2011年5月31日火曜日

組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—

[タイトル]
組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—

[著者]
上瀬 由美子, 下村 英雄, 今野 裕之, 堀 洋元, 岡本 浩一

[掲載]
社会技術研究論文, Vol.3, pp.111-117, 2005.

[アブストラクト]
本研究では、組織における違反の背景に職業威信を位置づけ、職場風土、職行属性、個人属性と合わせて関連を検討することを目的としている。サンプリングによって抽出した501人の成人男女の回答を分析した結果、不正かばいあいの違反経験は、違反を抑制する雰囲気のある職場であるほど少なくなっていた。その一方、自分の職業について社会的責任が高いと考えている回答者ほど、違反を経験する傾向のあることが明らかになった。

[キーワード]
違反、職業威信、自尊心、職業適スティグマ、職場風土

[要約・感想]
要約すると。。。
職場における違反と職業威信がどのように関連するかを明らかにすることを目的とした研究。
結果・・・

相関分析から
1.職業的自尊心は、個人的違反への抵抗感、組織的違反への抵抗感と関連している。
2.職業的スティグマは、組織的・個人的違反への抵抗感と不正かばいあいの経験、個人的違反の経験と関連している。
3.社会的責任は不正かばいあいの経験と関連している。

さらに重回帰分析から、
1.個人的違反を行うか否かは、個人的違反への抵抗感が大きく作用する。また、個人的違反への抵抗感は、加齢以外にも、違反を排除しようとする職場の雰囲気の影響も受ける。個人的違反の低減には命令系統の整備が重要であり、それが組織のける違反容認の雰囲気を抑制する、という知見があることから、本研究の結果からは、命令系統の整備が行われた場合、組織の風土が変わるだけでなく、そのことがそこで働く人々の個人的違反への抵抗感を高め、結果として個人的違反の経験が低減するという流れが生じることが示唆される。
→ 要するにグループダイナミクス

2.不正かばいあいの経験は、違反を容認したり排除するのに消極的である職場風土が影響を与えていた。一方で、社会的責任も影響を与えていた。相関分析の結果と同様に、社会的責任が高いと思われている職業についている回答者の方が不正かばいあいの経験をしているという結果であった。このことから、警察や自動車業界、鉄道業界など、「自分の仕事には社会的責任があり、絶対に違反や事故を起こしてはいけない」と強く思い込むことが、逆に不祥事の隠蔽などにつながることを示唆している。社会が特定の職業に対して清廉潔白であることを強く期待することが、逆に組織での違反のいっぺんに結びつくことを示唆している。
→ 「社会的責任(ステレオタイプ)を認知してしまう→不正の隠蔽」というパス

感想として、
後半の知見が非常に興味深い。直感的には納得がいく。
また、「世間から社会的責任が高いと思われている職業」というのもステレオタイプの一つ。このようなステレオタイプは如何にして築かれるのか。維持されているのか。直感的には、ここにメディアの影響があるように思う。
また、「社会的責任→隠蔽」のパスは、今回、業界をまたいだ結果である点も興味深い。やっぱり「人だから」そういうステレオタイプへの反応をしてしまう、ということか。

ちょうど、今ステレオタイプの本を読んでいるので面白い。

ただ、研究として「認知された職業威信」を「客観的な職業威信の認知」としている点はどうかと思う。本来であれば、「世間から〜〜〜だと思われていると思う」というのが正解だと思う。まあ、この尺度はこの尺度として、それはそれで「その人のその職業に対するステレオタイプ(期待されている姿)」を表しているからよいと思うが。

結局、「職業威信」という言葉がイマイチ腑に落ちない。よく意味が分からない概念だ。人からどのような職と思われているか、にさらに「よい」や「望ましい」「信望」などの評価が結び付けられている概念ということか。

なお、誇りの文脈では、職業的自尊心として、価値、世の中への貢献、自慢、満足、尊敬、肯定的—否定的などのイメージで捉えられている。

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