民行動とは何か」という問いに対しての既存研究の答えの問題点として、「本人たちがどう捉えているか」という点が考慮されておらず、「役割内外」という議論を「外から見て(職務規定から見て)外か内か」という点で議論している点をあげている。たとえ職務規定になくても、当人たちが役割内と思っていればどうするのか?という点に課題がある。

2.組織市民行動の構成概念(定義に基づく組織市民行動は、さらにその中でどのような行動に分かれるのか)に関して、Organの構成概念にあるスポーツマンシップが面白い。内容として挙げられているのは「不満を言わない、ささいな苦情を口にしない、無礼に対する不平を言わない、そしてつまらないことを裁判沙汰にしない」。これは、まさに高校13年生的風土(の裏返し)!

3.組織市民行動はあくまで「行動」という点がポイント。例えば、「部外者が組織を批判していたらそれに反論する」はあくまで行動であり組織市民行動(忠誠行動)。一方で「部外者が組織を批判していたら嫌な気持ちなる・反論したいと思う」だとこれはあくまで心の中の動きであり組織コミットメントや集団アイデンティティとなる。ここで大きな問題。行動と心の関係。心の動きがあったからといって行動がなければそれはどうなのか?逆に行動があるからといってその人はコミットメントが強いといえるのか?
→実際に論文の中でも指摘があった。
「組織市民行動が組織に対する「行動」の概念であるとすれば、組織コミットメントは組織に対する「態度」の概念であるといえるかもしれない」

4.「組織市民行動が態度概念というよりも行動レベルの概念であるので、組織市民行動は組織内の自分以外のメンバーに「彼は積極的に行動する」などと認知されてはじめて組織市民行動としての意味を持つ」⇒ここポイント。計測する上では主観評価だけでなく客観評価も必要だということ。

5.アメリカ、オーストラリア、日本、中国を比較した研究から、日本・中国ではアメリカ・オーストラリアと異なり、「礼儀正しさ」は職務としてすべきことという認識。このことから、著者は、「日本企業では従業員が長い期間勤務すればするほど、彼らの自社に対する忠誠心や「愛社精神」が育まれて、個々の従業員が組織への自発的な貢献が仕事の一部のように見なされていくことをも示唆している」と結論している。

2011年7月25日月曜日

職務満足、組織コミットメント、組織公正性、OCBが職場の有効性に及ぼす影響

[タイトル]
職務満足、組織コミットメント、組織公正性、OCBが職場の有効性に及ぼす影響

[著者]
西田 豊昭

[掲載]
経営行動科学, Vol.13, No.3, pp.137-158, 2000.

[アブストラクト]
This study tested a model of the relationship between job satisfaction, organizational commitment, organizational justice, organizational citizenship behavior, and work group performance. Most research on the nature of relationship between job performance has not yielded convincing evidence that such a relationship exists to the degree most managers believes. One reason for this might lie in the way in which job performance is measured. Numerous studies have reported that using organizational citizenship behavior to supplant more traditional measures of job performance may result in more robust relationship between job satisfaction and job performance. In this study 2076 emplyees who provided self-report answers designed to examine the relationship between job satisfaction, organizational commitment, organizational justice, organizational citizenship behavior, and work group performance. Results from Study supported the hypothesized model but also suggested that alternative models fit the data well.

[キーワード]
職務満足、組織コミットメント、組織公正性、組織市民行動、共分散構造分析、ワルド検定

[要約・感想]
結構組織市民行動のレビューは参考になった。
秀逸な指摘が以下のもの。
「ほとんどの従業員は自分自身の職務満足の変化に対応させて、自分自身の生産性を減少させてしまうと、会社から直接的な制裁を受けてしまうということを十分認識しているので、たとえ職務満足が低くても自分自身の生産性は変化させず、そのかわりに直接的な制裁を受けにくいOCBなどの任意の行動を変化させる」

このことから、組織行動は「職務規定行動」と「組織市民行動」の2つから成り立っていて、それぞれをドライブする要因は異なっていることが示唆されている。

調査の結果は、端的に言うと、次の2点。
・組織に対して心理的な愛着を感じている人(情緒的コミットメント)
 職場環境や同僚・上司との人間関係など、外在的満足感を感じている人
 仕事上の手続きが公正であると感じている人
 は、
 組織に対して積極的に参加し、同僚との付き合いも大切にする
 さらに、こうした行動は
 職場業績にも弱いながらも因果関係にある。
  ⇒ ここでの「参加」というのは、あくまで「組織の和」「仲良くなりましょう」のための参加!!

・仕事そのもののや達成感などからくる内在的満足感を感じている人
 組織に対して心理的な愛着を感じている人(情緒的コミットメント)
 は、
 周囲に対してよく気を配る
 さらに、こうした行動は、
 職場業績に中程度の因果関係をもっている。
  ⇒ 気を配る、というよりは、
     周りのミスをフォローしたり、
     アサーションしたり、
     先読みしたり、
     といった
     組織のパフォーマンスに直結する行動のこと。
  ⇒ 本来は、こっちがまさに組織市民行動としてみたい部分なのではないかい??

特に後者はなかなか興味深いかも。。。。


ただ、論文全体で見た場合、
誤字脱字がおおい。
ただ、それ以上に、内容に明らかな誤りもある。
この誤りのせいで論文で述べられている点のどちらが正しいのかがわからない。
これはまずいのではないか??
非常に残念・・・。

2011年7月22日金曜日

組織シチズンシップ行動とその規定要因についての研究

[タイトル]
組織シチズンシップ行動とその規定要因についての研究

[著者]
田中 堅一郎, 林 洋一郎, 大渕 憲一

[掲載]
経営行動科学, Vol.12, No.2, pp.125-144, 1998.

[アブストラクト]
In this study, we examined the factors which determine organizational citizenship behavior (OCB), voluntary and extra-role behaviors by emplyees within organizations. Japanese emplyoyee ( N=187) completed questions about OCB, justice in orgnizations, leadership styles of their superiors, job statisfaction, organizational commitmen, and organizational support. Multiple regression analyses revealed that: a) ther higher procedural justice was evaluated, the more Japanese emplyees were likerly to display
OCB, b) the effect of sitributive justice on OCB was weaker than procedural justice and interactive justice, c) as higher-level Japanese emplyees had more job satisfaction or organizational commitment, they were more likely to display OCB. In addition, Japanese employees who evaluated organizational support more highly were more likely to display OCB. Covariance structure analysis indicated that the evaluations of interactive justice and supportive leadership by superiors indirectly enhanced OCB. Based on the results of analysises, we discussed OCB in Japanese corporations.

[キーワード]
組織市民行動, 誇り, 組織コミットメント,

[要約・感想]
組織市民行動がどのような要因に基づいて引き出されるものかを調べた論文。

まとめると、
(1)
対人的公正→功利的コミットメント→組織内外OCB
というパスが見られた。

(2)
支援的リーダーシップ→職務満足感→組織内外OCB
というパスが見られた。

(3)
組織サポートが組織内外OCBの規定要因になっていた

(4)
功利的コミットメントは組織外OCBの規定要因
情緒的コミットメントは組織内外OCBの規定要因
となっていた。


基本的なことだけど、
組織的コミットメントが功利的コミットメント、情緒的コミットメント、存続的コミットメントの3つで構成されている
というのを再確認した・・・。

興味深いのが、「やりがいのある仕事」という質問項目と「誇りを持っている」という質問項目が因子分析で一つにまとまった点。
この間の自分の調査結果とも合致している。
ということは、一般に、日本人にとってはそういうことなのかな?

2011年7月21日木曜日

しぐさと感情の関係の探索的研究

[タイトル]
しぐさと感情の関係の探索的研究

[著者]
荒川 歩, 鈴木 直人

[掲載]
感情心理学研究, Vol.10, No.2, pp.56-64, 2004.

[アブストラクト]
Categorical theory (e.g. Ekman, 1971) and dimensional theory (e.g. Russell, 1980) are popularly used todiscribe feelings and emotions. However these two theories have been largely ignored in gesture studies. One reason appears tobe that the research has been based on of facial expressions and words, as such as not been applied to other studies.
This research examined the relationships between feelings and hand movements. 106 students (53 pairs) participated in the expriment, where the talked to each other about carious emotional themes, and then filled in questionnaires on their feelings. Their conversations were videotaped. The cumulative duration of self-adaptors and gestures, as well as the velocity, size, smoothness and accent of gestures was rated by 3 coders. The results indicated that some feeling do have an affect on self-adaptors and gestures, while other feelings, however, were different that the theoretical underpinnings would have suggested.

