2010年6月25日金曜日

「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果—優勢職員と民間企業従業員との比較—

タイトル
「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果
—優勢職員と民間企業従業員との比較—

著者
山下 京

掲載
産業・組織心理学研究, Vol.11, No.2, pp.147-157, 1998.

アブストラクト
To examine the possible differences in the structures of work motivations between employees of postal offices and private organizations, a survey measuring the levels of the work motivation in both 10,852 postal workers and 2,396 private organizations employees were analyzed. The data showed that almost all of the postal employees had lower work motivation than their private organization counterparts. The present result, howerver, indicated that a particular department of postal employees were motivated more by jobs providing enjoyment. The further results drawn with covariance-structure analysis revealed that the higher work motivation in departments of postal saving or postal life insurance were inspired by intrinsic factors such as autonomy, but less by extrinsic factors such as money. The present study suggets that the work motivations in the goverment postal workers could be promoted to the compatible level to their private sector counterparts by introducing job enrichment and improving the reward system.

キーワード
郵政職員,仕事の楽しさ,内発的動機づけ要因,外発的動機づけ要因,報酬構造

要約
(1)民間企業の職員では、「仕事の楽しさ」(働きがい・ワークモチベーション)に外発的要因よりも自律感なんどの内発的要因が強く効く事が分かっている。
(2)一方で、公務員においては外発的要因による動機づけ・内発的要因による動機づけはともに低い、また、それらよりも人間関係を重視する、ということも分かっている。
(3)(2)から公務員に於いては有能感や自律感を支援することによって「仕事の楽しさ」を向上させるという方法はあまり機能しないとも考えられる。

そこで、公務員として郵政職員を取り上げ、
(P.1)郵政職員のワークモティベーションの水準や職務の特性などを、民間企業従業員との比較に基づいて整理・把握する。
(P.2)公務員の「仕事の楽しさ」の構造を明らかにし、民間企業従業員の「仕事の楽しさ」の構造が、公務員においてもいえるのかどうかを検討する。
(P.3)なお、さらに郵政職員は郵便・貯金・保険の3つの全く異なる業務が存在する。例えば簡保の営業系外務職員では、営業成績に対する歩合給が付加されている。このことに注目し、個人のパフォーマンスと報酬の随伴性の程度が「公務員」のワークモチベーションに及ぼす影響についても調べる。

データは国際経済労働研究所の全国規模の調査から。

モチベーションの測度として、「仕事の楽しさ」「仕事の生きがい感」「仕事の継続意志」
内発的要因、感情的要因として、「自律感」「有能感」
仕事そのものに関る認知的要因として、「職務状況の自律性の存在の認知」「多様性の存在の認知」「フィードバックの存在の認知」 
 ←ここの二つを分けているところは、結構ポイントな気が個人的にする。
その他の要因(外的要因)として、「給与水準への満足度」「職場の人間関係」

結果・・・
(R1)全体としては、郵政職員は民間企業従業員に比べ「仕事の継続意志」は高いが、一部の職種を除いて「仕事の楽しさ」は低い。つまり、「仕事は楽しくないが、勤めは続けたい」と思っている。
ただ、郵便内・外務は「仕事の楽しさ」が低く、単調感も強い一方で、保険外務や貯金外務など歩合給となっている職種では、「仕事の楽しさ」や「仕事の継続意志」「給与の満足感」が高い。このように、公務員として同じ組織に属していてもその従事する職種によって差がある。
(R.2)共分散構造分析の結果から、これまで民間企業従業員で検討されてきた「仕事の楽しさ」の構造が、郵政職員(公務員)に於いても適用可能であることが支持された。つまり、基本的には公務員に於いても「仕事の楽しさ」に「自律感」「有能感」が民間企業と同じように大きく影響する。一方で、「給与への満足度」と「仕事の楽しさ」については、民間企業と類似した保険外務・貯金外務では、郵便・事務に比べ、関係は薄く、郵便・事務では逆に関係が強い。このことから、同じ公務員でも職務が異なると、「仕事の楽しさ」に影響を与える要因は異なっている。すなわち、「公務員」、「民間企業従業員」ということ「そのもの」は「仕事の楽しさ」の構造に影響を与えているわけではない。

感想
「公務員だから」モチベーションが低いのではない、ということ。ただ、これは「それよりも職種や業務内容、職務設計、遂行状況が影響を与えている」ということを意味しているわけではない。あくまで、私企業の社員と公務員として、モチベーションに影響を与えている要因の「構造」はそれほど大きくは違わない、ということ。

2010年6月22日火曜日

検査課題における不安全行動の効果的な防止

タイトル
検査課題における不安全行動の効果的な防止
Preventing unsafe acts in inspection tasks

著者
田中 孝治, 加藤 隆

掲載
心理学研究, Vol. 81, No.1, pp.35--42, 2010.

