2010年1月19日火曜日

組織市民行動を規定する集団的アイデンティティ要因と動機要因の探索—職場集団と大学生集団との比較から—

タイトル
組織市民行動を規定する集団的アイデンティティ要因と動機要因の探索—職場集団と大学生集団との比較から—
 
 著者
潮村 公弘, 松岡 瑞希 
 
abstract
We investigated the relationship among organizational citizenship behavior, motivation sources, and collective identity through the comparisons between workplace groups and (hobby-oriented) university student groups. We mainly focused on exploring the functions of four kinds of motivations assessed by the Motivation Sources Inventory; 1) Intrinsic Process motivation, 2) Internal Self-concept-based motivation, 3) External Self-concept based motivation, 4) Instrumental motivaion, on organizational citizenship behavior. The results were the following: In both workplace group and university student groups, there was a negative connection of Intrinsic Process motivation and a positive connection of Internal Self-concept-based motivation with organizational citizenship behavior. Only in workplace groups, there was a marginally significant positive connection of Instrumental motivation with organizational citizenship behavior. As for functions of collective identity, in workplace groups, no connections were found amoung collective identity, the gour elements of motivation sources, and organizational citizenship behavior.On the contrary, in university student groups there were some understandable connections. This differences based on the groups were interpreted by the role of free will toattend each kind of group. In the discussion we focus on the findinds that the kind of motivation to encourage/inhibit organizational citizenship behavior depends on the nature and situations of organizations. 
 
引用元
信州大学 人文科学論文集 人間情報学科編, Vol. 39, pp.27-472005 
 
keyword
 Organizational Citizenship Behavior, Motivation Sources Inventory, Collective Identity. 
 
独自のkeyword
動機傾向, 集団的アイデンティティ     
 
要約・感想
 いい分析をしているのに、考察が非常にもったいないな・・・。論文を要約すると、
<B><U>方向性:</B></U>
「組織市民行動を規定する人の動機傾向を探る」 
 
<B><U>目的:</B></U>
組織市民行動を規定する動機傾向や組織特性の影響を調べること
 
<B><U>方法:</B></U>
「組織市民行動、モチベーション(マクレラントの動機傾向)、集団的アイデンティティを用いたパス解析」という分析を、職場と大学サークルの両方で行い、それらを比較検討する。
 
<B><U>結果:</B></U>
モチベーションと組織市民行動について、職場・大学生共に、「内因的な過程(情緒的「楽しみ」を求める傾向)」は組織市民行動と負の関係、「内的自己概念(自分が思い描く「状況のあるべき姿」の実現を求める傾向)は組織市民行動と正の関係性を持っている。また、職場においてのみ、「道具性(具体的明示的報酬を求める傾向)」は組織市民行動と正の関係性を持っているか可能性がある(有意傾向)。
一方で、集団的アイデンティティとして測った「内集団の重要性(自分が所属している集団の自分にとっての重要性)」「内集団の評価(自分が所属している集団に対する自分自身による評価)」は、大学サークルではモチベーションとの関連や、組織市民行動との関連があったが、職場では両者との関係は無かった。
 
<B><U>考察:</B></U>
・組織市民行動は、個人の内部の自己評価を高める行動である。
・組織市民行動は他者に認めてもらいたいという動機によっては促進されない。
・特に両方の組織に対する負の関係への考察から、人の一般的傾向として、内因的な過程動機に基づく活動や課題に恵まれていない人たちが、組織市民行動を積極的に行なうことを通して、地震の役割や、自身の活動や課題の価値を見出しているというダイナミクスが推量される。
・職場という収入を得るために少なくとも幾分かは強制的に所属しなければならない組織では、内集団に対する評価は、組織への自発的な貢献行動や個人の動機に影響しないと考えられる。すなわち、職場における組織市民行動は、内集団への評価や重要性からは独立した、個人の性質や職場の風土によって、動機づけや自発的な行動が決定されていると考えられる。
 
 
で、感想としては、、、
〔�〕
ここで出している動機は、「動機傾向」であって、その人の個人特性として、そういうものを求める傾向の強さ。なので、内因的過程との負の関係については、「活動や課題に『恵まれていない』」と捉えるのではなく、「そういうものを求めていない」ということを言っているはず。ということは、今回の結果から言えることとしては、以下のことであろう。
 
�「自分自身が『楽しい』と思える行動をしたい」あるいは「自分自身とる行動は『楽しい』行動であってほしい」という思いが弱い人、
また、
�「自分自身が思い描く『あるべき姿』を達成したい、それにつながる行動をとりたい」という思いが強い人
は、
(A)組織市民行動を取る傾向が強い。
 
�'「自分自身が『楽しい』と思える行動をしたい」あるいは「自分自身とる行動は『楽しい』行動であってほしい」という思いが強い人、
または、
�'「自分自身が思い描く『あるべき姿』を達成したい、それにつながる行動をとりたい」という思いが弱い人
は、
(B)組織市民行動を取らない傾向が強い。
 
〔�〕
細かい話だが、そもそも「組織特性を調べる」として集団的アイデンティティを組織特性を反映したものとして持ってきているのは良いとしても、測度として「内集団の重要性」と「内集団の評価」を因子として持ってくるのは良いのか?「重要性」と「評価」の違いが分からない。直感的には、互いに独立なものではないように思う。使う両者の違いをもう少し細かく説明してほしい。
 
また、同じく細かい話だが、考察の中の「個人の性質や『職場の風土』によって」という行、今回測定しているのは全て動機傾向であって個人特性だろう。組織特性として集団的アイデンティティを引っ張ってきてて、それと組織市民行動やモチベーションが関連があるというのなら、まだ何か言い様があるかもしれないが、今回の結果からはそれは関連がない。となると、ここで「職場の風土」が行動を引き出している考えるためのデータが全く出されていないように思う。大学と組織との違いから一般的に言えることとしたら、組織への参加における「自由意志」によって、「内集団の評価」・「内集団の重要性」と、モチベーションや組織市民行動との関係が変ってくるということだけだろう。
 


0 件のコメント:

コメントを投稿