[タイトル]
ワーク・モチベーションとCSR評価−ハーズバーグの動機付け衛生理論とCSR評価の関係性構築モデル−
[著者]
上原 衛, 山下 洋史, 大野 �裕
[掲載]
日本経営工学会論文誌, Vol.60, No.2, pp.104-111
[アブストラクト]
現在、CSR(Corporation Social Responsiblity:企業の社会的責任)を重視した企業経営が注目されている。企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)が企業の持続可能性(サスティナビリティー)を視野に入れたCSRを重視したしてんから、企業経営のあり方を求め始めており、企業は企業価値向上に向けてCSRに取り組み始めている。また、従業員が働きがいを持って仕事に従事すればその企業のCSRも向上させることが出来、一方、CSRを果たしている企業の従業員はCSRに対する意識も高く、ワーク・モチベーションも一層高くなるという正のスパイラルの関係に注目し、本業を通じて社会貢献を行いCSRを果たそうと努力している企業もある。本研究では、ハーズバーグの動機付け衛生理論に基づき、動機付け要因(M因子)追求者と衛生要因(H因子)追求者の違いによって、CSR評価における自社の積極的な施策や戦略である「攻め(Aggressive Criteria)」の評価と自社の内部管理体制やリスク管理体制の「守り(Defensive Criteria)」の評価に差が表れるという視点に注目し、組織内部者のワーク・モチベーションと自社のCSR評価との関係性を簡潔かつ分り易く表現するための新たなモデルと提示する。
[キーワード]
行動科学, ハーズバーグの動機付け衛生理論, M-H因子, ワーク・モチベーション, CSR
[要約]
CSRの評価指標として、「経済面」、「環境面」、「社会面」という3つの縦軸と、「攻めの施策」、「守りの施策」という2つの横軸の、トータルで6つのカテゴリーがある。組織の各メンバにおける、この各カテゴリーの評価の自社のCSRの評価の関係を調べた。具体的には、それぞれの軸を独立しているものとして捉え、各個人の要素を排除した、M因子追求者・H因子追求者別の、自社の攻め施策および守り施策に対する評価のウェイトと、経済、環境、社会のそれぞれに対する評価のウェイトという2つのパラメータを設定し、以下の式で表した。
Y(i;,j) = Σb(k)(Σa(j,l)・x(i;jkl)) + e(i;jkl)
i : 評価者
j : M因子追求者とH因子追求者のタイプ
k : 経済、環境、社会 の 3因子
l : 攻め、守り、社会 の2因子
Y(i;j) : iさんのモチベーションタイプと、自社のCSRに対する総合評価
x(i;jkl) : i さんのモチベーションタイプと、自社の6つのカテゴリー分けのカテゴリーごとの評価
e : 残差
実際にある会社の社員に対して自社のCSRを評価してもらい、その結果から上記の式のパラメータを計算した結果、
(1)M因子追求者に於いては、自社の施策の攻めと守りの両方を均等にウェイトを置いて、総合のCSRを評価していた
(2)H因子追求者に於いては、自社の守りの施策に特にウェイトを置いて自社の総合のCSRを評価していた
このことから、コスト削減や内部管理・リスク管理はH因子としての性格を持つということが分った。
[感想]
色々と疑問が・・・。
最初の概念論はまあ分らなくもない。(なお、ここでの社会的責任は「本業を取り組む」ということと「本業以外で社会に対して支援金を出す・文化事業を行なう(自社の本業の向上につながらないようなこと・ボランティア)」とを分けて考えておく必要はある。)
しかし、そもそも論として、研究の中で一体なにをどのように明らかにしようとしているのかが不明。仮説は「企業のCSRへの取り組みは、従業員のワークモチベーションを挙げるための単なるトリガーであるだけでなく、従業員が働きがいを持ち、ワークモチベーションが高く、活性化している従業員が働く企業こそが社会的責任を果たせるのではないだろうか」という部分だと思うが、これが実証されているとは思えない。
また、具体論として、このモデルを用いて検証したということは、まあ、結果としてそうなった、ということだろうが、なぜこんなけったいなモデルを考えたのだろう??重回帰分析ではダメだったの??それに、このモデルは互いに軸が独立しているという前提を暗黙に立てている気がするが、交互作用はなかったの??決定係数はかなり高い値が出ているとはいえ、他の分析方法(モデル)と比較してこの式が決定係数が高いというのであれば、それを書いてもらわないといけない。
2010年10月5日火曜日
2010年7月29日木曜日
飲食店アルバイトの感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感に及ぼす影響
タイトル
飲食店アルバイトの感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感に及ぼす影響
著者
須賀 知美, 庄司 正美
掲載
目白大学心理学研究, Vol.6, pp.25-31, 2010.