アブストラクト
Unsafe acts such as ignoring scheduled inspection can cause serious consequences. This study examines the effects of two reinforcing stimuli and four reinforcement schedules in maintaining sampling behavior in a virtual inspection task. Participants were asked to decide (yes or no) for each "product" wheteher it should be sampled for inspection. In Experiment 1, "yes" responses were reinforced with the message that defectives were found, once for every one to nine (on average five) times (VR), only the first time (FTO), or never (None). The sampling behavior declined gradually in FR and VR and somewhat surprisingly more sharply in FTO than in None. In Experiment 2, the sampling behavior was effectively maintained when the participants were regulary provided with the evaluative feedback on their sampling behavior, although they were kept informed that defectives were not found. These results indicate the importance of utilizing reinforcing stimuli whose administration is independet of the outcome (e.g. defective or not) of the response (e.g., inspection) to be reinforced.

キーワード
unsafe act, reinforcing stimuli, reinforcement schedule, inspection task.

要約
要するに、まず前提として、
(theme)品質管理や安全管理が的確に成されていればいるほど、不良品や不具合の発生頻度は低くなり、不良・不具合発見という強化刺激を受ける機会は少なくなる。一方で、ある程度の割合で不具合・不良発見が行なわれなければ、それは、「検査行動」に対する正の強化刺激が与えられないということになるので、検査行動の実施頻度の低下を招きうる、というジレンマのモデルが考えられている。

(Objective)検査行動をいかに適切に持続させるか、という点での人の不安全行動の防止策を検討する。そのための手掛かりとして、2つの実験を行なった。

(Exp1)「最初の検査行動に対して、一発、強化刺激を与えた後、その後は検査行動に強化刺激を与えない」という強化刺激スケジュールの行動維持に対する効果は、全く強化刺激を与えない場合や、すでにある程度の効果が認められている強化スケジュール(要するに、固定比率で強化刺激をあたえるスケジュールと、変動比率で強化刺激を与えるスケジュール)に比べて、どの程度のものなのか?

→結果として、無強化条件、固定比率条件、変動比率条件に比べ、初回刺激条件では、行動が維持されなかった。原因は、この実験からは明確には分からないが、少なくとも、安易に「練習」的に最初のうちに集中して強化を与える(不良品の発見を体験させる)というのは、何もしないよりも却って結果を悪くする可能性があることが示唆された。

(Exp2)「強化刺激」に位置づけるものとして、「不良品の発見」を用いるのではなく、「検査が一定の割合以上で行なわれているか(行われていれば「合」、行われていなければ「否」)の評価の定期的フィードバック」を用いた場合の、行動維持の効果はどの程度のものなのか?対象実験にあたる条件として、実験1の無強化条件、変動比率条件も実施

→結果として、検査が行なわれているかの合否評価を与えた場合の方が、行動は維持される。

(総合考察)
本実験の実験1の結果から、以下のようなことが起こる可能性があることが示唆されている。
すなわち、初期には不良品が比較的多く発見されたとしても、その後の品質管理によって発生頻度が抑制されるはずである。しかし、実験1の初回のみ条件の結果は、品質管理の工場が皮肉にも品質検査の怠りに結びつき、それが不良品や不具合の検出の妨げになる可能性があることを示唆している。
(要するに、「ラインの立ち上げ時には不良率は高い。そのため、検査行動はその高い不良率でもって強化される。しかしながら、ラインが成熟してくると不良率は当然低下する。すると、それによって検査行動は、何の強化もされない場合よりも一層、消去される」というモデルが具現化される可能性は確かに存在する)

さらに実験2について、「リスク認知が不安全行動を抑制させる」という知見があるが、今回の「評価」というものを与えることは、実験参加者に対して「ある事柄」へのリスクを認知させることになったといえる。それは、すなわち、「自分自身の検査行動の評価(つまり、自分自身の評価)が悪くなること」である(検査をサボタージュして不良を見逃すというリスクではないことがポイント!!)。「検査をサボタージュして不良を見逃す」というリスクよりも「評価」というより分かり易いパーソナルなリスクに変換できたため、容易にリスク認知でき、検査行動が効果的に維持されたと考えられる。

・・・・ここはちょっと疑問。「検査をサボタージュして不良を見逃す」というのも、「自分の評価を下げる」という意味でリスクなのではないかな?ポイントなのは、「たまにしか出てこない、殆ど出てこないかもしれない、0.00・・・%ということが起って、評価が下がる」というリスクと、「それをしないと、確実に評価が下がる」というリスクとの比較だからこそ、認知しやすかったのではないかなぁ・・・。

