2010年6月25日金曜日

「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果—優勢職員と民間企業従業員との比較—

タイトル
「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果
—優勢職員と民間企業従業員との比較—

著者
山下 京

掲載
産業・組織心理学研究, Vol.11, No.2, pp.147-157, 1998.

アブストラクト
To examine the possible differences in the structures of work motivations between employees of postal offices and private organizations, a survey measuring the levels of the work motivation in both 10,852 postal workers and 2,396 private organizations employees were analyzed. The data showed that almost all of the postal employees had lower work motivation than their private organization counterparts. The present result, howerver, indicated that a particular department of postal employees were motivated more by jobs providing enjoyment. The further results drawn with covariance-structure analysis revealed that the higher work motivation in departments of postal saving or postal life insurance were inspired by intrinsic factors such as autonomy, but less by extrinsic factors such as money. The present study suggets that the work motivations in the goverment postal workers could be promoted to the compatible level to their private sector counterparts by introducing job enrichment and improving the reward system.

キーワード
郵政職員,仕事の楽しさ,内発的動機づけ要因,外発的動機づけ要因,報酬構造

要約
(1)民間企業の職員では、「仕事の楽しさ」(働きがい・ワークモチベーション)に外発的要因よりも自律感なんどの内発的要因が強く効く事が分かっている。
(2)一方で、公務員においては外発的要因による動機づけ・内発的要因による動機づけはともに低い、また、それらよりも人間関係を重視する、ということも分かっている。
(3)(2)から公務員に於いては有能感や自律感を支援することによって「仕事の楽しさ」を向上させるという方法はあまり機能しないとも考えられる。

そこで、公務員として郵政職員を取り上げ、
(P.1)郵政職員のワークモティベーションの水準や職務の特性などを、民間企業従業員との比較に基づいて整理・把握する。
(P.2)公務員の「仕事の楽しさ」の構造を明らかにし、民間企業従業員の「仕事の楽しさ」の構造が、公務員においてもいえるのかどうかを検討する。
(P.3)なお、さらに郵政職員は郵便・貯金・保険の3つの全く異なる業務が存在する。例えば簡保の営業系外務職員では、営業成績に対する歩合給が付加されている。このことに注目し、個人のパフォーマンスと報酬の随伴性の程度が「公務員」のワークモチベーションに及ぼす影響についても調べる。

データは国際経済労働研究所の全国規模の調査から。

モチベーションの測度として、「仕事の楽しさ」「仕事の生きがい感」「仕事の継続意志」
内発的要因、感情的要因として、「自律感」「有能感」
仕事そのものに関る認知的要因として、「職務状況の自律性の存在の認知」「多様性の存在の認知」「フィードバックの存在の認知」 
 ←ここの二つを分けているところは、結構ポイントな気が個人的にする。
その他の要因(外的要因)として、「給与水準への満足度」「職場の人間関係」

結果・・・
(R1)全体としては、郵政職員は民間企業従業員に比べ「仕事の継続意志」は高いが、一部の職種を除いて「仕事の楽しさ」は低い。つまり、「仕事は楽しくないが、勤めは続けたい」と思っている。
ただ、郵便内・外務は「仕事の楽しさ」が低く、単調感も強い一方で、保険外務や貯金外務など歩合給となっている職種では、「仕事の楽しさ」や「仕事の継続意志」「給与の満足感」が高い。このように、公務員として同じ組織に属していてもその従事する職種によって差がある。
(R.2)共分散構造分析の結果から、これまで民間企業従業員で検討されてきた「仕事の楽しさ」の構造が、郵政職員(公務員)に於いても適用可能であることが支持された。つまり、基本的には公務員に於いても「仕事の楽しさ」に「自律感」「有能感」が民間企業と同じように大きく影響する。一方で、「給与への満足度」と「仕事の楽しさ」については、民間企業と類似した保険外務・貯金外務では、郵便・事務に比べ、関係は薄く、郵便・事務では逆に関係が強い。このことから、同じ公務員でも職務が異なると、「仕事の楽しさ」に影響を与える要因は異なっている。すなわち、「公務員」、「民間企業従業員」ということ「そのもの」は「仕事の楽しさ」の構造に影響を与えているわけではない。

感想
「公務員だから」モチベーションが低いのではない、ということ。ただ、これは「それよりも職種や業務内容、職務設計、遂行状況が影響を与えている」ということを意味しているわけではない。あくまで、私企業の社員と公務員として、モチベーションに影響を与えている要因の「構造」はそれほど大きくは違わない、ということ。

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