2011年5月16日月曜日

生きがい・働きがいの構造

[タイトル]
生きがい・働きがいの構造

[著者]
安藤 喜久雄,和田 光一,田草川 僚一

[掲載]
駒沢社会学研究, Vol.8, pp.1-16, 1976

[アブストラクト]
None

[キーワード]
生きがい、働きがい、欲求、マズロー、

[要約・感想]
前半は研究の中での仮説モデルの説明。後半はマズローなどの諸知見の整理。
「生きがい」「働きがい」をどのようなものと捉えているか、という点では具体的に定義がなされている(別の良く知られた概念で捉える)わけではないが、個人が持っている欲求・価値観・志向性・かかわり方の結果に対する自己評価の結果の表現(感情的反応・行動的反応)と捉えている。
具体的には、C次元がポジティブ(P)であった場合、「安心感・充実感・満足感や達成感等の主観適所帰結をもたらし」、Nであった場合、「それは不安感・不満感・疎外感や挫折感等の主観的帰結をもたらす」を述べている。さらには、Pであった場合、上記のようなEmotionalな反応と共に、行動的反応としてポジティブなら「目標及び欲求の達成ないし充足、個人の志向するか価値の実現と維持に対して、そのかかわり方の姿勢を活性化させ(積極的・意欲的・活動的に対象にかかわろうとする)てくる」。ネガティブなら「そのかかわり方の姿勢を非活性化させ(消極的・無気力的・非活動的に対象とかかわろうとし、極端な場合には無関心や拒否ないし拒絶等を生み出す)てくる」。

欲求から環境を媒介として自己評価が行われ、それに対する主観的・行動的反応という流れを単純な因果関係ではなくて、フィードバックループを持ったダイナミックなプロセスとして描いている。

A次元:          
欲求・価値観        ←−−自己の再評価−−−−┐
(志向性・かかわり方)                     |
↓                                 |
B次元:                              |
生活環境          ←−−環境の再評価−−−−┤  
ないし                               |
産業労働環境                          |
↓                                 |
C次元:                              |
自己評価                             |
(志向性・かかわり方の結果)                 |
(および、環境評価)                       |
(P) or (N)                            |
↓                                 |
D次元:                              |
自己評価の結果                         |
(P)→・生きがい・働きがいの実現・達成          |
(N)→・生きがい・働きがいの喪失              |
変容・修正   −−−−−−−−−−−−−−−−−┘

後半では主にマズローの著書を整理している。
そのなかでも以下のような行がある。
「・・・こうした表出行動にともなう精神状態をマズローは、海洋的フィーリングと呼び、「果てしない水平線が眼前に開けた感じ、いままでになく強くなったと同時に力が抜けてしまったという感じ、大きな恍惚、驚愕、畏敬の感じ、時と所の忘却、そして最後に、なにか極度に重要で貴重なことがおきたという確信」であると描写している。・・・これがわれわれが問題とする"生きがい"すなわち、"さわやかさ"であると思われる。」
ちょっと、宗教的というか哲学的というか幸福論が混じっている感じがするが、仕事の中でそういうものを感じている状態を「働きがい」を感じている状態と見ているということだろう。まあ、要するに自己実現。

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