本研究の結果は、人の検査行動に対する強化の利活用について重要な示唆をしている。すなわち、検査院が自分自身でてきかっくにリスク認知を行なうことには限界があることから、不安全行動による事故の責任を検査員個人に帰するのではなく、検査行動そのものを評価するなどの制度を組織として構築していくことの必要性を示している。検査員のリスク認知を容易にすると言うメリットが期待でき、さらに、リスクが自分自身の評価というパーソナルなものであるため、肯定的・否定的どちらの評価結果も、自分自身の評価を向上させようとする動機によって、検査行動の維持に効果を持つものと期待できる。つまり組織自体が検査の継続そのものを明示的に制度として評価するならば、その評価は検査員に対する効果的な強化刺激となり、検査員の不安全行動による事故を防ぐことが出来るものと期待できる。

感想
結構、最後の総合考察は面白い!!
特に、個人の行動が組織の制度によっても規程されるのだから、上手く制度設計するべきだと述べている点はまさに納得!
さらに、上記の結果の考察としてはなんとも言えないが、少なくとも「パーソナルな評価」というものに対する「リスク」は、人は敏感だということ。
これは、人の特性みたいなものとして考えてもよいだろう。
難しいリスクを言うより、パーソナルなリスクに置き換えてやるほうがよいだろうね。
さらには、そのパーソナルなリスクにしても、そのリスクが顕在化する確率を、制度を上手く設計することで高める(リスクの質は変るとしても)ことが出来る。
パーソナルなリスクと、本来、組織として避けたいリスクが直接に結びつかなくても、間接的に、結果として結びツテいればよい。
その意味で、「やったかどうかを評価する」というのは、「やる」と言う行動は誘発する。そして、「やる」ことによって不良発見率も高まる。間接だが、それでよい。
こういう考え方で、うまく制度設計してやれないか。

2010年6月4日金曜日

食品の安全性と企業逸脱

タイトル
食品の安全性と企業逸脱

著者
宝月 誠

掲載
立命館産業社会論集, Vol.42, No.3, pp.1-23, 2006.

アブストラクト
食べ物の安全性について、本研究は企業逸脱の観点からアプローチする。食べ物の大半が商品として生産・流通している現状からすれば、食品の製造・販売企業の行動に焦点を定めて安全性の問題を考えることは意義がある。第1に安全性を損なう食品企業の逸脱がどのようにして生じるのかを明らかにし、第2に職の安全性を高めるために企業に対する社会的コントロールのあり方を論じ、第3に安全性について考え方を再検討する。明らかにされたことは以下の点である。(1)食品企業の逸脱のタイプは、「安全軽視型」「利益本位型」「逸脱誘因型」「組織弛緩型」に分類される。これらいずれのタイプについても説明するのは、「企業は絶えず、なんらかの問題状況に直面しているが、違法な手段によってその解決が可能であると『状況の定義』をする経営者や担当者がおり、またそれを指示する企業文化が存在するときに、企業逸脱の可能性は増す」という命題である。(2)食品企業の逸脱はこの要因に加えて6つの他の要因のどれかが関連している。現実的な対応としては、コントロールしやすいいずれかの要因を取り除くことが有効である。(3)食品の安全性を高めるには、「日常生活感覚」や「科学的根拠」、「最悪のケースの想起」に基づく安全性の考え方を超えた新たな意味世界が必要となる。

キーワード
食品の安全性、食品企業の逸脱、コントロール

要約
食品の安全性という観点から食品関連企業の「逸脱」について、(1)逸脱発生の原因と対策、(2)そもそもの「安全」というものに対する考え方、の2点について論じている。
ここで「逸脱」とラベル付けしているものは、要するに食品の安全性・信頼性を損なう行為を行なうことを指す。

(1)逸脱発生の原因と対策について・・・・
既往研究のレビューから、「企業逸脱がどのようにして生じるか」について以下の7つの命題を提起する。
【命題1】過度な市場競争の状態であるか、あるいは、集中化・寡占化が進んでいる状態など、市場環境が企業や業界に逸脱機会を与え易いものであるほど、企業逸脱の可能性は増す。

【命題2】技術的に不確実性が高い・信頼性が低いものである場合や、人による操作ミスが起こり易い(不注意・能力不足・過労などによって)場合であればあるほど、企業逸脱の可能性が増す。(→ここでの逸脱は悪意のあるものだけでなく、結果として社会から「逸脱した」とラベル付けされたもの全般を「逸脱」と呼んでいる。)

【命題3】行政や司法機関による効果的なコントロールが機能していない場合や、規制緩和などで規範が緩やかになった場合では、企業は身勝手な行為を行ない易くなり、企業逸脱の可能性が増す。逆に、被害者・大衆・メディアによる批判が強いほど、コンプライアンスのポーズをとることが多くなる。

