2011年5月11日水曜日

アメリカ型成果主義の導入とコンピテンシー—個と集団の調和—

[タイトル]
アメリカ型成果主義の導入とコンピテンシー—個と集団の調和—

[著者]
岡本 英嗣

[掲載]
目白大学経営学研究, Vol.7, 55-67, 2009

[アブストラクト]
日本の主要企業はアメリカ型成果主義の導入によって幾多の問題に直面しており、今なお試行錯誤が続けられている。その結果、多くの従業員は働きがいを喪失させている。そこで本稿は、企業で取り組まれている成果主義の現状と問題点を実装事例や調査事例等によって分析し、働きがいある職場環境をはぐくむためには、どのような雇用システムを採用すべきであるか、これについて考察するものである。
今までの研究成果(岡本c,2008)から「働きがい要因」を組織にかもし出すためには、伝統的な日本的経営よりも成果主義の方が優れていることを明らかにした。しかし企業の現場では第1に従来からの日本的経営とその後の新しく導入した成果主義との二重構造になっているのが現実である。第2に成果主義が導入されて以来、個人と集団の葛藤がみられ、これを如何に調和させていくかが大きな課題となる。同じく第3に成果主義を単なる仕事の「結果」ではなく、その従業員の組織での活躍の程度、プロセスでの役割、能力、資格などの客観的評価によって総合的に評価する方策が考えられる。
このように個人の成果を総合的に捉えて報酬を決めていこうとするのがコンピテンシーである。これを推進するためには社内外の教育訓練による自己啓発支援システムの設置が必要不可欠であると考えられある。

[キーワード]
働きがい、自己啓発支援システム、成果の総合評価、コンピテンシー、教育訓練

[要約・感想]
全体としては、根拠に乏しく、あくまで「説」を唱えているだけに見える論文。
ただ、内容そのものは示唆を与えてくれる。
特に賃金体系の歴史やコンピテンシーのまとめは参考になる。
研究の問題意識は
「成果主義は原則的にはよいのだが、今までの見える成果だけを評価したり、個人主義で仕事をしたりするのを助長してしまった。大切なのは「成果を出す能力」を評価することである、それはどのようなもので、それを伸ばすにはどのようにすればよいか」
ということ。その流れでコンピテンシーが紹介されている。

なお、「働きがい」という言葉に関して、この論文では、モチベーションを高めるものを「働きがい要因」という呼称をしている。具体的にその内容は、(1)業績を反映した賃金システムの存在、(2)その職場での良好な人間関係、(3)直属の管理者の思いやりのある態度、(4)責任ある仕事が与えられ、その成果に達成感がえられていること(5)個人の仕事の成果についての適正な業績評価と適正な報酬が実際にあたえられること、の5つを挙げている。なお、(1)と(5)は似ているが、(1)はそういうシステムが存在していること、すなわち(5)に対する期待がもてることを示しており、(5)は実際にそれら得られたことによって得られる満足感を指しているものと考えられる。

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