2009年2月20日金曜日

異常時の作業遂行能力に関する概念整理

登録日:2009_02_20_PM_04_20_12

タイトル:異常時の作業遂行能力に関する概念整理

著者:井上 貴文

abstract: The safety of railway operation has improved in usual situations due to a number of security measures. On the other hand, "the ablity of workers in unusual situations" (hereinafter referred to as AWUS) to perform their duty is becoming more and more important, where safety is still dependent on it. AWUS is lower than that in usual situations since workers are unfamiliar with non-regular work and distrubed by their evoked tension. One of the way to predict AWUS is to evaluate in the education phase and another is in the aptitude test phase. This paper discussed methods of suitable evaluation for this purpose.

引用元:鉄道総研報告, Vol.19, No.1, pp.43-46, 2005

keyword:異常時, 作業遂行能力, 教育・訓練, 適性検査, 緊急時, 能力評価

独自のkeyword:メカニズム, 概念整理

要約・感想:鉄道の運転時における「異常時」の特徴を考察し、さらに、異常時対処能力の評価方法について検討とている。



<異常時の特徴>

1.本質的に、個々の運転士が異常時に接する機会はきわめて少なく、平常時での運転取扱いに比べ、異常時の取扱いは習熟が進まないものである。

2.「異常時」はさらに「平常時→異常時」という移行状況と、「移行後の異常時」という2つに分けられる。前者は、異常時となりかかっている状況において、「異常時になってしまう」のを防ぐか、あるいは、「移行後の異常時」をどのような「異常時」とするかを規定するプロセスである。一方、後者は、「異常時になりきった後(どのような異常時かが確定した後)、平常時に復旧するプロセスである。後者は、基本的にマニュアルが存在する。

3.いずれの場合においても、運転士はタイムプレッシャーを受けるが、特に前者においては、状況がダイナミックに変化していくため、そのダイナミズムの下で適正な行動が取れなければ、状況がさらに悪化していく。このため、運転士は、物理量としての「時間的余裕」が少なくなる。一方、後者においては、状況は比較的安定しているが、列車遅延への責任感や、実際に乗っている乗客の目からくる心理的なタイムプレッシャーを受ける。

4.一方で、「異常時」は「比較的よく直面する異常時」と「めったに直面しない異常時」がある。前者においては、異常時というよりは、「平常時」と捉えても良いと考えられる。(どの程度の頻度で直面する異常時が「近似的平常時」であるか研究しても面白いかもしれない)



<運転士の行動>

1.基本的には、望ましくない情動が喚起され、注意容量の制限を受ける。

2.特に異常時への移行状況においては、「驚き、緊張、焦り」などの情動が生じ、注意容量が制限され、行動の遅れや、誤った意思決定が生じる。

3.移行後の異常時状況においては、タイムプレッシャーから「緊張、焦り、切迫感」などの情動が生じる。基本的に、マニュアルにしたがっていればよいが、教育・習熟の問題から、平常時に比べれば、例えマニュアルに従った作業であっても、エラーが起りやすい。



<教育・訓練、評価方法>

1.教育・訓練は、基本的には実車訓練、シミュレータ訓練(運転台シミュレータから、PC上で動作する程度のものまで)に依る。

2.異常時対処能力の評価には、現実的には3つの方法がある。すなわち、①実際の具体的取扱い行動の発現の有無からの評価、②行動観察に基づくその時々の運転士の心理状態の評価、③運転士自身の申告からの評価、である。

┌----------------┐

|        |←-行動評価←-------┬-行動観察(他者)

|運転士の対処能力|          |

|(行動・心理) |          ↓

|        |←-心理状態の評価←-┴-自己申告(本人)

└----------------┘

  ↑これを見たいが、直接みれない。



3.いずれも弱点があり、これらを組み合わせる必要がある。

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