【命題4】絶えず直面している問題に対して、違法な手段によってその解決が可能であると「状況の定義」をする経営者・担当者がおり、それを支持する企業文化が存在する時に、企業逸脱の可能性は増す。
→より具体的には以下のような場合に逸脱に踏み出す可能性が高い。
<第1>:企業が直面する問題状況の解決を迫るプレッシャーが強く、これらの問題を解決できない経営者・担当者を無能とみなす企業文化の強い場合。
<第2>:企業の社会的責任や信頼性を重視する意識が弱い組織文化の下では逸脱は生じ易い。逆に、これらが強い場合には逸脱をするモチベーションは規制されるし、行なったところで組織内部で支持されない。
<第3>:第2のような文化の違いは、経営者や担当者が、どれだけ広い社会的視点と長期的な時間的パースペクティブを有しているのかという点に如実に表れる。(→これだけ、第2の補足になっている・・・)
<第4>:企業を取り巻く社会そのものが、安全性を重視する集合意識を思っている場合には、企業内部や業界もそれを意識して(「反映して」の方が正しいと思うが・・・)社会的責任を強調する。逆に、社会のあらゆるもの(たとえばスポーツ活動や学校、医療などまでも)が市場化され、競争や利益追求が強調されると、企業も相した社会潮流の影響を受け、社会的責任意識が希薄化する。社会が市場化へと向かうと、個の利害関心に基づく合理的計算は増えても、意味世界の公共性は弱まる。

【命題5】企業犯罪が実行されるのは、組織の管理システムが逸脱をサポートする体制となっているときである。ここで管理システムとは、「逸脱を命じる強制的な権力」、「社員に逸脱行為を引き受けさせる魅力的な報酬」、「愛社精神(組織が生き残るためには違法行為もやむなし、と自ら正当化する)」、「他の企業が違法なことをしている」、というものを指す。

【命題6】組織内部で企業行為を相互にチェックする機能が働きにくい組織ほど、企業逸脱を予防しにくい。ここでは、特に相互チェックは他者への干渉であるので下手をすれば組織の部門間の軋轢を生むことになりかねず、組織内でその実施に消極的になる場合が多く、そうした組織では逸脱を事前に回避できる力は弱まる。

【命題7】組織内部で情報共有が円滑におこなわれておらず、企業行為のミスやリスク情報が共有されることが少ないほど、逸脱は回避されにくくなる。一部の部門や担当者に認知されたリスクも、隠蔽されたり、特定の部門・担当者にとどめられ内部で処理されたり、時には放置されたりする傾向が強いと、小さなミスやリスクの認識が放置されたままになって、ミスやリスクが新たなミスやリスクを惹き起し、最終的に重大な事故を招くこともある。

以上の7つの命題は仮説であるが、実際の食品関連企業の逸脱の説明においては、どの命題がより関連しているか。それを調べた。結果として、逸脱のタイプは、「安全軽視型(命題2+4+7)」「利益本位型(命題1+4+5)」「逸脱誘因型(命題3+4+6)」「組織弛緩型(命題4*3)」に分類された。(特に組織弛緩型とは、企業やそのメンバの利益は重視しても企業活動の社会的責任に対する意識は比較的希薄で、かつコントロールかんきょうもそしきにたいして 庇護的であり、また組織内部で相互に行為をチェックする体制に欠けている場合を指す。要するに、ぬるま湯につかっている組織)
これらから、命題4が全てに共通していることが分かった。

企業逸脱をコントロールするためには、安全軽視型においては、経営者や担当者の社会的・時間的パースペクティブに働きかけて、彼らの意思決定の仕方を変更させる取り組みが重要。利益本位型は逸脱をサポートするような管理システムを改善していくべき。逸脱誘因型は、外部のコントロール環境はメディアの報道や消費者運動によってになわれるが、企業の不祥事を契機にして、企業批判が高まる。こうした動きによって行政や政府もフォーマルなコントロールの改善を示さざるを得なくなる。組織弛緩型は、外部のコントロールが必要。

(2)食べ物の「安全性」についての考え方・・・・
安全に対する考え方は企業や消費者、行政、専門家の間で必ずしも同じではない。
安全に対する考え方は3つ
 ・生活感覚に基づく安全性・・・・素朴に「これは危ないのではないか」と感じるもの。消費者、メディア。

 ・科学的根拠に基づく安全性・・何%の確率での危険性を示すもの。さらには、それを基にリスクを如何に制御するか、受容するか検討するもの。リスクコントロール=「リスク評価」「リスク管理」「リスクコミュニケーション」。業者と政府・行政。ただ、厳密に有害性・危険性が証明されなければ、現状の流れを止めない・対策しない(そのほうが、業者にとっては都合が良い)、という不作為も生み出す。