[キーワード]
None,
感情 しぐさ 手 進化

[要約・感想]
今までの感情研究は顔の表情を題材にした研究だったが、それだけで果たしてよいのか?という問題意識から、「手のしぐさ」に着目した研究を行ったと言うもの。

著者の主張が表れているのは、以下のところ。
「Ekmanのように進化論を援用し、基本感情は伝達の必要性があるために残ってきたものだと考えると、本研究の結果は、以下のように解釈できる。感情には、表情研究が注目したような伝達する必要性がある表情に加えて、対応した表情がないか、あるにしても他の表情と混同されやすい感情状態、つまり伝達する必要のあまりない感情状態の両方があり、しぐさには後者の感情状態が現れてくる可能性があることを示している」

要するに、「手のしぐさ」は伝達のための感情とは異なる感情が表出されたものである。「適応」のための行動。
不安や集中、支配や服従などが含まれたもの。

行動と感情との結びつきに関連した研究としては一つの知見ともいえるか・・・。

FW: 目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

追伸2

 ・不安、嫌悪、絶望、恥・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されないと 弱くなる (!?)

ここだけ何故なのかわからない。直感に反する。
達成可能性が高い目標が達成されないと、直感的には強くなると思うんだが、、、。

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Thursday, July 21, 2011 2:43 PM
To: '論文DB'
Subject: FW: 目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

追伸

目標が達成されると、とりあえず、ポジティブな気分が喚起されるし、
達成されないと、ネガティブな気分が喚起される。

(喚起される、というよりは今回の実験手続きから言えば、「連想される」が正確だが)

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Thursday, July 21, 2011 2:35 PM
To: '論文DB'
Subject: 目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

[タイトル]
目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

[著者]
川畑 光代, 桑原 尚史

[掲載]
感情心理学研究, Vol.11, No.1, pp.13-23, 2004.

[アブストラクト]
The purpose of this study was to examine the effects of importance, probability and urgency on affective arousal in goal achievement situations. The contents were 53 items extracted from factor analysis on goal achievement. Participants were 648 university students. Participatns were asked to rate one of the affects (anxiety, surprise, relief, joy, happiness, anger, sadness, pride, shame, disgust, despair, hope) for each given achievement or non-achievement-items. The results suggests that (1) the factor of goal achievement strongly regulated the arousal of every affect except for surprise, and (2) the factors of importance, probability and urgency of goal achievement influenced on the intensity of affective arousal.

[キーワード]
affect, arousal, goal, cognitive apprisal, 目標設定, 目標達成,認知的評価, 感情

[要約・感想]
「認知を通じて感情が喚起される」という枠組みの下で、どのような認知がどのような感情を引き起こすのかを研究した論文。

特に「目標」に関わる認知的評価と感情との結びつきを実験により調査している。
具体的には、
認知的評価として・・・
(1)目標が達成されたかどうか
(2)目標を達成することの重要性
(3)目標達成の可能性(・・・自身の能力に対する信念)
(4)目標達成の緊急性

感情として・・・
不安、驚き、安心、喜び、幸せ、怒り、悲しみ、誇り、恥、嫌悪、絶望、希望

結果を述べると、
(1)目標が達成されると、
      安心、喜び、幸せ、誇り、希望 
  という感情が喚起される。
  逆に、
  目標が達成されない(できない)と、
      不安、怒り、悲しみ、恥、嫌悪、絶望
  という感情が喚起される。
  一方、驚きに関しては、達成度合いとの関連はない。

(2)重要性、可能性、緊急性では以下の通りとなる。
 ・安心、幸せ・・・
   重要性が高く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強く喚起される
 ・安心
   可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強く喚起される
 ・誇り、希望・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されると 弱くなる。
 ・不安、嫌悪、絶望、恥・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されないと 弱くなる (!?)
 ・不安・・・
   可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されないと 強くなる。
 ・怒り・・・
   重要性が高く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されないと 強くなる。
 ・悲しみ・・・
   可能性が高く、かつ、緊急性が低い 場合に 目標が達成されないと 強くなる
 ・驚き・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強くなる。


目標の達成に関する認知的評価と生起する感情を結びつけた点は非常に面白いと思う。
また、予備実験も非常に丁寧になされていて、素晴らしい内容だと思った。

FW: 目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

追伸

目標が達成されると、とりあえず、ポジティブな気分が喚起されるし、
達成されないと、ネガティブな気分が喚起される。

(喚起される、というよりは今回の実験手続きから言えば、「連想される」が正確だが)

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Thursday, July 21, 2011 2:35 PM
To: '論文DB'
Subject: 目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

[タイトル]
目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

[著者]
川畑 光代, 桑原 尚史

[掲載]
感情心理学研究, Vol.11, No.1, pp.13-23, 2004.

[アブストラクト]
The purpose of this study was to examine the effects of importance, probability and urgency on affective arousal in goal achievement situations. The contents were 53 items extracted from factor analysis on goal achievement. Participants were 648 university students. Participatns were asked to rate one of the affects (anxiety, surprise, relief, joy, happiness, anger, sadness, pride, shame, disgust, despair, hope) for each given achievement or non-achievement-items. The results suggests that (1) the factor of goal achievement strongly regulated the arousal of every affect except for surprise, and (2) the factors of importance, probability and urgency of goal achievement influenced on the intensity of affective arousal.

[キーワード]
affect, arousal, goal, cognitive apprisal, 目標設定, 目標達成,認知的評価, 感情

[要約・感想]
「認知を通じて感情が喚起される」という枠組みの下で、どのような認知がどのような感情を引き起こすのかを研究した論文。

特に「目標」に関わる認知的評価と感情との結びつきを実験により調査している。
具体的には、
認知的評価として・・・
(1)目標が達成されたかどうか
(2)目標を達成することの重要性
(3)目標達成の可能性(・・・自身の能力に対する信念)
(4)目標達成の緊急性

感情として・・・
不安、驚き、安心、喜び、幸せ、怒り、悲しみ、誇り、恥、嫌悪、絶望、希望

結果を述べると、
(1)目標が達成されると、
      安心、喜び、幸せ、誇り、希望 
  という感情が喚起される。
  逆に、
  目標が達成されない(できない)と、
      不安、怒り、悲しみ、恥、嫌悪、絶望
  という感情が喚起される。
  一方、驚きに関しては、達成度合いとの関連はない。

(2)重要性、可能性、緊急性では以下の通りとなる。
 ・安心、幸せ・・・
   重要性が高く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強く喚起される
 ・安心
   可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強く喚起される
 ・誇り、希望・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されると 弱くなる。
 ・不安、嫌悪、絶望、恥・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されないと 弱くなる (!?)
 ・不安・・・
   可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されないと 強くなる。
 ・怒り・・・
   重要性が高く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されないと 強くなる。
 ・悲しみ・・・
   可能性が高く、かつ、緊急性が低い 場合に 目標が達成されないと 強くなる
 ・驚き・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強くなる。


目標の達成に関する認知的評価と生起する感情を結びつけた点は非常に面白いと思う。
また、予備実験も非常に丁寧になされていて、素晴らしい内容だと思った。

目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

[タイトル]
目標に対する認知的評価が感情喚起に及ぼす効果

[著者]
川畑 光代, 桑原 尚史

[掲載]
感情心理学研究, Vol.11, No.1, pp.13-23, 2004.

[アブストラクト]
The purpose of this study was to examine the effects of importance, probability and urgency on affective arousal in goal achievement situations. The contents were 53 items extracted from factor analysis on goal achievement. Participants were 648 university students. Participatns were asked to rate one of the affects (anxiety, surprise, relief, joy, happiness, anger, sadness, pride, shame, disgust, despair, hope) for each given achievement or non-achievement-items. The results suggests that (1) the factor of goal achievement strongly regulated the arousal of every affect except for surprise, and (2) the factors of importance, probability and urgency of goal achievement influenced on the intensity of affective arousal.

[キーワード]
affect, arousal, goal, cognitive apprisal, 目標設定, 目標達成,認知的評価, 感情

[要約・感想]
「認知を通じて感情が喚起される」という枠組みの下で、どのような認知がどのような感情を引き起こすのかを研究した論文。

特に「目標」に関わる認知的評価と感情との結びつきを実験により調査している。
具体的には、
認知的評価として・・・
(1)目標が達成されたかどうか
(2)目標を達成することの重要性
(3)目標達成の可能性(・・・自身の能力に対する信念)
(4)目標達成の緊急性

感情として・・・
不安、驚き、安心、喜び、幸せ、怒り、悲しみ、誇り、恥、嫌悪、絶望、希望

結果を述べると、
(1)目標が達成されると、
      安心、喜び、幸せ、誇り、希望 
  という感情が喚起される。
  逆に、
  目標が達成されない(できない)と、
      不安、怒り、悲しみ、恥、嫌悪、絶望
  という感情が喚起される。
  一方、驚きに関しては、達成度合いとの関連はない。

(2)重要性、可能性、緊急性では以下の通りとなる。
 ・安心、幸せ・・・
   重要性が高く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強く喚起される
 ・安心
   可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強く喚起される
 ・誇り、希望・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されると 弱くなる。
 ・不安、嫌悪、絶望、恥・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が高い 場合に 目標が達成されないと 弱くなる (!?)
 ・不安・・・
   可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されないと 強くなる。
 ・怒り・・・
   重要性が高く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されないと 強くなる。
 ・悲しみ・・・
   可能性が高く、かつ、緊急性が低い 場合に 目標が達成されないと 強くなる
 ・驚き・・・
   重要性が低く、かつ、可能性が低く、かつ、緊急性が高い 場合に 目標が達成されると 強くなる。


目標の達成に関する認知的評価と生起する感情を結びつけた点は非常に面白いと思う。
また、予備実験も非常に丁寧になされていて、素晴らしい内容だと思った。

2011年7月20日水曜日

社会的アイデンティティ研究の概要

[タイトル]
社会的アイデンティティ研究の概要

[著者]
柿本 敏克

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.37, No.1, pp.97-108, 1997.

