2010年10月5日火曜日

ワーク・モチベーションとCSR評価−ハーズバーグの動機付け衛生理論とCSR評価の関係性構築モデル−

[タイトル]
ワーク・モチベーションとCSR評価−ハーズバーグの動機付け衛生理論とCSR評価の関係性構築モデル−

[著者]
上原 衛, 山下 洋史, 大野 �裕

[掲載]
日本経営工学会論文誌, Vol.60, No.2, pp.104-111

[アブストラクト]
現在、CSR(Corporation Social Responsiblity:企業の社会的責任)を重視した企業経営が注目されている。企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)が企業の持続可能性(サスティナビリティー)を視野に入れたCSRを重視したしてんから、企業経営のあり方を求め始めており、企業は企業価値向上に向けてCSRに取り組み始めている。また、従業員が働きがいを持って仕事に従事すればその企業のCSRも向上させることが出来、一方、CSRを果たしている企業の従業員はCSRに対する意識も高く、ワーク・モチベーションも一層高くなるという正のスパイラルの関係に注目し、本業を通じて社会貢献を行いCSRを果たそうと努力している企業もある。本研究では、ハーズバーグの動機付け衛生理論に基づき、動機付け要因(M因子)追求者と衛生要因(H因子)追求者の違いによって、CSR評価における自社の積極的な施策や戦略である「攻め(Aggressive Criteria)」の評価と自社の内部管理体制やリスク管理体制の「守り(Defensive Criteria)」の評価に差が表れるという視点に注目し、組織内部者のワーク・モチベーションと自社のCSR評価との関係性を簡潔かつ分り易く表現するための新たなモデルと提示する。

[キーワード]
行動科学, ハーズバーグの動機付け衛生理論, M-H因子, ワーク・モチベーション, CSR

[要約]
CSRの評価指標として、「経済面」、「環境面」、「社会面」という3つの縦軸と、「攻めの施策」、「守りの施策」という2つの横軸の、トータルで6つのカテゴリーがある。組織の各メンバにおける、この各カテゴリーの評価の自社のCSRの評価の関係を調べた。具体的には、それぞれの軸を独立しているものとして捉え、各個人の要素を排除した、M因子追求者・H因子追求者別の、自社の攻め施策および守り施策に対する評価のウェイトと、経済、環境、社会のそれぞれに対する評価のウェイトという2つのパラメータを設定し、以下の式で表した。

Y(i;,j) = Σb(k)(Σa(j,l)・x(i;jkl)) + e(i;jkl)
i : 評価者
j : M因子追求者とH因子追求者のタイプ
k : 経済、環境、社会 の 3因子
l : 攻め、守り、社会 の2因子
Y(i;j) : iさんのモチベーションタイプと、自社のCSRに対する総合評価
x(i;jkl) : i さんのモチベーションタイプと、自社の6つのカテゴリー分けのカテゴリーごとの評価
e : 残差

実際にある会社の社員に対して自社のCSRを評価してもらい、その結果から上記の式のパラメータを計算した結果、
(1)M因子追求者に於いては、自社の施策の攻めと守りの両方を均等にウェイトを置いて、総合のCSRを評価していた
(2)H因子追求者に於いては、自社の守りの施策に特にウェイトを置いて自社の総合のCSRを評価していた
このことから、コスト削減や内部管理・リスク管理はH因子としての性格を持つということが分った。

[感想]
色々と疑問が・・・。
最初の概念論はまあ分らなくもない。(なお、ここでの社会的責任は「本業を取り組む」ということと「本業以外で社会に対して支援金を出す・文化事業を行なう(自社の本業の向上につながらないようなこと・ボランティア)」とを分けて考えておく必要はある。)

しかし、そもそも論として、研究の中で一体なにをどのように明らかにしようとしているのかが不明。仮説は「企業のCSRへの取り組みは、従業員のワークモチベーションを挙げるための単なるトリガーであるだけでなく、従業員が働きがいを持ち、ワークモチベーションが高く、活性化している従業員が働く企業こそが社会的責任を果たせるのではないだろうか」という部分だと思うが、これが実証されているとは思えない。

また、具体論として、このモデルを用いて検証したということは、まあ、結果としてそうなった、ということだろうが、なぜこんなけったいなモデルを考えたのだろう??重回帰分析ではダメだったの??それに、このモデルは互いに軸が独立しているという前提を暗黙に立てている気がするが、交互作用はなかったの??決定係数はかなり高い値が出ているとはいえ、他の分析方法(モデル)と比較してこの式が決定係数が高いというのであれば、それを書いてもらわないといけない。

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