 ・最悪ケースの想起に基づく安全性・・・最悪のケースが起こる場合を想起し、それに基づいて備え、対応し、災害を回復しようとする戦略。市民グループ。

このようなそれぞれの安全性の捉え方の分裂が、食の安全に対する問題の解決(社会的な意味での解決)の足を鈍らせている。互いに相手の視点を取得し、相互理解を府負ける相互作用に、分裂解消の可能性がある。科学的な知見を取り入れ、イマジネーションを膨らませ、日常生活の状況で現実的に安全性について考えるようになることで、安全性に関する意味世界も新たなレベルになる。そのためには、以下のような事柄の議論が必要である。
【感覚の共有】
・消費者が生活感覚で「不安」と感じる食品に対して、生産者・行政はどれだけその不安を共有し、解消できるか。
・安全性に対して「不確実性が高い」と感じる食品を、業者が開発・販売したり、行政が認可する場合に、どれだけ懸念を解消できるか。
【持続性(サスティナビリティ)への認識】
・現在のことだけでなく、「子孫への影響」も考慮して、安全性を確保する必要性についての共通認識はどれだけ可能か。
・「環境への影響や資源の浪費」といった点についてもどれだけ関係者の間で共通認識を持つことが可能か。



感想
う〜ん。。。根拠がいまいちというか、目からうろこがないというか。やってることに対しても、結果に対しても。
まあ、安全に対する考え方が3つあるという、後半部分はそこそこかなぁ。

2010年3月11日木曜日

労働価値観測定尺度の開発

タイトル
労働価値観測定尺度の開発

著者
江口圭一、戸梶亜紀彦

掲載
産業・組織心理学研究, Vol.23, No.2, pp.145-154, 2010.

アブストラクト
Maladustment of employees to occupational life has become a serious social issue. The purpose of the present study was to develop a work values scale in order to understand their behaviors at occupational life and support them to adust themselves to their occupational life. In the preliminary study, 70 items for the scale were collected from previous literature as candidates for the scale. In the empirical study, we surveryed work values to clarify the factor structure of the work values scales, using extracted. These 7 factors agreed with the theoretical framework that we had assumed. Additionally, Crobach's reliability coefficients of the 7 subscales showed sufficiently high internal consistency. In the future, it will be necessary to conduct an experimental study of validity of the scale.

キーワード
職業生活への適応、労働価値観、尺度開発、信頼性

要約
本研究では、人間の捉え方として、人間は原因に「動かされる」存在ではなく、自ら選択した目的、すなわち価値に向かって主体的に行動する存在として捉える人間観に立つ。
この観点から、労働価値観を「個々人が職業生活の目的として重要であると考える要因」と捉える。

労働価値観を測定することは、個人的要因によって不適応状態に陥ってしまった人たちが、なぜそのような状態になってしまったのかを理解するのに役立つだけでなく、将来的に不適応に陥り易い人たちを早めにチェックすることも可能となるだろう。これらの人々に対して、測定結果を踏まえて、多様なものの見方や考え方があることを示すことによって仕事に対する意識の変革を促すなどの援助方策が考えられる。また、普段それほど意識する機会がない自分の労働価値観について振り返ってみることで、自らの職業生活、ひいては、自らの人生について改めて考える機会を提供することが出来るだろう。

結果・・・
作成した調査票の結果に対して因子分析を実施した結果、「社会的評価」、「自己の成長」、「社会への貢献」、「同僚への貢献」、「経済的報酬」、「達成感」、「所属組織への貢献」の7つの因子が抽出された。

感想
う〜ん。。。どうも違和感がある。納得感がないというか。。。
各個人の労働価値観は、集約すると、これらの7つの変数がそれぞれどういった値となっているか、という形で表されるということだろう。
違和感の根元は、
1.本当にこれだけ??これは、質問紙のプロトタイプがどれだけ網羅的に質問紙を作れているかどうか。網羅性に欠けていると、抜け落ちてる軸があるのかもしれない。それを防ぐために、既往研究を数多く調査して、そこからピックアップしているということか。。。。やれるだけのことはやってるから、ゆるして〜って感じ??
2.寄与率の検討がない。要するに38項目に集約しているわけだが、どの程度回答全体を述べているのだろうか。もし寄与率が小さいのであれば、これら以外の因子の存在も否定できないということになるぞ・・・。

ただ、この7因子自体は、分からなくもない。

2010年3月1日月曜日

自動化システムの限界とその根拠の情報不足による過信

タイトル
自動化システムの限界とその根拠の情報不足による過信

著者
伊藤誠, 稲橋 広将, 田中 健次

掲載
ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol.2, No.5, 2003.