[アブストラクト]
本稿の目的は、第1に社会心理学における集団間関係研究の中心の一つである社会的アイデンティティ研究の概略を紹介することである。理論的に重要な点を取り上げながら紹介し、現在問題となっている論点をいくつか示す。次に集団間関係にともなって生じる内集団ひいき現象について、その基本的諸要素とそれらに対してこれまでなされた代表的な理論的考察を論述する。

[キーワード]
集団間関係, 社会的アイデンティティ, 内集団ひいき

[要約・感想]
なんかよく分からない。
専門的すぎてようわからん・・・。
単に文字を追っただけだわ。。。。さっぱりだ・・・。

とりあえず、わかったこと。
・社会的アイデンティティという概念が自尊感情と関連して議論されていることや、集団のメンバによる集団間差別化、ステレオタイプなどとも議論されていること。
・基本的な前提として、人は環境を範疇化することによって世界の有意味な秩序を求めること、人は自己概念を維持sないし高揚するように努めること、集団ないしカテゴリーの自尊意識をもまた達成し維持するよう努力すること、といったことが置かれいる。

職業生活における目標設定の効果に関する実証的研究

[タイトル]
職業生活における目標設定の効果に関する実証的研究

[著者]
窪田 由紀

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.21, No.2, pp.149-157, 1982.

[アブストラクト]
本研究の目的は現在の職業生活への適応の度合いに及ぼすキャリア目標設定の効果を検討することであった。回答者は390名の民間企業組織体の従業員であった。本研究で検討した仮説は次の通りであった。
(1)将来の職業生活に主体的に目標を設定している者(目標設定群)は目標を設定していない者(無目標群)に較べて現在の職業生活によりより適応を示すであろう。
(2)目標設定群のうち、現在の職務遂行が目標達成に結びついていると認知しているものはそうでない者に較べて適応的であろう。
(3)現在の職場環境条件と現在の職業生活適応度の関係は目標設定群よりも無目標群についてより強いであろう。
得られた結果は次の通りであった。
仮説1,2はおおむね支持された。すなわち、人は職業生活に目標を設定しているとき、そして現在の職業遂行に高い道具性を認知しているとき、現在の職業生活によりよい適応を示した。職場環境条件と職業生活適応度の関係の強さに関する結果は明確でなかった。仮説3については更なる検討が必要とされた。
次の段階としては、以下の3つの要因による目標設定効果の違いに関する条件分析的研究が必要であることが論銃いられた。目標設定する課題の複雑さの程度、目標の困難度、目標の時間的広がりがその要因である。さらに目標設定を促す要因についての検討の必要性が述べられた。

[キーワード]
目標設定、キャリア目標、職業生活、ワーク・モチベーション、期待理論、目標設定理論

[要約・感想]
要するに、
自身のキャリアに関する自分自身の目標(もっと簡単に言えば、自分なりの自己実現の目標)を描けている人にとっては、現在の職場環境条件(給与や労働条件など)よりも、今の仕事が自分のありたい自己実現像と結びついていると思えるかどうかが、現在の職務により強く動機づけられる。また、そう思えていれば、とともに、たとえ環境条件が良くないと思っていたとしても、その悪印象は職業生活への適応の度合いを低下させることはないだろう。

逆に、自分なりの自己実現像を持たない人は、現在志向的となり、現在の職業生活への適応度の良し悪しは、職場環境条件の認知に強く影響されるであろう。

結果はというと、・・・まあ、それはアブストラクトの通り。

結果は、まあ、そうなんだ。。。という感じで受け止めるしかないが、その後の考察がなかなか面白い。
(1)何らかの将来に対する目標を持っているか、という点だけでも、職業生活への適応や仕事へのパフォーマンスを高めることが示唆されている。理論的には、実現可能性や手段的適切さのようなものも効いてくるのではないか、目標をどこまで具体的にブレークダウンして実現可能な目標にしているのかが効いてくるのではないか(要するに、夢は動機づけを高めないが、目標は動機づけを高める)と思われるが、結果から見れば、とりあえず「夢」を描いているだけでも効果がある模様。これは面白い。

(2)目標を設定している人は職業生活に対する適応度も高く、モチベーションも高いことがわかったとして、次の実践的課題は「目標を持っていなかった人に目標を設定させるにはどうすればよいか」である。これは非常に難しい。おそらく、持っていない人に持てと言ったところで、まったくピンと来ないだろう。考察でも述べられているが、そもそも「設定させる」という表現があやまり。各人が主体的に目標を設定するには、外側の人間(本人ではない我々)は何をすべきか?

(3)(2)の問題についての今後の研究の進め方も面白い。キャリア目標を設定するようになったキッカケがどのようなものなのかの事例収集を通じて見つけられないか、という考え方。これは、現在の文脈で言えば、コンピテンシーにつながる話だろう。

日本人を対象とした誇りの非言語的表出について

[タイトル]
日本人を対象とした誇りの非言語的表出について

[著者]
有光 興記

[掲載]
感情心理学研究, Vol.17, No.3, p.246, 2009.

[アブストラクト]
None

[キーワード]
pride, nonverbal expression, Japanese

[要約・感想]
結構面白い!
prideとプライドと誇りという三つの言葉が互いに少し違うのではないか、ということが実験から示されている。
もう少し詳しくしりたいところ。

要約すると、喜び、怒り、驚き、pride(既往研究に基づいて表出させた(のかな?)ので、ここではprideとしている)誇りを表出させた写真を13名から得た。それぞれの写真から、大学生4名に討議によって、より典型的に喜び、怒り、驚き、プライド(日本語)を表している写真を8枚ずつ、および誇りを表している写真を4枚、選んでもらった。その後、大学生76名を対象に、それぞれの写真について喜び、怒り、驚き、プライド(日本語)、誇りのどの感情を表しているかを評価させた。実験の結果、prideの表出は日本人にもプライドや誇りとして、他の基本的感情(怒りや喜び、驚き)と同程度の認識がなされ、prideが通文化的感情であることが示唆された。加えて、「誇り」の表出の一部については「誇り」よりも「プライド」として認識されており、日本語としてのプライドと誇りは異なっていることが示唆された。

ワーク・ライフ・バランスとワーク・オートノミー—業務からの考察

[タイトル]
ワーク・ライフ・バランスとワーク・オートノミー—業務からの考察

[著者]
祖父江 かおり, W.A,スピンク

[掲載]
経営行動科学, Vol.19, No.2, pp.121-131, 2006.l

[アブストラクト]
From a long-term point of view, the balancing of work and non-work roles has been regarded as important for increasing job performance. It is necessary for employees to enhance autonomy to deal with their business and to carry out their tasks successfully, and it is a key issue for employers to enhance worker autonomy to ensure the acquisition of talented people and to increasce their productivity.
This paper explores the relevance of work autonomy with work-life obligations from the stand point of autonomous task allocations and taks attributes. Specifically, it examines the degree of existing work autonomy from a multi-agent perspective. Data is drawn from a sample of seven companies devided into four classes based on the richness of thier corporate support systems. The questionnair survey covering ten work autonomy factors shows considerable differences do exist in the perceived level of work autonomy between specific factors and agents, a finding which has potentially important implications for promoting greater work-life balance in the Japanese workplace.

[キーワード]
work autonomy; work process; work life balance; family support system; preliminary examination

[要約・感想]
正直、まったく何を意図して行った研究かがわからない・・・(汗)

とりあえず、前提となっている考え方は、
ワークワイフバランスを考える上では、福利厚生的支援だけではだめで、仕事そのものの働きがいや業務満足、生きがいに対するアプローチが必要である。
仕事そのものの働きがいや業務満足、生きがいを向上させる上では、ワーク・オートノミーが求められる。
(なお、ワーク・オートノミーとは、論文によると「自発的な参加と独自のアイデアの創造と実行」と定義されている)

研究の流れとしては、
(1)ワーク・オートノミーという概念についての先行研究をレビューし、それらを元に、ワーク・オートノミー要因(?ここがわからん。形成要因ということか?)を抽出し、それをもとにアンケート項目を作成する。

(2)再検査法を用いて、アンケート項目の妥当性を確認する。

(3)実際のアンケート(マルチエイジェント形式・・・部下・上司・人事担当の3点測量ということか?)を行って、次の3つの仮説を検証する
・ワーク・オートノミーの充足度合いに項目別(要因別?)の相違がある
・ワーク・オートノミーの充足度合いに関して、管理職と部下の間に相違がある
・ワーク・オートノミーの充足度合いに関して、部下の男女別で差がある。

結論は、これらの3つの仮説は確認された、というもの。
そういう結論が出たのは事実なんだろうけど、この事実が一体どう役にたつのかがまったく見えない。
一体、何のためにやっているんだ?
一応書いていることとしては、「ワーク・ライフ・バランスの促進を図るためのワーク・オートノミーを検証する一環として、まず日本企業におけるワーク・オートノミーの充足度合いを検証する」ということなんだけど、、、


なんか、全体に論理の飛躍が多い気がする。
(1)そもそも、ワーク・ライフ・バランスと働きがいが関係が「本当に」あるのか?
(2)働きがいとワーク・オートノミーは「本当に」関係があるのか?
(3)ワーク・オートノミーはワーク・ライフ・バランスと「本当に」関係があるのか?

