2009年1月29日木曜日

安全教育における擬似的な危険体験の効果と課題

タイトル
安全教育における擬似的な危険体験の効果と課題

著者
中村 隆宏

abstract
 労働安全教育の現場では「体験型教育」「体感教育」等の擬似的な体験を取り入れた教育手法が展開されている。しかし、その理論的背景について十分な検討がなされないまま「体験すること」のみが重視された結果、労働者の実質的な安全態度の向上につながらず、むしろ労働者の不安全行動を助長する自体が生じることも懸念される。
 本稿では、労働安全教育における擬似的な体験の意義と諸課題について検討した。教育効果向上のためには、単なる体験にとどまることなく、実際場面で遭遇する危険とその対処方法について具体的なイメージを形成し、過去経験と結びつけて展開を図ることが重要である。また、危険補償行動に対して適切な対応を図らなければむしろ、災害発生李とを高める可能性があり、新たな教育手法の普及・展開においてはこうした副作用を十分に考慮する必要がある。

引用元
安全工学会誌, Vol.46, No.2, pp.82-88 (2007)

keyword
安全教育, 危険補償, イメージ・トレーニング

独自のkeyword
実体験と模擬体験との関連付け

要約・感想
シミュレータを活用した訓練の全体像を設計する上で持っておかなければならない視座を示している。

シミュレータはどんなにがんばってもシミュレータに過ぎない。ややもすると、シミュレータのリアリティやインパクトのみに目が行き勝ちであるが、それを追及したとしても、結局のところ、それのみでは、「シミュレータ」というゲームに「勝つための方法」を身につけるに過ぎなくなり、現場で活用されている知識と独立したものとなってしまう。

よって、シミュレータを活用する際には、シミュレータでの体験を鍵として位置づけ、実際の各訓練生が持つ実世界の自分の作業のイメージを引き出したり膨らませたりすることが必要である。そうすることで、シミュレータのリアリティという点の問題をクリアも出来るし、何よりも、「実際に活用される知識」と「シミュレータを用いた『訓練』で獲得される知識」とが結びつく。

 まあ、要するに、あとのフォローアップで、シミュレータで得た体験と、各人の実世界のイメージを結びつけるようなフォローアップ方法が必要だということ。

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