アブストラクト
本研究の目的は飲食店アルバイトを対象に、感情労働と客kらの感謝・賞賛が職務満足間に与える影響を検討することである。t検定を行なった結果、各質問項目の得点に性差は見られなかった。勤務期間について1要因の分散分析を行なったところ、新人と中堅、新人とベテランでは勤務期間の長さに差が見られたが、中堅とベテランには差が見られなかった。そのため、調査参加者を新人群と、中堅・ベテランからなる非新人群に分けて各質問項目の得点を比較した。t検定の結果、両者の間で感情労働の"敏感さ"、"ポジティブ表出"および職務満足感の得点に差が見られた。また、階層的重回帰分析の結果、新人群では客からの賞賛が、非新人群では感情労働の"敏感さ"が職務万足感に影響していた。これらの結果から、アルバイト先での立場による感情管理スキルの差が職務満足感に影響していることが示唆された。さらに、本研究の限界や今後の課題について議論がなされた。
キーワード
感情労働, 感謝, 賞賛, 飲食店アルバイト
要約
〔研究目的〕
�飲食店アルバイトを対象に、感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感に与える影響についての検討
�感情労働や職務満足感についての性差による違いの検討
�新人・非新人(各自が自分をどう認識しているか)の違いによる感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感の違いの検討
〔測定対象〕
飲食店アルバイト経験のある大学生87名。(男性16、女性71、平均19.9歳(±1.01))
〔結果〕
�性差について
・ 感情労働(「感情の不協和」、「客の感情への敏感さ」、「客へのポジティブな感情表出」のそれぞれについての経験・頻度)、客からの感謝の経験、客からの賞賛の経験、職務満足感について男女差は無かった。
・ 「感情の不協和」については、ネガティブな感情を抑えることであり、これは既往研究と同様の結果であった。
・ 一方、敏感さやポジティブ感情表出はジェンダーに関連し、女性の方が笑顔や気遣いが求められると予想され、これらについては男性より女性の方が経験が多いと予想されるが、今回の結果はその予想と反する。これは、質問項目自体が性差が見られるようなものではなかったためと考えられる。
・ 感謝・賞賛については、客は受けたサービスに対して感謝・賞賛を返すのであって、サービスの提供者の性別には関係が無いためと考えられる。
・ 職務満足については、学生アルバイトという立場では、性別による待遇や評価の差は少ないためと考えられる。
�新人・非新人の違いについて
・ 「客の感情への敏感さ」と「客へのポジティブな感情表出」、職務満足感は、新人よりも非新人の方が得点が高かった。一方、「感情の不協和」、感謝・賞賛については立場の差はなかった。
・ 「客の感情への敏感さ」と「客へのポジティブな感情表出」は、感情管理スキルとも言え、勤務年数の長い人の方がこれらのスキルを習得しているために新人群よりも高いと考えられる。
(今回のアンケートでは「出来る—出来ない」ではなくて、「よくある—全く無い」のスケールなのだから、スキル習得することが、「これらを行なうべきケースだ」という状況認知を鋭敏にするという解釈するのか??でないと、「スキル習得」が「経験が多い」ということとどう結びつくのだ?)