2011年7月19日火曜日

職場における目標の共有が仕事の動機づけに及ぼす影響

[タイトル]
職場における目標の共有が仕事の動機づけに及ぼす影響

[著者]
多田 瑞代

[掲載]
経営行動科学, Vol.20, No.3, pp.345-353, 2007

[アブストラクト]
The purpose of this study was to investigate the factors increasing the motivational benefits of goal-setting. In this study, the effects of goal-setting situational conditions such as goal sharing and information sharing in the work place were examined. The hypothetical structural model describing the relationships among goal setting, goal sharing, information sharing and work motivation was examined by structural equation model using the data from 2446 employees in a company.
Results of analysis showed the following: Having a specific goal improved one's work motivation. Sharing one's goals with co-workers in the workplace led to higher work motivation. It also had an indirect effect on work motivation through enhancing information sharing in the work place.

[キーワード]
goal-setting theory, goal sharing, information sharing, structural equation model, work motivation.

[要約・感想]
目標管理制度がモチベーションにどういう影響を与えるのか、という文脈。

研究の流れは、いたってオーソドックス。
アンケートをとって共分散構造分析。

論文で主張したい点は、
「組織目標をブレークダウンした個人目標を書く個人を設定し、その目標や実行計画をプレゼンテーションなどによってチーム内で公開・共有することは、目標達成に有用な情報の教諭うを促進し、動機づけに影響を及ぼすと考えられる。実際の目標管理においては、個人目標を本人と上司だけで共有するのではなく、チーム内のメンバーで共有することが目標達成への動機づけにおいて重要である」

チームメンバーの間で、各自の目標を共有すると、その目標に関連した情報のやりとりが促進され、結果的に目標達成に有用な情報や援助を受けることで自己効力感が高まり、動機づけが高まる、と言うのがあるのではないか。

この主張は面白い。また、結構実践的。

ただ、根本的に、「目標」というものの設定の仕方に目標設定理論の問題があるように思う。結局、「組織が主」という前提の中での目標設定でしかなく、組織に個人が合わせにいってるだけな気がする。本当は、組織目標だけでなく、「個人の自己実現」という点にももっと着目すべきなのではないだろうか。

自治体職員の職務へのやり甲斐と人事施策—Q市職員アンケート結果に基づく分析—

[タイトル]
自治体職員の職務へのやり甲斐と人事施策—Q市職員アンケート結果に基づく分析—

[著者]
山中 俊之

[掲載]
経営行動科学, Vol.17, No.3, 149-157, 2011.

[アブストラクト]
Workers have not been very satisfied with their positions in local governments in Japan because they are mostly regarded as "public servants". Job statisfaction, however, seems to be important for performance of both employee and employer. According to the questionnaire survey of workers employed at Q city hall, clarity of the worker's own objectives and whether or not the worker is able to make use of his/her specially in his/her career, whether there is a chance for advancement, and motivation of promotion are very much related to satisfaction with the job. As for measures in human resources management, manegement by objectives and self-control and career development plan, which consists of specialized subject and personnel arragement plan and required skill and knowledge for each staff member, are important for workers' satisfaction and will promote better performance in local goverment.

[キーワード]
local goverment, job satisfaction, manegement by objectives and self-control, career development plan, personnel arrangment plan.

[要約・感想]
公務員を特に取り上げた研究。

アンケート調査とヒアリング調査を通じて、
 目標管理制度───┐
              ├→「やりがいの向上」
 キャリア開発───-┘

というパス図が描けたので、公務員においても目標管理制度や、個人のキャリアディベロップメントの観点にたった人事制度・異動が求められる、ということ。

やりがいの向上が成果の向上に結びつく、と単純に前提を置いているが、
果たして本当にそうなのか?
そもそも、自治体職員において成果とはなになのか。また、目標とは何なのか。
個人的目標(資格取得?誰かからありがとうを言われる回数?)と組織目標とはどう折り合いをつける?
そもそも組織目標はあるのか?管理するだけ?

なお、「やりがい」と言う言葉に対しては、「職務満足(Workers' Satisfaction)」と同義にとらえている模様。
ただ、職務が単に楽だから満足、というものとは一線をおいている。
職務そのもの及び、職場の待遇や環境の両方の意味を含んだ概念として言葉を用いている。

また、分析の際に、プロビット分析なるものを用いている。正直よく分からないのだが、
どうやら、被説明変数が2値を取るときには単なる回帰モデルは使えず、ちょっと複雑なモデルとなる、とのこと。
モデルに用いる関数が単純な一次関数モデルではなく、正規関数やロジスティック関数などを用いる、とのこと。。。
まだよーわからん・・・。

The Influence of Positive Affect on Intrinsic and Extrinsic Motivation: Facilitating Enjoyment of Play, Responsible Work Behavior, and Self Control

[タイトル]
The Influence of Positive Affect on Intrinsic and Extrinsic Motivation: Facilitating Enjoyment of Play, Responsible Work Behavior, and Self Control

[著者]
Alice M. Isen, Johnmarshall Reeve

[掲載]
Motivation and Emotion, Vol.29, No.4, pp.297- 325, 2005

[アブストラクト]
Two experiments demonstrated that positive affect fosters intrinsic motivation, as reflected by choice of activity in a free-choice situation and by rated amount of enjoyment of a novel and challenging task, but also promotes responsible work behavior in a situation where the work needs to be done. Where there was work that needed to be done, people in the positive-affect condition reduced their time on the enjoyable task, successfully completed tha work task, but also spent time on the more enjoyable task. These results indicate that positive affect dose foster intrinsic motivation and enjoyment and performance of enjoyable tasks, but not at the cost of responsible work behavior on an uniteresting task that needs to be done. Implications for the relationship between positive affect and such aspects of self-regulation as forward-looking thinking and self-control are discussed.

[キーワード]
ポジティブ感情 内発的動機付け 外発的動機付け 自己統制 先を見越した行動
positive affect Intrinsice motivation Extrinsic motivation Self-control  forward-looking

[要約・感想]
ポジティブ感情が内発的動機付けと外発的動機付けにどういう影響を与えるか。
結構詳しく実験について書いてくれていた。
びっくりするのが(前のこの人の論文でもそうだったけど)
ポジティブ感情の喚起の仕方が、
飴玉とチョコレートのキャンディのどちらが魅力的(Attractive)かを選択させたあと、
「好きな方をあげるよ」といってもう一度選ばせてプレゼントする、という方法。
(ただし、「今は食べないでね」という教示)
一方、ニュートラル感情の方は、
飴玉とチョコレートのキャンディのどちらが魅力的(Attractive)かを選択させるだけ。

やらせた作業は
内発的動機付けのタスクは、3次元キューブパズル(要するにキュービックキューブ?)
外発的動機付けのタスクは、6文字からなるアルファベットの綴りについて、その6文字がアルファベット順に並んだものかどうかをチェックする、というもの。
ただし、外発的動機付けのタスクへの条件付けの内容は2つの実験によって違っていて、
実験1では、外発的動機付けの条件として、自由選択の中で「すべて見つけられたら2ドルあげる」、という条件付けをした。
実験2では、「ある部分(最初の2ページ)まではしなければならない」というより強いメッセージを与えた。

結果に対する解釈の仕方は色々とあるだろうが、
とりあえず、彼らが主張したい点はここに集約されている。

"We have argued in this paper that positive affect promote self-control and forward-looking functioninng. But now we can also see that positive affect influences not only intrinsic motivation and enjoyment, but also attention to extrinsic considerations and responsibilities as well, and this kind of demonstration of self-control while increasing enjoyment, may contribute to understanding the processes that underlie self-control and forward looking orientation."
(本論文では、ポジティブ感情が自己統制や先読み行動を促進することを示した。しかし、それだけでなく以下のことも観察できた。すなわち、ポジティブ感情は内発的動機付けやそのタスクへの楽しさを増進させるだけでなく、外発的なタスクに対する思考や責任意識についても増進させることができる。楽しさの増進に加えて自己統制についてのこの種のデモンストレーションは、自己統制や先読み姿勢の機序の理解につながることだろう。)