アブストラクト
This paper investigates why and how a human overtrusts an automated systems. Since previous studies on trust have not discussed overtrust, we propses a model of trust in which overtrust is expressed as a special case. In this model, trust is the range within which an automated system is expected to work successfully. It is supposed that there exist two limits in terms of ability of automation: the designed limit within which the automated system is guraranteed to work successfully, and the actual limit within which the automation may work. When the range of expectation exceeds the actual limit, a cognitive experiment is conducted. We focused on effects of information given to users on the limits. Subjects were divided into three groups: group 1 that is given only the desgined limit, group 2 that is given both the designed limit and the actual limit, and group 3 that is given not only the two limits but also the reason for the limits. The results suggest that it it effective to prevent overtrust by informing the limits and the reason.


キーワード
trust, over-reliance, automation, human-machine cooperation, training

要約
システムへの過信が生じる理由やプロセスについての研究。
研究の結果得られた知見としては、以下の通り。
・設計上の限界のみを知らさせる場合、経験をつむにつ入れて期待の範囲が広まる場合がある。このことは、被験者が自動化システムの動作の限界を見極めようとすることによるものと考えられる。
・設計上の限界に加え、機能上の限界も知らさせていると、期待の範囲が当初から機能上の限界に及び易い。機能上の限界を超えなければ問題ないとの判断がなされているものと解釈できる。
・設計上・機能上の限界に加えて、その根拠が知らされている場合、期待の範囲は機能上の限界よりも安全よりの範囲にとどまりやすく、拡大する傾向も小さい。

要するに、機能上の限界と設計上の限界の間には、多少の差が存在する。その差が存在していることが知られてしまうと、最終的には、徐々に設計限界は広げられるか、もしくは「まだ機能的には大丈夫」という考えの基で、設計上の限界は破られ、機能上の限界を元に機器操作を行なう。これを防ぐための方法として、機能上の限界・設計上の限界はどのような根拠で設定されているか、それを破るとどのようなことが起こるかを明確に伝えることで、安全側に操作を留めるようになる。

自発的な安全運転を促すためのヒューマンマシンインタフェースについて

タイトル
自発的な安全運転を促すためのヒューマンマシンインタフェースについて

著者
平岡敏洋

掲載
電子情報通信学会技術報告SSS2009-9, pp.13-16. 2009

アブストラクト
The driving support systems can be separated into two types from the viewpoint of interaction between the system and drivers: 1) a direct driving support to intervene driver's operation directly, and 2) an inderict driving support to provide information to encourage drivers to keep safe driving based on their own judgement. This paper introduce a few examples about the later systems, and discusses points to ponder at the system design.

要約
研究事例を3点紹介。
1点目:リスク量を過大に知覚させるシステム・・・
人の錯視(実際の車両の速度が同じでも、外の「見え」が加速しているときのように見えると、加速感をもつ)によって、加速感を与えつつ、実際の速度を押させさえる方法。無意識的な行動変容を促す。
2点目:直面するリスクの把握を支援するシステム・・・
ステアリングの操舵に関して、表示系を工夫して、リスクの把握を促して、意識的に安全側の行動を促すようなシステム。(詳細は、いまいちよくわからない)
3点目:エコドライブ支援による安全運転行動の誘発
燃費効率をリアルタイムで情報提示することで、「ある目標」を各自が設定し、その数字を達成しようとエコドライブ(自分にとってもスムーズで効率的な運転)を行なうようになる。また、エコドライブは≒で安全運転でもあり、エコドライブ計をつけることで安全運転も達成できる。

最後に、安全運転を促すためのインタフェースとしては、以下のような設計指針が挙げられている。
(1)安全運転に対するインセンティブを高める
(2)情報を連続的かつマルチモーダルに提示する。
(3)S-R適合性を満たすようにインタフェースを設計する
(4)有能感を促進するような娯楽性を盛り込む
(5)錯覚などを利用して知覚リスク量を増加させる
(6)システムの制御や仕組みを直感的に分かり易く設計する


感想
特に3点目が興味深い。
全被験者が燃費計の目標を達成したいと思ったと答えたとのことだった。介入したものとしては燃費計の設置だけであり、「燃費を見せる」
ということだけでエコドライブ行動が促されたとのこと。ここから色々と考えた。
1.娯楽性が維持されている間は行動がキープされる。⇒飽きた場合にはどうか。
2.ポイントは行動が維持されればいいので、娯楽性がキープされている間に「技能」が身について、「飽きたとしても安全運転はキープされる」という状態にあればよい。
3.ただ、「飽きた」場合に、新たな刺激を求めだすと、逆に危険運転の方に戻ってしまうのではないか。
4.となると、「技能が成熟する」までの間は少なくとも「飽き」が来させないような方法が必要となるということか。

2010年2月12日金曜日

目標設定に関わる運用方略の効果性に関する研究の概括

タイトル
目標設定に関わる運用方略の効果性に関する研究の概括
 
著者
野上 真、古川 久敬
 
掲載
産業・組織心理学研究, Vol.23, No.2, pp,129-144, 2010.
 
