2010年10月7日木曜日

人が守る安全を考える

タイトル
人が守る安全を考える

著者
小松原 明哲

掲載
JR EAST Technical Review - No.29, pp.1-4, 2009.

アブストラクト

キーワード
レジリエンス・エンジニアリング
要約
期待されたことが果たせなかったことをヒューマンエラーという。
エラー防止のアプローチは今までは2つあった。
(1)個人責任の時代・・・エラーは本人の不注意で、処罰して矯正されるべきもの。態度を入れ替えるための教育をする。
(2)人に頼らない時代・・・人は頼りにならぬもの。出来る限り自動化・機械化を進める一方、人の行動は作業標準を定め、それを徹底するように教育する。

(2)のアプローチは科学的に分り易い(あるエラーが頻発するなら、マニュアルが悪い。ある人がエラーを頻発させるなら、マニュアルの不徹底と考える)が、以下のような限界がある。
(1)作業者の意欲が沸かない。
 人は創意工夫や自己裁量、自分自身の成長があるときに、仕事に対して意欲が沸くもの。マニュアル化が徹底されと、システムが十分に完成されたものとなっていると、やらされ感になる。

(2)設備改善には限界。
結局、改善をやったらやったで新たなリスクが生まれる。どれだけ頑張っても人が絡む以上リスクが0とはならない。また、設備投資の限界という現実的問題もある。

(3)マニュアル爆発
マニュアルが膨大になり、教育に掛かるコストが拡大する。

(4)状況が変動する場合には向かない
変動する状況の一つ一つにマニュアルは作れない。作ったとしても、現実にそれを参照しながら作業を行うことは、ダイナミックに状況が変化する中では不可能。

異常事態を予め想定していたとしても、実際には状況はその場その場で異なる。結局、係わり合いを持った人々の臨機応変な行動によって事故の被害を如何に食い止めるかが重要となる。このような人の柔軟な行動に頼る安全を考えることが必要。これがレジリエンス・エンジニアリングの考え方。

最終的には個人の資質をいかに高めるか。マニュアルの徹底という、具体的な行動の指示ではなく、行動の裁量権を与えた上で、適切な行動の意思決定が行なえるように人のコンピテンシーを高めることが求められる。それは以下の4つをそろえることが大切。
(1)心と体の健康
(2)業務に直結した技術・知識
(3)コミュニケーション力・気付き力など業務を円滑に回す能力
(4)危険感受性、職業人としての誇り・責任感
この4つをそろえるための施策を組織的に講じることが必要。

感想
コンパクトに安全維持の考え方がまとめられている。論文というよりは解説記事といったところだが、非常に分り易い。

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