2011年5月30日月曜日

職業威信と安全性拡充のための社会心理学的装置の検討

[タイトル]
職業威信と安全性拡充のための社会心理学的装置の検討

[著者]
下村 英雄、堀 洋元

[掲載]
社会技術研究論文, Vol.1, pp.258-267, 2003.

[アブストラクト]
本研究では、職業威信に関する先行研究を検討することによって、安全性拡充のための社会心理学的な装置の可能性を探索することを目的とした。その結果、職業威信は各国間、世代間で不偏であるという特徴が見られた。次に、職業威信に関する社会心理学的な研究を概観した。社会心理学では、職業威信はおもにジェンダーやキャリアガイダンスとの関連で論じられていた。最後に、認知された職業威信として、自分の職業に対する誇りの変数に焦点を当てた。いくつかの調査研究をもとに誇りの変数が、年齢や性別によって異なること、違反や事故と関連が見られる可能性があることなどを論じた。

[キーワード]
職業威信、安全性、ジェンダー、キャリアガイダンス

[要約・感想]
職業威信という概念を勉強しろ、と芳賀先生から薦められて読んだ論文。

とりあえず、「職業威信」という言葉の意味がよく分からなかったが、ようするに、「職に対する格付け」ということか。その職を「すごい」とか「格好いい」など「よいもの・のぞましいもの」と思っている程度のこと。

今回の論文はレビュー論文。

もともと職業威信は社会階層論で論じられていたもの。職による人々の格付けという人に対する観点が社会的に存在しているという文脈。それに対して、その格付けの存在が人々の個々人の行動・心理にどのように与えているかを論じることを「社会心理学的観点」とし、著者らの取る観点としている。

興味深い点を上げると、
1.職業威信はステレオタイプの一つであり、ある程度、各国間、世代間で固定されている。すなわち、子供たちは世の中に威信の高い職業と低い職業があることを大人の世代から学び、自分が大人になったときに次世代に伝達している。
2.職業威信は「社会的・一般的・統計的」に言われているものと、個人の実際の受け止め方としてのものとの2つの捉え方がある。具体的に言うならば、同じ収入・同じ威信の職業につく両者のうち、片方は自分の職業を高く評価し、もう一方は低く評価することがありえる。これは、個人個人の主観的な職業威信を反映しているといえる。
3.「自分の職業に対する威信」を「自分の職業に対する誇り」として定義すると、「職場や職業に対する誇り」は「自分の働きを通じて広く社会とつながっているという感覚と類似した意識」である可能性が既往研究から示されている。また、専門的職業では「仕事そのものが誇り」の源泉になっている可能性がある。さらに、l職場や仕事に対する誇り」は大きく3つの側面に分類できる可能性がある。すなわち「社会的に承認されることによって感じる誇り」「人々の生活を支えたり、幸せにできることによって感じる誇り」「自分で納得のいく仕事できることによって感じる誇り」の3つ。

特に、3つ目の点は、自分のこの間のアンケートの「働きがい・ほこり」の因子分析結果とも結構近い結果といえる。

0 件のコメント:

コメントを投稿