とりあえず、ポジティブ感情は、その状況でのモチベーション(内発・外発両方ともの)の向上につながるようだ。
わからなくはない。というか、内発・外発という2分法によるモチベーションだけでなく、その根底に、状況そのものに対しするモチベーションもあるのではないか。そのモチベーションがあれば、その状況における内発的・外発的のいずれのモチベーションも高まるということではないだろうか。気分一致効果というか・・・。

2011年7月15日金曜日

「自尊感情」を関係性からとらえ直す

[タイトル]
「自尊感情」を関係性からとらえ直す

[著者]
遠藤 由美

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.39, No.2, pp.150-167, 1999

[アブストラクト]
自尊感情は心rに学におけるもっとも重要な概念の一つでありながら、これまで自尊感情とは何かという議論はあまり行われてこなかった。本稿では、これまで明示的に示されることがほとんどなかった自尊感情に関する従来の考え方を探り、伝統的な「自己」が現実世界の社会的状況や人間関係性から切り離されすぎていたという問題点を指摘した。次に、最近提唱されつつある自尊感情への生態学的・対人的視点をとったアプローチを紹介し、これまで整合性のある説明を与えられなかった点について、新たな観点から議論した、最後に今後の研究課題と意義を提唱した。

[キーワード]
自尊感情の概念、関係性、対人的視点、文化、社会

[要約・感想]
非常に興味深く読めた論文。

自尊感情がこれまで頻繁に論文で取り上げられながら、その概念がどのようなものなのかの明確な議論がこれまでなされていなかった。

従来の自尊感情の捉え方は「安定的統合的自己」観に基づいたもの。
論文の中にある記述を引用すると、
「自分の内側にさまざまな望ましい属性がある場合、それを自分自身で自覚的にとらえ評価した結果、「私は価値ある人間だ」という安定的な自尊感情が自己の内側に生じる」
この考え方の根本にあるのは、
心理学のセントラル・ドグマ、すなわち、「自分のことは自分が一番よくしっている」や、社会環境、文化なども自己を構成する「要因」(相互作用する、ではない!)として中心には「自己」があるとする捉え方がある。
「我々人間に課せられた課題は真の自己を発見し、それを伸びやかな形で外に発現させることであるから、自分の目に自分自身の姿ができるがで隈なく薄し出されるようにすることがd重要であり、そうすれば自分があるべき姿からどれほどズレているかを把握でき、自分の行動を制御することによってずれを是正して適応的に生きられる」とうする意識的自己完結的自己理解の仕方。
→プロテスタンティズムが背景にあるのか?達成することを至高体験と表現する考え方。献身的であることを望ましいとする考え方。

一方で、この論文で筆者が主張するのは、
自尊感情はあくまで社会・文化との相互関係の中で生じてくるもの。
端的に表している記述が、
「自尊感情が高いということは、それぞれの状況において望ましいとされることを自分が実現でき、自己と周囲の世界との間に適切な関係を持っていると思うことできること」
ここでは「それぞれの状況」という言葉がポイント。
これによって
「その人がどのように世界を見ているのか<->環境がどのような情報をその人に示しているのか」
によって「望ましいこと」のその人の中での基準が変わるし、それによって自尊感情も変わる。

この感情を進化論的にも考察している。
「社会集団からの排除の危険性をより低減したいという動機」が人に存在している。このことから「(帰属したいとその人がおもっている)社会で信奉されちえる価値を実現しているとみなされ、「有効な人間だ」と人々から認められる集合的営為的過程によって、周囲の世界の中に適切な位置を確保し続け、関係性を維持したい、という動機」が生まれ、そこから自尊感情が生じている。

あくまで一般論としての自尊感情。

ただ、ここから勝手に考えを進めると、
ある社会の中で自尊感情をもてないときには、
1.その社会がその人にとってあくまで「帰属したい組織」「帰属しなければならない組織」という信念が強い場合、自尊感情がもてないことが個人の要因に帰着されてしまい、不適応状態・ストレス状態、いわゆる自信喪失状態につながる。
2.その社会がその人にとってあくまで「帰属したい組織」「帰属しなければならない組織」という信念がそこまで強いものでない場合には、その組織に対する遠心力が働く。すなわち、その組織とは異なる、自尊感情を保てる組織に対して帰属しようとする。

結局、自尊感情とは関係性、有能性というものと結びついた感情ということか。
なにをもって有能とするかは、関係性によって決まる。行き着く先はすべて関係性、社会・文化によって決まる。

2011年7月14日木曜日

社会的スキルとしての対人コミュニケーション認知メカニズムの検討

[タイトル]
社会的スキルとしての対人コミュニケーション認知メカニズムの検討

[著者]
木村 昌紀, 大坊 郁夫, 余語 真夫

[掲載]
社会心理学研究, Vol.26, No.1, pp.13-24, 2010.

[アブストラクト]
We placed observers' interpersonal communication-coginiton as a social skill and investigated the mechanism behind it. From the result of Study 1, although ability in face-to-face approaches influenced the accuracy of an observer's judgment of interpersonal communication in highly expensive conversations that were easy to judge, this did not occur in low-expressive conversations that were difficult to judge, suggesting a relationship between the two. In addition, to examine clues for improvement in accuracy, we conducted a lens model analysis in Study 1. Interactants' judgments about conversations were positively correlated to speeches and negatively correlated to adaptes, while those of observers were positively correlated to speeches, gestures, and smiles, resulting in asynmetry of interpersonal communitcation-cognition between interactants and observers. In Study 2, a series of observational experiments showed the possiblity of improvement in accuracy by skill training. These results suggested the validity of the placement of observers' interpersonal communication-cognition as a social skill and helped to explain some part of its mechanism.

[キーワード]
対人コミュニケーション、行為者と観察者、社会的スキル

[要約・感想]
観察者の立場から他人同士のコミュニケーションを眺めることによって、どのようにそれを認知して、それらから周囲の人間関係についてのどのような認知を得るのか。
「(広義の)情報環境に囲まれた人」を考える上では、こういう傍観者として情報をえるプロセスも当然あるだろう。そこに注目したい。

○研究の動機
第3者として、他者のコミュニケーションを見たときの、そのコミュニケーションの良し悪しの評価と、当事者同士のコミュニケーションの評価は食い違いやすい。
対人関係を円滑にして、集団生活を快適に営むためには、その食い違いは小さい方が望ましい。
そこで、この食い違いを改善できるのか、改善方法はどんなことかを研究を通して検討する。

○結論
要するに、
第3者として他者のコミュニケーションを見たときの、そのコミュニケーションがよいものだったかどうかの評価は、笑顔、発話、ジェスチャーに依存する。
一方で当事者による評価では、発話とアダプター(間を持たせるためのしぐさ)に依存する。
よいかどうかの評価をする能力は社会的スキルである。対人交渉能力との関連性はあるようだが、別個のスキルのようである。
このスキルは練習次第で向上もさせられる。

・・・
対人関係のルールや対人コミュニケーションに関するヒューマンファクタの知識を持っている人は、対面交渉能力が高いといわれるが、これらを持っている人は観察者としてのスキルも高いだろう、という予想。これについては、予想自体は納得がいくが、今回の調査結果からはわからないということ。さてどうなのだろう・・・


とりあえず、感じたのは、
なんでこのことに着目したのか?実社会でのどんなことに役立つと彼らは思っているのか、そこのところがよく分からない。今回の基礎研究から実社会における問題解決までのパスがあまりにかけ離れている気がする・・・。

組織におけるエモーション—組織行動論に「まるごとの人間」を取り戻す—

[タイトル]
組織におけるエモーション—組織行動論に「まるごとの人間」を取り戻す—

[著者]
金井 壽宏

[掲載]
経営行動科学学会第1回年次大会発表論文集, pp.33-34, 1998.

[アブストラクト]

[キーワード]
エモーション、態度、

[要約・感想]
非常に短い資料なので、なんともだが、なんとなく金井先生が、組織経営において、もっと人間的な「感情」というものを汲み取った経営のあり方が必要なのではないか、ということを考えているんだな、ということがわかる。

被職業スティグマ意識と対処方略

[タイトル]
被職業スティグマ意識と対処方略

[著者]
上瀬 由美子, 堀 洋元, 岡本 浩一

[掲載]
社会心理学研究, Vol.26, No.1, pp.25-35, 2010.

[アブストラクト]
The present research investigated relations between percieved occupational stigma and their attributes, the coping strategies of those affected by occupational stigma, and the effects of perceived stigma on global and occupatinal self-esteem mediated by coping strategies. Data from 501 erspondents, a representative set of data stratified by age and gender, showd that (a) approximately 10% of the respondents perceived themselves as occupationally stigmatized, (b) low-income men, especially young or contigent workers, were apt to show awareness of their occupational stigma, (c) five coping strategies in particular (Re-evaluation, Group identification, Social comparison, Attribution of discrimination, and Disengagement) were common, (d) group identification positively enhanced occupational self-esteem in persons who perceived occupational stigma strongly. Lastly, the characteristics of the coping strategies and issues for further research were discussed.