アブストラクト
We review studies that dealt with goal setting, by focusing not only on the phase of the goal attainment process but also on how goal setting management is carried out. Our findings revealed that goal setting management strategy can be described as falling into three categories i.e., achievement demand (including vision clarification and achievement emphasis), achievement support (including support provision and feedback provision) and promotion of participation. Goal setting management generally had positive effects on goal level, motivation, learning, performance, satisfaction and achievement support and promotion of participation. In contrast only a small number of studies demonstrated the promoting effect of achievement demand. Finally, we posed two research questions for future study and we suggested several implications.
 
要約
<はじめに>
従来研究の問題点:
�目標設定の効果が、「目標設定」の運用にあり方によってどのように影響されるかがあまり検討されてきていない。
�上記と関連し、目標設定の効果を高める上で運用者の関与の仕方の影響についても看過されてきた。
 
本研究の目的:
目標設定の運用方略の特性、および効果に注目しながら、目標設定の効果性に関する従来研究を概観すると共に、今後の研究課題を提示すること。
 
本研究の意義:
1)現実の組織場面における目標設定の効果が生じるメカニズムを明らかにする上で、有益な示唆が得られる。
2)目標設定の効果を促進する上で効果的な、組織における制度運用のあり方について、実践的な示唆が得られる
 
<レビューのフレームワーク>
目標設定の運用は、目標設定段階、目標遂行段階、目標達成度評価段階の3つのフェーズで構成されるものと捉える。
レビューの対象は、目標設定の効果性に関する研究のうち、目標設定の効果性を促進する調整変数として運用方略を扱った理論的実証的研究。
レビューする研究においては、上述の3つのフェーズを通じて支配的な影響力の行使者を運用者と捉える。この捉え方にしたがって、実験研究における研究遂行者も運用者がとする。
 
<目標設定段階における運用方略と効果性の関係>
この段階での運用方略は「方針伝達」「達成強調」「助言提供」「参画促進」の4つ。
 
●方針伝達
方針は理想的な方向性を示すもの。ここまでやれば「完全に達成」という基準を持たない。目標は具体的な「達成されたかどうか」を判定する基準を持つ。
方針伝達の機能は、組織の要求と組織成員の目標のズレを低減させること。運用者によって伝達された方針が、課題遂行者による目標設定の手掛かりとなる。
また、方針が明示されることによって、運用者が何を期待しているかを知り、目標の重要性が高く認知されるようになり、組織成員の仕事に関する意識の方向づけが促進される。
 
●達成強調
一般に、「高い目標を設定するよう勧奨すること」はメンバーの能力に対する信頼を示すものと受け止められ、それによって、成員が自信を高め、組織成員の仕事への意欲や成長の実感が向上する。ただ、達成不可能と成員が感じるような目標設定を勧奨(実体は、強要)されると逆効果となる。以前の業績を元に達成の自信がもてる目標設定を行なうことが必要。また、近年では、目標にはパフォーマンス目標と学習目標の2種類があり、特に、課題達成方略の発見を要求される状況では、学習目標に対置して高いパフォーマンス目標が設定されると、学習に使用されるべき認知的資源が奪われる可能性がある。
 
●助言提供
運用者の支持的態度とは、課題遂行者の目標のレベル向上を介して生産性に「間接的な効果」を持つ。また、運用者が課題遂行者よりも課題達成の道筋についてよく知っている場合、課題の特色や達成方略についての教示を行なうことは、課題遂行者の仕事の進め方についての学習が促進されるだけでなく、課題達成への自信が促進され、課題遂行者のモチベーションや生産性を向上させる。このような課題に関する教示の効果は、課題が具区雑あるいは新規なものである場合特に高くなる。
 
●参画促進
課題が複雑なものや達成の道筋が見えにくいものである場合は、目標設定の効果を高める上で、運用者が目標設定への課題遂行者の参加を促進することの重要性が高くなる。一方で、課題が比較的単純なものである場合、目標設定への課題遂行者の参加認められていなくても、運用者が目標の合理的根拠について説明を行なうことにより、補償的効果が得られる。
 
<目標遂行段階における運用方略と効果性の関係>
この段階での運用方略は「達成強調」「助言提供」「フィードバック提供」「参画促進」の4つ。
 
●達成協調
課題遂行者に目標を意識させ続けるための働き掛けとして必要とされるもの。例えば、「運用者が遂行場面に立ち会っている」という単純な事実が、遂行者に対する運用者の関心の強さを伝達し、圧力として作用すると考えられる。また、単なる達成への圧力を掛けるだけでなく、目標達成への期待を示し、課題達成方略の示唆や、優れた遂行に対する賞賛も行なうこと(以下の「助言提供」を参照)が、ポジティブな効果を持つ。
 
