2010年3月11日木曜日

労働価値観測定尺度の開発

タイトル
労働価値観測定尺度の開発

著者
江口圭一、戸梶亜紀彦

掲載
産業・組織心理学研究, Vol.23, No.2, pp.145-154, 2010.

アブストラクト
Maladustment of employees to occupational life has become a serious social issue. The purpose of the present study was to develop a work values scale in order to understand their behaviors at occupational life and support them to adust themselves to their occupational life. In the preliminary study, 70 items for the scale were collected from previous literature as candidates for the scale. In the empirical study, we surveryed work values to clarify the factor structure of the work values scales, using extracted. These 7 factors agreed with the theoretical framework that we had assumed. Additionally, Crobach's reliability coefficients of the 7 subscales showed sufficiently high internal consistency. In the future, it will be necessary to conduct an experimental study of validity of the scale.

キーワード
職業生活への適応、労働価値観、尺度開発、信頼性

要約
本研究では、人間の捉え方として、人間は原因に「動かされる」存在ではなく、自ら選択した目的、すなわち価値に向かって主体的に行動する存在として捉える人間観に立つ。
この観点から、労働価値観を「個々人が職業生活の目的として重要であると考える要因」と捉える。

労働価値観を測定することは、個人的要因によって不適応状態に陥ってしまった人たちが、なぜそのような状態になってしまったのかを理解するのに役立つだけでなく、将来的に不適応に陥り易い人たちを早めにチェックすることも可能となるだろう。これらの人々に対して、測定結果を踏まえて、多様なものの見方や考え方があることを示すことによって仕事に対する意識の変革を促すなどの援助方策が考えられる。また、普段それほど意識する機会がない自分の労働価値観について振り返ってみることで、自らの職業生活、ひいては、自らの人生について改めて考える機会を提供することが出来るだろう。

結果・・・
作成した調査票の結果に対して因子分析を実施した結果、「社会的評価」、「自己の成長」、「社会への貢献」、「同僚への貢献」、「経済的報酬」、「達成感」、「所属組織への貢献」の7つの因子が抽出された。

感想
う〜ん。。。どうも違和感がある。納得感がないというか。。。
各個人の労働価値観は、集約すると、これらの7つの変数がそれぞれどういった値となっているか、という形で表されるということだろう。
違和感の根元は、
1.本当にこれだけ??これは、質問紙のプロトタイプがどれだけ網羅的に質問紙を作れているかどうか。網羅性に欠けていると、抜け落ちてる軸があるのかもしれない。それを防ぐために、既往研究を数多く調査して、そこからピックアップしているということか。。。。やれるだけのことはやってるから、ゆるして〜って感じ??
2.寄与率の検討がない。要するに38項目に集約しているわけだが、どの程度回答全体を述べているのだろうか。もし寄与率が小さいのであれば、これら以外の因子の存在も否定できないということになるぞ・・・。

ただ、この7因子自体は、分からなくもない。

2010年3月1日月曜日

自動化システムの限界とその根拠の情報不足による過信

タイトル
自動化システムの限界とその根拠の情報不足による過信

著者
伊藤誠, 稲橋 広将, 田中 健次

掲載
ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.2, No.5, 2003.

アブストラクト
This paper investigates why and how a human overtrusts an automated systems. Since previous studies on trust have not discussed overtrust, we propses a model of trust in which overtrust is expressed as a special case. In this model, trust is the range within which an automated system is expected to work successfully. It is supposed that there exist two limits in terms of ability of automation: the designed limit within which the automated system is guraranteed to work successfully, and the actual limit within which the automation may work. When the range of expectation exceeds the actual limit, a cognitive experiment is conducted. We focused on effects of information given to users on the limits. Subjects were divided into three groups: group 1 that is given only the desgined limit, group 2 that is given both the designed limit and the actual limit, and group 3 that is given not only the two limits but also the reason for the limits. The results suggest that it it effective to prevent overtrust by informing the limits and the reason.