[キーワード]
職業スティグマ, 被職業スティグマ意識, 自尊心, 対処法略

[要約・感想]
スティグマ
・・・人々(自分)の社会的価値を低下させる望ましくない属性。

職業スティグマ(Occupational Stigma)
・・・社会的価値を低下させる望ましくない属性のうち、特に現在その人がついている職業に関するもの。

被職業スティグマ意識(Perceived occupational stigma)
・・・自らの職業にスティグマが付与されていると感じ、そのことによって職業に関連して自らの価値が社会的に低められていると感じている意識のこと。

○研究を通じて全体としてわかったこと。
・まず手続きについて
被職業スティグマ意識は「ステレオタイプ脅威」と「スティグマ自覚」の2つの因子で測ろうとしたが、この2つの因子は因子分析でも抽出された。
ステレオタイプ脅威とは、自分の就いている職業についてステレオタイプが存在していて、それに基づいて自分の社会的評価がなされるのではないか、という不安・怖れ。
スティグマ自覚とは、実際にそのような評価がなされたという自覚。

・被職業スティグマ意識の高低を分けるために、この二つの尺度を用いてクラスタ分析をかけた。その結果、3つのグループに分かれた。さらに、この三つのグループの上記の2つの尺度に関しての分散分析から、両方の尺度とも、3つの群の主効果が有意であり、高低の傾向も両方の尺度で同じであった。このことから、このクラスタ分析にしたがって、被職業スティグマ意識の高低群を分けた。

・対処法略では、「(社会的)価値付け」「集団同一視」「社会的比較」「差別への帰属」「脱同一視」という5つの対処方略が抽出された。

・対処法略と被職業スティグマ意識の高低とで分析をかけると、被スティグマ意識が高いと、、「(社会的)価値付け」「集団同一視」「社会的比較」「脱同一視」が有意に高くなる。
 一方で、全体的自尊心、職業的自尊心を比べると、被職業スティグマ意識が高い群は低い群に比べ、有意に低い。

・パス解析からは、
→スティグマ自覚は職業的自尊心を低下させる。
→ステレオタイプ脅威は集団同一視を導き、集団同一視は職業的自尊心を導く。

・特に集団同一視に関わるパスから、他のスティグマへの対処法略と同様に、職業スティグマについても、集団のほかの成員と結びつきを強め、類似の職業に就く者と自分を同一視する方略が、ストレスフルな状況の対処に有効であることを示している。→要するに、同じ職業に就く人たちの「村」ができる。
なお、ここでの集団とは、「所属集団」ではなく「帰属集団」である。

・なんとなくと思うのは、個々で取り上げている対処法略というのは、態度であって、これらの態度の形成が、意図的に行われたのか、あるいは無意識的であっても、スティグマをうけたことによって促進されたことなのかはわからない。実際に論文でもそう指摘されている。

・スティグマ自覚やステレオタイプ脅威が高いと「価値付け」が高くなる、というのは不思議。認知的不協和??

・なんとなく、「価値付け」と「自尊心」がどういう関係にあるのかは興味がある。

***

なんとなく、「ステレオタイプ」というのがすごく会社を覆っている気がする。いや、会社だけではなく、社会全体でもそうだな。。。
ステレオタイプは、働きがいや誇りという概念と関連性を持った概念だとは思うな。

2011年7月13日水曜日

「誇り」の動機づけ機能と認知過程への影響—帰属意識と誇りの比較研究—

[タイトル]
「誇り」の動機づけ機能と認知過程への影響—帰属意識と誇りの比較研究—

[著者]
平田 謙次, 八原 忠彦

[掲載]
経営行動科学学会第2回年次大会発表論文集, pp.128-135, 1999

[アブストラクト]
誇りを持ちながら仕事できることは、個人と組織の双方にとって重要なことである。帰属意識が薄らぐなかで、現代のビジネスパーソンがどの程度「誇り」を持ちえているのかについて、質問紙調査(n=705)を行った。統計解析により、誇りの持つ動機づけとしての機能をしめすとともに、「誇り」と「帰属意識」を分類することを通して、その動機づき認知過程への影響を明らかにした。前者は、直接かかわりのあるものやコントロール可能な要素に、後者は外的なものやコントロールが困難な要素に影響を受けるという認知過程を示した。

[キーワード]
誇り、帰属意識、動機づけ、認知過程、積極的責任関与行動

[要約・感想]
ちょっと紙面の都合か、情報不足が否めない論文・・・。
というか、中身が怪しい論文。
実際、どうなの??これ。
得られたデータからの考察が納得できない・・・。

とりあえず、論文の中身を整理してみる・・・。
1.誇り
経営学ではこれまであまり取り上げられてきていない。なので定義もはきりしない。

2.関連するであろう研究領域・・・誇りを「組織に対する誇り」と「職業や仕事に対する誇り」に分けるとすると、
○組織に対する誇り
→組織帰属・帰属意識(Loyality)、組織満足(Oragnizational Satisfaction)、組織関与(Organizational Commitment)
○職業や仕事に対する誇り
→キャリア形成(Career Development)、職業的アイデンティティ(Work Identity)、心理的契約(Psychological Contract)、仕事関与(Job Commitment)、自己効力研究(Self-efficacy)

3.研究の目的
「組織に対する誇り」と「帰属意識」との間の動機づけ機能の面からみた概念的違いを調べてみる。

4.この研究での誇りの定義
言葉でタラタラ書いてあるが、突き詰めて言えば、
「経営者の人柄」「経営者・役員の経営にたたる行動」「組織そのもの(理念、Visionなど)」「会社の内部体制(マネジメント、内部制度)」「仕事の内容(仕事の内容、方法、仕事のやりやすさ)」の5項目に対する「誇り」の強さ(100段階。ただし、60を最低合格ラインとするように教示)
実際にどんな文言でこれらに対する評定をさせているのかはわからない。ちょっと項目だけ見れば、経営者の人柄を誇りにできるんだろうか・・・??会社の内部体制に誇りを感じるか?と聞かれて、質問の意味がわかるだろうか??正直、こういう聞き方をされると、「誇りって何?」と思ってしまわないか??

5.とりあえずの結論
同じ「組織に対して誇りがある」と答える人の中には、
 「自分の会社のことを本当に誇りに思っている人」
と、
 「単に自分の会社に帰属意識を持っているだけの人」
とがいる。そlして、
今現在にの仕事に対する動機づけとの関係から、
前者は
「前者の場合には、組織に対しいて自ら積極的に関わり、責任を果たしていく姿が思い描けるが、後者の場合には、責任を組織ないしは経営層へ依存もしくは転換する傾向がある」
とのこと。

う〜ん、、、、、
まあ、誇りの概念のレビュー結果を多少なりとも最初の方で示してくれている点くらいは評価しようか・・・。

モチベーショナル・リーダーの条件

[タイトル]
モチベーショナル・リーダーの条件

[著者]
デイビッド C. マクレランド、デイビッド H. バーナム

[掲載]
DIAMOND ハーバードビジネスレビュー編集部監訳:新版 動機づける力 モチベーションの理論と実践, pp.175--210, 209

(日本語原典)Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2003年4月号

(英語原典)
David C. McClelland, David H. Burnham: "Power Is The Great Motivator", Harvard Business Review, July, 1970.


[アブストラクト]
優れたマネジャーの条件とは何か。
マネジャーの欲求パターンを分析することでこの根元的な問いへの答えを求めた。
その結果、組織全体の利益のためにその権力を行使したいという欲求を抱く「組織志向マネジャー」こそ
マネジメント効果が高いことが判明した。
このようなマネジャーは、部下に責任と権限を与え、組織目的を明確にし、チーム・スピリットを醸成する。
逆に、己の成功に走ったり、八方美人を振る舞ったりすると部下のコミットメントが損なわれてしまう。
(ハーバード・ビジネス・レビュー 2003年4月号より)

[キーワード]
動機傾向、権力動機、達成動機、親和動機、マネジメント・スタイル

[要約・感想]
一見すると達成動機が一番望ましく、権力動機は他者を支配し服従させることを欲することをいうような印象を持ってしまう。自分もそう。
でも、この本を読んでみて、ちょっと違うのではないか、ということがわかった。

達成動機は、あくまで上昇志向をもっているかどうか、まさに「成果を上げる」ということへの欲求をもっているかどうかということ。
一方で、権力動機は他者に影響を及ぼす、そのように振舞うことへの欲求。

マクレランドの調査方法を振り返ってみれば、これらが何を言っているのかよく分かる。逆に、調査方法を知らないままこれらの言葉面だけを受け取ってしまうと、大きな誤解を招く。

