2011年11月3日木曜日

同僚からの職場無作法がネガティブ感情および職務満足感・職務逃避行動に及ぼす影響

[タイトル]
同僚からの職場無作法がネガティブ感情および職務満足感・職務逃避行動に及ぼす影響


[著者] 
櫻井 研司、スティーブ・エム・ジェックス、マイケル・エー・ギレスピー
(JEX M. Steve ,  GILLESPIE A. Michael)


 [掲載] 
産業・組織心理学研究, Vol.25, No.1, pp.13-23, 2011


[アブストラクト]
Based on Affective Event theory (Weiss  & Cropanzano, 1996), the current study developed and tested a model examining the mediation effects of negative emotion of the relationship between coworker incivility and both job satisfaction and work withdrawal behavior. In addition, the study investigated the relationship between supervisor ostracism and the frequency of incivility among employees. Analysis based on a structural equation modeling (N=693) suggested that employee negative emotion mediates the relationship between coworker incivility and both job satisfaction and work withdrawal behavior. Result also suggested that supervisor ostracism is positively related to coworker incivility. Finally, from a stress management perspective, the study investigated and showed a significant interaction effect of interpersonal justice perception for the relationship between negative emotion and work withdrawal behavior. Result and future implications of the study are discussed.


[キーワード]
職場無作法、労働者の感情、職務満足感、職務逃避行動
workplace incivility, employee emotion, job satisfaction, work withdrawal behavior


[要約・感想] 
職場無作法という言葉に興味がいたく惹かれた論文。これぞ、まさに「斜に構える風土」!!
中々内容も面白い!!


結論をまとめると、要するに、
職場での無作法な行動(加害者の攻撃的意図が不明確なものの、社交的ルールに反した職場での非礼な対人行動)が多い職場においては、そこで働くメンバはネガティブ感情(人間関係面からくるストレス)を感じやすくなり、それが職務に対する満足感を低下させたり、職務からの逃避行動(暗黙に許容されている以上の休養をとってしまう)を増加させる
というもの。
さらに、
職場での無作法な行動の頻度は、上司による部下統率面での能力の低さからの影響を受ける
組織が自分のことをリスペクトのある待遇を接してくれていると感じている人(対人公平性の認知)は、そうは感じていない人と比べて、無作法な行動によってネガティブな感情が生じたとしても、職務からの逃避行動をとる傾向は抑制される。


ここでの対人公平性の認知は、組織からの承認の認知であり、組織へのロイヤリティやコミットメントと結びつけて捉えても良いだろう。


以下は、考察からの抜粋。。。
「上司の部下統率に欠ける行動が高いと認識する労働者ほど、その職場において職場無作法を頻繁に経験すると言うことが分かった。しかし当然のことながら、筆者らはこの結果を根拠として、部下それぞれの職場無作法を上司に責任転嫁する意図はない。しかし、上司の重要な職務能力の一つに職務チームの管理が含まれる。また既存の研究から職場の雰囲気や部下の職場での行動に対して上司は強い影響を及ぼすことも分かっている。したがって部下と率先して交わる、コミュニケーションを図るなど、上司の行動によって部下同士の対人行動へ肯定的な影響を及ぼすことは可能である」


要するに、あくまで今回の結果は、部下の職場での無作法な行動が出るかでないかは上司のリーダーシップの影響もあり得るということ。間違いなくそれのみが原因だ、ということではなく、一要素だといっている。


また、アンケートによる共分散構造分析を用いていると言う点からの言及で、「本研究は横断研究であり、因果関係を証明するのではない。したがって今後縦断調査により、職場無作法と、労働者の職務行動の因果関係をより明らかにすることが課題である」という記述がある。ご尤も!!

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