2011年5月12日木曜日

「働きがいを育てるCSRコミュニケーション」—CSRコミュニケーションが従業員の働きがい、および企業文化醸成にもたらす価値形成—

[タイトル]
「働きがいを育てるCSRコミュニケーション」—CSRコミュニケーションが従業員の働きがい、および企業文化醸成にもたらす価値形成—

[著者]
宮田 穣

[掲載]
相模女子大学紀要. A, 人文・社会系 70, 31-43, 2006

[アブストラクト]
This report clearly demonstrates through two surveys and two case studies that proactive efforts in CSRby a corporation leads to the activation of internal communication activities, revitalizes employee labor, and leads to the development of corporate culture which looks ahead to the future generations.
In paticular, the analysis focuses on how concepts of values of individual employees can be qualitatively changed by communication, and highlights the importance of a communication style that shares "narratives" in the organization along with development steps of sharing the information and concept of values in the oranizaion.

[キーワード]
CSR, Mental Health, Narrative, employee Communication, Corporate Culture

[要約・感想]
「CSRに関して、従業員同士てコミュニケーションを行うことによって、従業員の働きがいを向上させると共に、企業文化にCSRの内容を価値観として浸透させる」ということを論文の核として論じている。論文の流れとしては、現状の問題点を調査し、その結果分かった課題に対して「こうすればよいのではないか」ということを検討する、という流れ。

(1)要するに、CSRを果たすとは、環境レポートとか地域貢献といった部分だけを取り出すのではなく、「仕事の社会的価値」「そもそも何のために働いているのか」を十分に理解・浸透させることである。

(2)CSRの取り組み・浸透に関する調査の結果、現状では従業員の意識レベルは「自社の基本方針や姿勢が理解、共有化されているレベル」にとどまっており、「CSRと日常業務との関わり」への理解や共有、「CSRを意識した業務遂行」までは至っていない。また、CSRをテーマにした会議が多くなったり、問題がおきたときにCSRの視点からの検討もなされるようになっているが、まだ始まったばかりであり、人によって知識もレベルが違う、という現状が明らかになった。

(3)CSRのための議論をすることによって企業組織と外部社会との関係の認識と認識の再構築やコミュニケーションが促進されること、従業員自身の働き方や生き方への再考を促す契機となること、それを通じて「従業員の企業との関係の再構築、および自己発見」が起こるという効果が期待できる。ただ、その効果を起こすためには、上記の現状を改善していかなければならない。そこでは、「従来から続いてきた価値観とそれに基づく関係(従業員と企業)を引きずりつつ、新たな関係構築を内包しながら、いかに質的転換を図っていくか」が課題となる。

(4)本論で提起するのは以下のフェーズのどれにいるかを意識したうえで、それぞれを実現する上でのコミュニケーション(CSRコミュニケーション)の姿を具現化することである。
「従業員が自社のCSRの考え方や取り組み状況を情報として共有化する」フェーズ
  ↓
「それぞれの仕事とCSRとの具体的な繋がりを明確にし、それを理解し納得する」フェーズ
  ↓
「CSRをということを意識しなくても、働き方そのものにその企業が考えるCSRそのものがすでに内在している」フェーズ
具体的には第1フェーズでは、「情報の共有化」「従業員の認識の統一」のための「教養的コミュニケーション」が求められる。第2フェーズでは、従業員個々の仕事の関わりを踏まえながら、その場その場で納得いくまで価値観を議論しあう「教育的なコミュニケーション」が求められる。第3フェーズでは「お互いの仕事のありようをごく自然にやり取りする中で、お互いを認め合い、価値観を改めて確認しあう「理想的なコミュニケーション」が求められる。

(5)さらに加えて、ナラティブを活用したコミュニケーションが効果的と期待される。ナラティブによって共感、感情移入、想起、想像といったプロセスにより伝えたい内容が膨らみ、ときに伝え手の構想委譲の内容が高い納得とともに伝わることがある。

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