マクレランドの調査方法は、マクレランドの別の原著から整理すると・・・
マクレランドは、写真を見せて、その写真に好きなストーリを作るように被調査者に指示する。そうして出てきたストーリは、その本人がどのようなことを考える傾向性を持っているかを表す。達成に関するストーリを描いたのならば、その人は達成というものを志向した物事の考え方をする、ということ。他者に影響を与えることに関するストーリを描いたのならば、その人は権力というものについて考えやすい傾向を持っているということ。
なので、マクレランドのいう「動機」とは、その人の生き方・行動の仕方がどういう傾向・志向性をもっているか、ということである。
(おそらく、こういうことから原著の翻訳においては「動機傾向」という言葉が使われているのだろう)

さらには、本書の終りの方(207ページ)にも有るように、以下のような質問が成される。
・マネジャーが以前よりも成績や効率を向上させることについてどのくらいの頻度で考えているのか(達成動機)
・他者と友好的な関係を確立し、維持することについてどのくらい考えているのか(親和動機)
・他人を動かし、影響を与えることについてどの程度考えているのか(権力動機)

このことから、権力動機を持っていることと、「権力を振りかざして支配的・強権的にふるまう」ということとは別の話。権力動機がなければそういう振る舞いはでない、ということは言えるだろうが、権力動機を持っているからといって、そういう振る舞いが必ず起こるということではない。
むしろ、権力動機が低く、達成動機が高いひとは、自分自身の達成だけを志向する人、一匹狼的な人、ということになるだろうし、親和動機だけが高い人は仲が良いという点だけにしか着目しない人、ということなる。

権力動機が悪さをすることもあろうが、優れたマネジャーであるための必要条件として権力動機は求められる、ということである。

もちろん、本書では、権力動機が悪さをするパターンへの手当てとなる概念として「自己抑制」という概念も必要条件として加えている。
これが足りないと、権威主義的に走るが、これがあると、社会的に品のないことをしなくなる。社会に目を向け、その上で、人を動かせられるように振舞う。

2011年7月11日月曜日

MBO失敗の本質

[タイトル]
MBO失敗の本質

[著者]
ハリー・レビンソン

[掲載]
DIAMOND ハーバードビジネスレビュー編集部監訳:新版 動機づける力 モチベーションの理論と実践, pp.103--139, 209

(日本語原典)Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2003年4月号

(英語原典)
Harry Levinson: "Management by Whose Objectives?", Harvard Business Review, July, 1970.

[アブストラクト]
「目標管理制度」(MBO)はほとんどの組織で導入されているが、単にマネジャーのプレッシャーを高めているだけ、目標シートも所詮は画餅にすぎないといったマイナス面が現場から指摘されやすい。
その背景には、業績評価指標を過剰に重視したり、組織と個人の目標が乖離したりしていることがある。
本稿は、MBOを効果的に実践するための3条件、そして、前提として踏まえておくべき3要素について解説する。

[キーワード]
MBO、モチベーション

[要約・感想]
MBOが形骸化するのを頻繁に見るにつけ感じていることをまさに言葉に表した論文。

MBOの有るべき姿とは、あくまで「本人がどのような自己実現を成したいのか」と「会社がどのような成果を出して欲しいのか」とを融合し、双方に納得感を持ってもらうようにすること。

しかし実際には、「本人がどのような自己実現を成したいのか」という視点が欠けたMBO制度が多く、そもそも自己目標シートを書くこと自体が負担感を増大させてしまっている。

そもそも
MBOを導入する前には、次の三つのことを抑えておくことが必要!
(1) 理想自我の理解・・・人は本質的に「理想的な、あるべき自分の姿」を無意識に描いている、ということを理解する。
(2) 部下による自己検証・・・「自分とはこういう人間である」ということをメンバに自覚させる。
(3) 上司による自省・・・徹底した自問自答を繰り返す。怒りや失望を感じたとしても、部下に批判的な態度を取るのではなく、自分自身の失望感を表明するのにとどめたり、なぜ、そうなったのかを徹底的に考える。そうすることで建設的な関係性を確立できるようになる。

ミクロレベルの社会知デザインの実現方法論

[タイトル]
ミクロレベルの社会知デザインの実現方法論

[著者]
西田 豊明

[掲載]
第55回システム制御情報学会研究発表講演会講演論文集, pp.13-20, 2011.

[アブストラクト]
Research on social intelligence design aims at understanding and augmentation of social inteliigence resulting from individual interlligence to solve problem and learn from experiences. After a brief description of the histroy of its development, this tutorial describes the framework of social intelligence design research that encompasses defferent levels of granularity and varying research interests ranging from analysis to synthesis. It will then focus on the social intelligence research at the micro level and show how it is investigates.

[キーワード]
社会知、エージェント、

[要約・感想]
問題解決行動は、行動主と社会との共同作業である。
そのような前提に立って、
行動主が、社会という存在を自覚し、他者との社会的な関係を構築し、利用することによって種々の問題を解決する能力を、「行動主の社会知」という。
一方、社会全体として、問題を解決し経験から学習する能力を「集団の社会知」と言う。

このような社会知というものについての研究の展望がなされている。
その後、「ミクロレベルの社会知」に着目した研究の紹介がなされる。
要するに
人と人との会話の中で取り交わされる言語・非言語情報を分析し、
その結果をもとにエージェントを組む
という流れ。

正直、イマイチよくわらからない。
チュートリアルの講演論文なので、これ以上は期待できない部分もあるが。。。

「社会知」という大仰なテーマと、やっていることがロボット開発である
という点とのギャップが大きすぎる。
エージェントを合成をすること自体はあくまで方法にすぎなくて、
目的は「会話行為の数理的モデルの構築」(エージェントはそのモデルの実証実験をするためのツールとして作っている)ということなのであればわかるのだが・・・。

そのほかの部分(協調作業、コミュニティ)はまだわからなくはないのだが、、、
(といいつつ、それらの研究も紹介されているわけではないので、わからんが・・・)

組織健全度のモニタリング方法に関する研究

[タイトル]
組織健全度のモニタリング方法に関する研究

[著者]
本澤 卓司, 小松原 明哲, 野村 晃, 小野寺 順, 青沼 新一

[掲載]
JR EAST Technical Review, No.35, pp.26-29, 2011.

[アブストラクト]
安全性を継続的に向上させていくためには、リスクおよびその要員を把握しておく必要がある。そのためいは、組織として、「安全面から健全かどうか」「よい方向に向かっているか悪い方向に向かっているか」などを継続的にモニタリングできている必要がある。
 本研究では、この仕組みを「組織健全度のモニタリング」とし、その有効な評価視点は「安全に関わる取り組みにの状態を通じての診断」であることを示して診断の枠組みを整理した。次に、この視点を元に、使者の非現業社員を対象に質問紙調査を実施した。その結果をフィードバックし意見交換を行ったところ、「日ごろ感じている課題を定量的に示せた」などの評価が得られ、「安全に関わる取り組み状態」を診断する方法についての可能性を得ることができた。

[キーワード]
安全マネジメント、診断方法、組織心理学、安全文化

[要約・感想]
組織健全度モニタリングとして、「事故・事象の発生率」や「安全活動の回数」など、その時々の「状態」を計測することは従来からなされているが、より重要なのは、「組織としてこれらを継続的に向上させる、あるいは維持させる仕組みが構築されているか」という点であり、それを含めた計測をしなければ、組織の健全度は計れない、という指摘は確かに的を得ている気がする。

ただ、実際に組織健全度としてどのような評価をしたのか、という点についてはこの資料からはよく分からなかった。

2011年7月8日金曜日

知識労働者のモチベーション心理学

[タイトル]
知識労働者のモチベーション心理学

[著者]
テレサ M. アビール、スティーブン J. クラマー

[掲載]
DIAMOND ハーバードビジネスレビュー編集部監訳:新版 動機づける力 モチベーションの理論と実践, pp.65--99, 209

(日本語原典)Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2008年 03月号

(英語原典)
Teresa M. Amabile, Steven J. Kramer: "Inner Work Life: Understanding the Subtext of Business Performance", Harvard Business Review, May 2007 85(5):72-83.