・ 職務満足感は、上記とも相俟って、非新人は、感情管理スキルを駆使することによって、自己や客を操作し、仕事の自律性などを得、それによって職務満足感を得ていると考えられる。
・ 「感情の不協和」は、不愉快な客に対する我慢の経験であり、気遣いや親しさの表出といった「敏感さ」「ポジティブ表出」に比べ、新人であろうと非新人であろうと経験しやすい行動であるためと考えられる。(←ネガティブ感情なことに対しては人はセンシティブだから?あるいは、不愉快なことに対する我慢のスキルは既に新人であってもそれまでの人生の中で身につけている?まあ、これならば納得がいく)
・ 感謝・賞賛については、性差と同様に、客からすれば新人・非新人は関係ない。
�感情労働、客からの感謝・賞賛、職務満足感の関連について
・ 新人・非新人に分けて、それぞれの中で、各項目同士の相関係数を算出。
・ 新人群:「ポジティブ表出—賞賛」(正の相関)
・ 非新人群:「敏感さ—感謝」「敏感さ—賞賛」「敏感さ—職務満足」、
「ポジティブ表出—感謝」「ポジティブ表出—賞賛」」(いずれも正の相関)
・ 「ポジティブ表出」や「敏感さ」が、客からの感謝・賞賛につながるのは十分納得がいく。
・ 「敏感さ」が職務満足と関連していることについては、既往研究から飲食店アルバイトにとって、「敏感さ」は接客上大切であり職務にとってふさわしい行動であり、感情労働の中で最も重要視している部分であることが明らかになっている。このことから、飲食店アルバイトにとって「敏感さ」は接客上大切であり職務にとってふさわしい行動であると考えていることから、気遣いするほど職務満足感が高められると推測される。
⇒というより、、、「敏感さ」が高い(「敏感さ」を発揮すること(経験すること)が多い)という回答は、職務にとってふさわしい行動を自分は取れていると思っている、ということを示していることであり、「そのような行動を取る」ということと「職務に満足している」ということとは「動機づけ」や「感謝・賞賛」という変数を媒介して何らかの関連を持っているということは十分に考えられる。つまり、「行動を取る」⇒「感謝・賞賛を得る」⇒有能感を持つ⇒「職務満足」という流れや、「職務に満足」⇒動機づけ⇒「行動」など。
まあ、要するに、「敏感さ」と「職務満足」は何らかの媒介変数の存在を考えないことには、直接の因果関係は想像しにくい。要するに擬似相関だと考えられる。
�感情労働、感謝・賞賛が満足感に及ぼす影響(重回帰分析)
・ 新人群においては、「賞賛→職務満足(正の影響)」のみ有意。
・ 特に、感情労働の経験(頻度)から職務満足へのパスは有意ではなかった点について、新人は感情管理スキルが習得されていないため、新人における感情労働は職務満足感に影響するほど強いものではないと推測される。
⇒理由はどうあれ、とりあえず、新人君に於いては感情労働を強いられることと、職務満足とは直接的な因果関係が無いということ。
・ 非新人群においては、「敏感さ→職務満足(正の影響)」のみ有意。
・ つまり、「敏感さ」を示すこと自体が職務満足感に影響を示している、ということ。
・ また、「感謝・賞賛→満足」のパスが有意でなかった点について、ほめ言葉が職務満足感に影響するのは、比較的接客経験の浅い新人期だけであって、客の扱いになれた中堅やベテランにとっては職務満足感に影響するほどのことではないのかもしれない。
⇒これは面白い。、「敏感さ」を示すこと自体が、自分自身の有能感を感じさせ、それを感じれる時間・状況である「職務」に対して満足感を持っているということか。
階層的回帰分析だから、「敏感さ⇒感謝・賞賛⇒満足」というパスも調べられているはず。こちらが有意でないというのは意外。要するにベテランになると、感謝や賞賛は、しょっちゅうもらうものなので、それへの喜び感は失われて、そういう外的な報酬から、自分自身の中から内発的に生み出される有能感や自律感への、満足に影響を与える要因が変っていく。
感想
飲食店アルバイトの感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感に及ぼす影響
著者
須賀 知美, 庄司 正美
掲載
目白大学心理学研究, Vol.6, pp.25-31, 2010.
