2011年6月15日水曜日

集団内における迷惑行為の生起及び認知—組織風土・集団アイデンティティによる検討—

[タイトル]
集団内における迷惑行為の生起及び認知—組織風土・集団アイデンティティによる検討—

[著者]
尾関 美喜, 吉田 俊和

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.47, No.1, pp.26-38, 2007

[アブストラクト]
本研究では大学生の部活動・サークル集団における迷惑行為の生起及び認知に組織風土と集団アイデンティティが及ぼす影響を検討した。組織風土を集団が管理されている程度である管理性と、集団内で自由に意見や態度を表明しやすい程度である開放性の2側面で構成した。組織風土と迷惑行為の生起頻度との関連を検討したところ、管理性が集団活動に影響を及ぼす迷惑行為の生起を、開放性が集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為の生起を抑制することが示された。また、組織風土と集団アイデンティティが迷惑の認知に及ぼす影響を検討した。この結果、集団活動に影響を及ぼす迷惑行為については、管理性と開放性の両方が高い集団(HH型)の成員は管理性が高く開放性が低い集団(HL型)・管理性が低く開放性が高い集団(LH型)の成員よりも迷惑度を高く認知した。さらに集団アイデンティティの強い成員は集団アイデンティティの弱い成員よりも迷惑度を高く認知した。集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為については、組織風土、集団アイデンティティともに迷惑度認知に影響を及ぼさなかった。

[キーワード]
組織風土 集団アイデンティティ 集団内における迷惑行為, 人間関係

[要約・感想]
一つ前の論文のもとになっている論文。こっちがあって、一つ前の論文がある。

組織における「望ましくない行為」の生起や認知に関する論文。
組織風土を管理性と開放性に分けて捉えている点は興味深い。
また、それと集団的アイデンティティを独立変数として、
迷惑行為を説明しようと試みている点も興味深い。

なお、「管理性」というのは、集団が規範に基づいて管理の成されている程度。
「開放性」というのは、集団内で学年に関係なく自由に意見を表明しやすい程度。

とりあえず、結論を自分ありにもう少し噛み砕くと、、、
(1)集団の中で規範(ルール)がきちっと定まって、それに基づいてキチンと管理されている組織では、「集団活動に影響を及ぼすような迷惑行為」とここで定義している行為があまり起こらない。
(2)集団の中での人間関係が、そんなに上下関係が厳しくなく、フラットで気軽な空気のある組織では、「集団内の人間関係に影響を及ぼすような迷惑行為」とここで定義している行為はあまり起こらない。
→ 「管理性ばっかりが強く、開放性に乏しい組織においては、人間関係に影響を与える迷惑行為が多発し、人間関係に軋轢が生じやすい可能性がある。」とのこと。まさに層だと思う。

(4)集団に対する帰属意識の強い成員は、「集団活動に影響を及ぼす迷惑行為」とここで定義している行為の迷惑度を高く認知する。
(5)組織風土と、「集団活動に影響を及ぼす迷惑行為」とここで定義している行為の迷惑度認知は関係があり、管理性・開放性ともに強い組織と管理性は強いが開放性が弱い組織のメンバの迷惑度認知は管理性は弱いが開放性が強い組織の迷惑度認知よりも高い。
→ もともと管理性が弱いということは、そもそも「組織としての活動」というものへのコミットメントが弱い組織であると考えられる。このため、そのような組織では「集団活動に影響を及ぼす」という点について、そもそも迷惑度認知の基準が曖昧になっていると考えられる。(要するに、実践コミュニティではないということか・・・)

(6)「人間関係に影響を及ぼすような迷惑行為」とここで定義している行為の迷惑度の認知には、組織風土(管理性、開放性)や集団的アイデンティティは関係ない。
→ 何らかの「人間関係に影響するような迷惑行為」があったとき、それを迷惑と思うかどうかは、組織風土とは無関係である。迷惑と思う奴もいれば、それほど迷惑でないと思う奴もいる。また、どの人がどう思うかは、別に帰属意識とも関係ない。

結構、色々な組織にも当てはまりそうな知見。今回は、サークル活動を対象としているところが研究の知見の限界を定めていて、他の組織にこの知見をそのまま応用するのはちょっと危険。ただ、仮説を立てる上で意味はある知見と思われる。

ただ、、、因子分析で、これらの因子を出しているのだけど、累積寄与率が40%を切るっていうのは果たしていいのか?要するに、得られた回答のばらつきは、抽出した因子で捉えようとした場合、ノイズが60%は入っているっということ。いいんか?それで・・・。
分析方法として主因子法を使っているのが問題ではないか?最尤法とか最小二乗法とかだとどうだったんだろう・・・。

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