[アブストラクト]
知識労働において、仕事のやりがいなどの内発的要因は、金銭によるインセンティブよりも重要であることは、理論と実践の両面から長らく支持されてきた。しかしその具体的なメカニズム、すなわち社員は仕事をしながら何を考え、どう感じているのか、それが成果にどう影響しているか、本格的に注目したのは本稿が最初である。二三八人のプロフェッショナルに、プロジェクト期間中の日誌を記入してもらい、蓄積された一万二〇〇〇件近くのデータの分析によって、「インナー・ワーク・ライフ」(個人的職務経験)が社員のみならず、企業のパフォーマンスにも大きく影響していることが明らかになった。
(ハーバード・ビジネス・レビュー 2008年 03月号より)

[キーワード]
インナーワークライフ、 モチベーション、 リーダーシップ、 認知、 感情

[要約・感想]
すごく自分が普段思っていることに近い内容を書いてくれている。

1.感情と認知を分けてとらえるというよりも、同じ「人の精神活動」をそれぞれの立場から眺めているだけ。モチベーションも同じ。
そして、そのときそのときの情緒、気分・認知・パフォーマンスは一体となって捉えるべきもの。



2.さらには、仕事を通してのポジティブな感情(「仕事が楽しい」こと)が創造性、生産性、意欲、同僚間の協力(仲間意識?チームコンピテンシー?これだけ良く分からん)を引き出す。

3.上司に求められることは
A) 仕事を進捗させること(リーダーシップとマネジメント)
→ 多分より行動的な言い方をしたほうが良い。Leading And Managing
B) 人間として尊重すること。


う~ん・・・・非常に参考になる。

2011年7月7日木曜日

働きがい調査 働きがいのある会社 「対話力」が強さの源泉

[タイトル]
働きがい調査 働きがいのある会社 「対話力」が強さの源泉

[著者]


[掲載]
日経ビジネス, 2008年1月28日号, pp.92-101, 2008

[アブストラクト]


[キーワード]
働きがい

[要約・感想]
結局何を感じていることに対して「働きがいを感じている」というラベルを貼っているのか。
個々で取りあえげられている人は
「自分で仕事を切り開く」
「新しいことに挑戦し、自分自身の成長を実感する」
ということ。

「仕事のやりがい」「挑戦の機会」「職場環境」「報酬」「仲間意識」など、働きがいは人によって異なる。

この記述がすべてを物語っている。

「働きがいのある会社」ランキング

[タイトル]
「働きがいのある会社」ランキング

[著者]


[掲載]
日経ビジネス, 2007年2月19日号, pp.106-115, 2007.

[アブストラクト]


[キーワード]
働きがい

[要約・感想]
一箇所引用。
「自分が休暇を取るときは、誰かに仕事をカバーしてもらわなければならない。そのことを考えて、同僚が休みを取るときは、みなが普通にフォローするようになる。これも、連帯感の醸成に一役買っている。」
・・・
一方で、「他人に迷惑をかける」ことへの申し訳なさもある。
その思いが強いと、周りにこういったことを頼めなくなる。ワークライフバランスの低下。
また、「頼めない」ことによって連帯感の醸成効果も享受できなくなる。

「他人に迷惑をかける」ことは確かにあるが、
それを考慮に入れつつ、各自の価値観ですべきこと、したいことは積極的に言っていったほうがいい。
「他人(自分の周囲)に迷惑をかける」以上に大切なこと、みなが共有していることに基づくこと。
また、迷惑を勝手に作らない。

働きがいは革新の母 2011年版「働きがいのある会社」調査

[タイトル]
働きがいは革新の母 2011年版「働きがいのある会社」調査

[著者]

[掲載]
日経ビジネス, 2011年2月7日号, pp.38-49 

[アブストラクト]

[キーワード]
働きがい、人材、採用、

[要約・感想]
読んでいて思ったこと
・2つのキーワードを上げている。「働きがいは入り口で左右される」「制度のたゆまぬ改変」

・まず一つ目について、「その会社にはどういう志向性をもった人が集まっているか」によって、その会社を「働きがいがある会社」という評価をもらえる会社にするために必要な施策が違っているのではないか。

・ヴェンチャーやソフト、メーカ系ならばイノベーションを志向するメンバが多く集まっているのだから、それを成し遂げられる、まさに「挑戦しがいのある目標が化せられる」「その目標(開発しようとする製品)が面白いと思える」「それを作り上げたときの楽しさ」みたいなものが利いてくるだろう。

・サービス業なら、「お客様からありがとう」といわれることに「幸せ」を見出せる人でなければならないのではないか。それが得られるように社員を導くことが必要。たとえばディズニーランド。

・インフラ系、公共団体系だとすると、・・・安定??(苦笑)おいおい、仕事の本質とはつながって無いじゃん!仕事の内容ではなく、仕事の環境じゃん!!



・「制度のたゆまぬ改変」という点を展開してみる。

・社会環境は絶えず変化する。それに応じて、目標や社内制度を柔軟に作りかえる努力をし続けないとだめ。

・これらが陳腐化すると、会社としては競争力が失われていくだろうし、個人でみると、社会の中での相対評価として自分が関わっている仕事の価値が失われていくわけだから、働きがいを感じれなくもなる・・・ということか?。

2011年7月6日水曜日

リスク論に基づく安全・安心の合理的な考え方

[タイトル]
リスク論に基づく安全・安心の合理的な考え方

[著者]
氏田 博士

[掲載]
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学, Vol.51, No.10, pp.646-654, 2006.

[アブストラクト]
まず最近多発する組織事故や不祥事とは何かを考察する。次に安全を担保するための深層防護やリスク概念などの方法論を整理しさらにその基本となるリスク論の問題点を摘出する。リスク論が安全・安心の考え方の基本として認められるためには、人間信頼性評価や組織の信頼性評価の方法論としての十分な検証が必要である。さらに、安全性向上のためには、そしきとして技術的に考慮すべき安全文化や技術者倫理やリスクリテラシーなど、また社会側から組織や技術システムへ働きかける仕組みも不可欠である。最後に、安全性を向上するための安全ファンドなどの積極的な枠組みの動向についても述べる。

[キーワード]
リスク概念、方法論の検証、安全組織、安全のプラス評価

[要約・感想]
前半はつまらないが後半の倫理・リスクリテラシー、安全文化に関する話はなかなか面白い。

・「技術者は社会生活の中で自然にモラルを身に着けている。しかし、問題意識として、追い詰められた状況では誤った判断をする可能性がある。そこで学習目的は、学生の余裕のあるときに事例研究し、すぐに正しい判断ができるように訓練しておく」ことが必要である。

・組織事故や不祥事の「分析をしていて感じることは、その根底にある関係者、技術者の安全意識の低下が見受けられること」。
 →安全管理・リスクマネジメントを「仕事」としてしている。「仕事をよりよくこなす」という点では頑張っているが、そこに「ethics」がないように感じられる。

・「国際原子力機関(IAEA)による安全文化の定義は、「安全にかかわる諸問題に対して最優先で臨み、その重要性に応じた注意や気配りを払うという組織や関係者個人の態度や特性の集合体」である。

・すなわち安全文化とは、「組織が共有すべき暗黙の作業モラルや組織的なモチベーション、熟練技能、等の総体である。広義の安全文化は、価値観、倫理観、等の観念的な基層文化に基づき、労働観、組織観、道徳観、等として表出する表彰文化の一形態とも定義できる」。

・リーズンは安全文化を4つの構成要素からなるものとしているが、「日本の安全文化が有効に機能するには、「議論の文化」を追加すべきと考える。中でも「何事にも疑問を感じそしてそれを表明する態度」が需要。

・「組織は本来ある目的をもって作られる(機能体)が、時間とともに共同体化するわけだが、それを機能体に維持するためには、トップが常に創業者精神を忘れないことであろう」。

・技術者は「会社人の前に社会人、組織の一員の前に一個の個人という当たり前のことを当たり前に認識する」必要がある。
  → 「一個の個人」という点がポイント。あくまで「自分自身としてどう思うか?」という問い掛け。

・「倫理観の醸成のためにはNobless Oblige「高い身分または地位には、勇気、仁慈、高潔、寛大などの徳を備える義務」の自覚が重要」
  → 「誇り」にもつながる話か。職業威信の論文でもこのフランス語は引用されていたな。

An Influence of Positive Affect on Decision Making in Complex Situation: Theoretical Issues With Practical Implications

[タイトル]
An Influence of Positive Affect on Decision Making in Complex Situation: Theoretical Issues With Practical Implications

[著者]
Alice M. Isen

[掲載]
Jounral of Consumers Psychology, Vol.11, No.2, pp.75--85, 2001.

[アブストラクト]
This article reviews evidence indicating that, in most circumstances, positve affect enhances problem solving and decision making, leading to cognitive processing that is not only flexible, innovativem, and creative, but also thorough and efficent. These results have implications regarding consumers' potential reactions to affect generated by ads, products, consumption situations, and service envounters.
These cognitive effects of positve affect are considered in the context of effects on social interation that show that positve affect leads to helpong generaosity, and interpersonal understanding. Together, these findings suggest implications especially for customer satisfaction, and particularly for a role for employee positive affect, or employee satisfaction, in generating customer satisfaction.
Moreover, studies specifically in the domain of medical decision making and problem solving indicate that these implications would apply to the specific areas of doctor-patient interation, medical desicion making, and medical consumer satisfaction. Finally, it is suggested that the benefits of positive affect be considered when formulating healthcare policy and be inclued in economic models and policy decisions more generally as well.

[キーワード]
ポジティブ感情 意思決定 問題解決行動 思考 消費者行動 医療

[要約・感想]
ポジティブ感情は思考の柔軟性や完全性、効率性などを向上させる、ということ。
具体的な例として消費者行動や医療従事者の診断行動などを取り上げている。
ポジティブ感情として、どのような感情を引き出しているのかが明確になっていないのだが、一つかかれてあったのが、「キャンディやチョコレートを与える」(!?)。
そんなことで本当にパフォーマンスが上がるのか!?
ちょっと怪しいが、とりあえず、ポジティブ感情がパフォーマンスを上げる、ということを示す論文の一つ。