キーワード
trust, over-reliance, automation, human-machine cooperation, training

要約
システムへの過信が生じる理由やプロセスについての研究。
研究の結果得られた知見としては、以下の通り。
・設計上の限界のみを知らさせる場合、経験をつむにつ入れて期待の範囲が広まる場合がある。このことは、被験者が自動化システムの動作の限界を見極めようとすることによるものと考えられる。
・設計上の限界に加え、機能上の限界も知らさせていると、期待の範囲が当初から機能上の限界に及び易い。機能上の限界を超えなければ問題ないとの判断がなされているものと解釈できる。
・設計上・機能上の限界に加えて、その根拠が知らされている場合、期待の範囲は機能上の限界よりも安全よりの範囲にとどまりやすく、拡大する傾向も小さい。

要するに、機能上の限界と設計上の限界の間には、多少の差が存在する。その差が存在していることが知られてしまうと、最終的には、徐々に設計限界は広げられるか、もしくは「まだ機能的には大丈夫」という考えの基で、設計上の限界は破られ、機能上の限界を元に機器操作を行なう。これを防ぐための方法として、機能上の限界・設計上の限界はどのような根拠で設定されているか、それを破るとどのようなことが起こるかを明確に伝えることで、安全側に操作を留めるようになる。

自発的な安全運転を促すためのヒューマンマシンインタフェースについて

タイトル
自発的な安全運転を促すためのヒューマンマシンインタフェースについて

著者
平岡敏洋

掲載
電子情報通信学会技術報告SSS2009-9, pp.13-16. 2009

アブストラクト
The driving support systems can be separated into two types from the viewpoint of interaction between the system and drivers: 1) a direct driving support to intervene driver's operation directly, and 2) an inderict driving support to provide information to encourage drivers to keep safe driving based on their own judgement. This paper introduce a few examples about the later systems, and discusses points to ponder at the system design.

要約
研究事例を3点紹介。
1点目:リスク量を過大に知覚させるシステム・・・
人の錯視(実際の車両の速度が同じでも、外の「見え」が加速しているときのように見えると、加速感をもつ)によって、加速感を与えつつ、実際の速度を押させさえる方法。無意識的な行動変容を促す。
2点目:直面するリスクの把握を支援するシステム・・・
ステアリングの操舵に関して、表示系を工夫して、リスクの把握を促して、意識的に安全側の行動を促すようなシステム。(詳細は、いまいちよくわからない)
3点目:エコドライブ支援による安全運転行動の誘発
燃費効率をリアルタイムで情報提示することで、「ある目標」を各自が設定し、その数字を達成しようとエコドライブ(自分にとってもスムーズで効率的な運転)を行なうようになる。また、エコドライブは≒で安全運転でもあり、エコドライブ計をつけることで安全運転も達成できる。

最後に、安全運転を促すためのインタフェースとしては、以下のような設計指針が挙げられている。
(1)安全運転に対するインセンティブを高める
(2)情報を連続的かつマルチモーダルに提示する。
(3)S-R適合性を満たすようにインタフェースを設計する
(4)有能感を促進するような娯楽性を盛り込む
(5)錯覚などを利用して知覚リスク量を増加させる
(6)システムの制御や仕組みを直感的に分かり易く設計する


感想
特に3点目が興味深い。
全被験者が燃費計の目標を達成したいと思ったと答えたとのことだった。介入したものとしては燃費計の設置だけであり、「燃費を見せる」
ということだけでエコドライブ行動が促されたとのこと。ここから色々と考えた。
1.娯楽性が維持されている間は行動がキープされる。⇒飽きた場合にはどうか。
2.ポイントは行動が維持されればいいので、娯楽性がキープされている間に「技能」が身について、「飽きたとしても安全運転はキープされる」という状態にあればよい。
3.ただ、「飽きた」場合に、新たな刺激を求めだすと、逆に危険運転の方に戻ってしまうのではないか。
4.となると、「技能が成熟する」までの間は少なくとも「飽き」が来させないような方法が必要となるということか。