●助言提供
目標遂行段階における運用者の支援や個人的配慮は、遂行者の目標達成への自信や期待感を高め、目標へのコミットメントを促進し、生産性を高める。
 
●フィードバック提供
フィードバックが与えられることにより課題の遂行が促進される。この理由としては、モチベーションの促進と課題達成方略の学習の促進の2つの側面から論じられている。
目標遂行が遅れている課題遂行者がフィードバックを受けると、従来のペースでは目標達成が難しいことを認識し、努力の調整が行なわれるため、課題の遂行が促進される。また、自らの行動の成果を具体的に把握し易い仕事の場合、セルフフィードバックだけでも十分な自己統制が成される可能性があるものと考えられるが、行動の成果が見えにくい仕事の場合、運用者からもたらされるフィードバックは、自己統制が行なわれるために重要な手掛かりとなる。運用者のフィードバックが効果を発揮するには、課題遂行者に受容されることが前提となる。そのための必要条件としては、フィーバック情報に対する信頼性が挙げられる。また、フィードバックが効果を発揮するまでには、ある程度の時間が必要とされる可能性がある。さらに、目標設定の運用者が仕事に関する方針(望ましい行動に関する指針など)を明確にしておくことが、組織成員が目標遂行段階において仕事の成果に関する様々なフィードバックを獲得する上で、促進的効果を持つことを示す結果を得ている。(これは、フィードバック情報に対して自身の評価基準をあたえるものである、あるいは、フィードバック情報そのものに評価情報まで含まれている場合においては、その評価に対する納得感を醸成するものであろう)。
 
●参画促進
課題遂行方法について、課題遂行者の意見を取り入れた方が、MBOにポジティブな効果が生じる。運用者が課題遂行者の意見の出し合いを積極的に「推進する」ことによって、MBOの効果性が促進される。こうした運用者の働き掛けは、単に課題遂行者の意見の出し合いを「容認」することとは異なる。課題遂行者の意見の出し合いを「認め」ても、それを「促す」ための働き掛けが欠如すると、生産性の向上に結びつかない可能性もある。「
 
<目標達成度評価段階における運用方略と効果性の関係>
この段階での運用方略は「助言提供」「フィードバック提供」「参画促進」の3つ。
 
●助言提供
過去のパフォーマンスよりも、改善の可能性がある将来のパフォーマンスに向けさせるような助言が行なわれることが、結果として評価に対する満足感などを高めることが示唆されている。運用者が業績評価に際し、部下の仕事上の弱点を除去する計画作りを助けることが、評価に対する部下の公正感を高めることを示す知見を得た。また、部下の問題解決や、目標設定の相談に乗ることを重視する指導様式が評価プロセスに導入されることにより、フィードバックが個人の成長を助けているという組織成員の認知、また、j評価システム全体への肯定的態度が促進されることを示す結果を得た。また、評価面談のなかで、フィードバックを踏まえた目標設定が行なわれることで、仕事に関する満足感や組織コミットメントが高まることを示す知見を得ている。
 
●フィードバック提供
組織に於いて設定される目標は、業績評価の基準としての意味を持つ。業績評価に於いて、予め設定された目標が活用された度合いが、組織成員の評価に対する満足感や、仕事に関する学習を促進することを示す知見がある。また、目標設定段階において、成果目標を協調しなかった場合よりも、強調した場合の方が、成果が上がらなかった時に運用者が叱責した際の課題遂行者の抵抗感が低くなることを示す結果が得られている。結局、MBOが実施される以上、最終的な達成度評価に於いて目標を基準としたフィードバックの提供がなされることが重要である。
 
●参画促進
業績評価に際し、組織成員の意見表明の機会が確保さえることは、評価の正確さの認知や、評価への満足感、課題の明確化に促進的影響をもたらすことが指摘されている。これは、評価に関する情報のやり取りが活性化することによって、評価の正確さがもたらされること、評価の過程で判断が修正される機会が確保されることで公正感高まること、討論の過程で、将来的に訓練すべきポイントについての分析が促進されること、などによると考えられる。業績評価に関して参画促進がなされることでポジティブな効果がもたらされるが、一方で、仕事における将来的課題の特定に関して参画促進が成されることはポジティブな効果をもたらさない。これは、自分の仕事に関して何が将来的な課題となるか、言い換えれば、現在の自分の仕事における欠陥は何か、について自己批判を行なうことが被評価者にストレスをもたらすことによるかもしれない。