2011年5月17日火曜日

組織の心理的問題改善への意識調査の寄与に関する一事例

[タイトル]
組織の心理的問題改善への意識調査の寄与に関する一事例

[著者]
高原 龍二

[掲載]
産業衛生学雑誌, Vol.52, No.1, pp.28-28, 2010.

[アブストラクト]
組織における心理的問題への対策のために用いられる意識調査は、対策が必要であるかを検証することと、必要であるならばどういった点が問題の要因であるのかを数量的に明確化することで組織的判断の材料とすることが主な目的といえる。本稿では、組織の心理的問題への対策の必要性を明らかにし、有効な対策へのヒントとなるように、共同調査項目と組織特有の問題や対策についての独自項目を組み合わせた意識調査を受託し、対策後にその有効性を確認するために経年調査を行った事例を報告する。従業員の負担感が高く、精神疾患求職者数が多い大手メーカー系企業の地方工場にて、労働組合を通じてヒアリングを行い、その結果に基づいて設計した項目を含んだ質問紙調査を行った。共同調査項目を用いた分散分析からは、従業員のメンタルヘルスや労働意欲が優位に低いことが示され、多母集団同時分析による意識構造の比較や、独自項目との相関からは、人の入れ替わりの激しさや指揮系統の混乱といった該当組織特有の状況の中で、仕事量の多さと雰囲気の悪さによって人間疎外的な状況が形成されていることが示された。結果は労働組合によって経営陣に伝えられ、労使での対策が実施された。一年後、労使での対策を項目化したものを加えて再調査を実施し、対策の検証を行った。分散分析からは優位な改善が示され、経年対応させたアグリゲート・データを用いた銃回帰分析からは、労使での対策の一部が有効であった可能性が示唆された。本事例のように、調査の受託主体と対策の主体が異なる場合、組織的判断への資料の効果性の確認のために、調査設計や統計的分析を工夫して、実証的に組織の実態を提示することは有益な手段であると考えられる。

[キーワード]
アクション・リサーチ、メンタルヘルス、分析手法、労働環境

[要約・感想]
アクションリサーチ→質問紙の設計→アンケート実施→分析→結果のフィードバック・・・・(現場による改善)・・・・>経年比較による改善の効果検証
という流れを示した論文。面白い。
特に、職場のメンバのモチベーションやメンタルヘルスにはこういった手続きが基本的な流れとなるということ。
自分自身の研究も基本的にこういう流れになるということだろう。勉強になる。

「働きがい」という点では、Deciの内発的動機づけや、仕事の楽しさ、メンタルヘルス、職業ストレス、有能感、自己決定といった文脈で捉えている。

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