アブストラクト
本研究の目的は飲食店アルバイトを対象に、感情労働と客kらの感謝・賞賛が職務満足間に与える影響を検討することである。t検定を行なった結果、各質問項目の得点に性差は見られなかった。勤務期間について1要因の分散分析を行なったところ、新人と中堅、新人とベテランでは勤務期間の長さに差が見られたが、中堅とベテランには差が見られなかった。そのため、調査参加者を新人群と、中堅・ベテランからなる非新人群に分けて各質問項目の得点を比較した。t検定の結果、両者の間で感情労働の"敏感さ"、"ポジティブ表出"および職務満足感の得点に差が見られた。また、階層的重回帰分析の結果、新人群では客からの賞賛が、非新人群では感情労働の"敏感さ"が職務万足感に影響していた。これらの結果から、アルバイト先での立場による感情管理スキルの差が職務満足感に影響していることが示唆された。さらに、本研究の限界や今後の課題について議論がなされた。
キーワード
感情労働, 感謝, 賞賛, 飲食店アルバイト
要約
〔研究目的〕
�飲食店アルバイトを対象に、感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感に与える影響についての検討
�感情労働や職務満足感についての性差による違いの検討
�新人・非新人(各自が自分をどう認識しているか)の違いによる感情労働と客からの感謝・賞賛が職務満足感の違いの検討
〔測定対象〕
飲食店アルバイト経験のある大学生87名。(男性16、女性71、平均19.9歳(±1.01))
〔結果〕
�性差について
・ 感情労働(「感情の不協和」、「客の感情への敏感さ」、「客へのポジティブな感情表出」のそれぞれについての経験・頻度)、客からの感謝の経験、客からの賞賛の経験、職務満足感について男女差は無かった。
・ 「感情の不協和」については、ネガティブな感情を抑えることであり、これは既往研究と同様の結果であった。
・ 一方、敏感さやポジティブ感情表出はジェンダーに関連し、女性の方が笑顔や気遣いが求められると予想され、これらについては男性より女性の方が経験が多いと予想されるが、今回の結果はその予想と反する。これは、質問項目自体が性差が見られるようなものではなかったためと考えられる。
・ 感謝・賞賛については、客は受けたサービスに対して感謝・賞賛を返すのであって、サービスの提供者の性別には関係が無いためと考えられる。
・ 職務満足については、学生アルバイトという立場では、性別による待遇や評価の差は少ないためと考えられる。
�新人・非新人の違いについて
・ 「客の感情への敏感さ」と「客へのポジティブな感情表出」、職務満足感は、新人よりも非新人の方が得点が高かった。一方、「感情の不協和」、感謝・賞賛については立場の差はなかった。
・ 「客の感情への敏感さ」と「客へのポジティブな感情表出」は、感情管理スキルとも言え、勤務年数の長い人の方がこれらのスキルを習得しているために新人群よりも高いと考えられる。
(今回のアンケートでは「出来る—出来ない」ではなくて、「よくある—全く無い」のスケールなのだから、スキル習得することが、「これらを行なうべきケースだ」という状況認知を鋭敏にするという解釈するのか??でないと、「スキル習得」が「経験が多い」ということとどう結びつくのだ?)
・ 職務満足感は、上記とも相俟って、非新人は、感情管理スキルを駆使することによって、自己や客を操作し、仕事の自律性などを得、それによって職務満足感を得ていると考えられる。
・ 「感情の不協和」は、不愉快な客に対する我慢の経験であり、気遣いや親しさの表出といった「敏感さ」「ポジティブ表出」に比べ、新人であろうと非新人であろうと経験しやすい行動であるためと考えられる。(←ネガティブ感情なことに対しては人はセンシティブだから?あるいは、不愉快なことに対する我慢のスキルは既に新人であってもそれまでの人生の中で身につけている?まあ、これならば納得がいく)
・ 感謝・賞賛については、性差と同様に、客からすれば新人・非新人は関係ない。
�感情労働、客からの感謝・賞賛、職務満足感の関連について
・ 新人・非新人に分けて、それぞれの中で、各項目同士の相関係数を算出。
・ 新人群:「ポジティブ表出—賞賛」(正の相関)
・ 非新人群:「敏感さ—感謝」「敏感さ—賞賛」「敏感さ—職務満足」、
「ポジティブ表出—感謝」「ポジティブ表出—賞賛」」(いずれも正の相関)
・ 「ポジティブ表出」や「敏感さ」が、客からの感謝・賞賛につながるのは十分納得がいく。
・ 「敏感さ」が職務満足と関連していることについては、既往研究から飲食店アルバイトにとって、「敏感さ」は接客上大切であり職務にとってふさわしい行動であり、感情労働の中で最も重要視している部分であることが明らかになっている。このことから、飲食店アルバイトにとって「敏感さ」は接客上大切であり職務にとってふさわしい行動であると考えていることから、気遣いするほど職務満足感が高められると推測される。
⇒というより、、、「敏感さ」が高い(「敏感さ」を発揮すること(経験すること)が多い)という回答は、職務にとってふさわしい行動を自分は取れていると思っている、ということを示していることであり、「そのような行動を取る」ということと「職務に満足している」ということとは「動機づけ」や「感謝・賞賛」という変数を媒介して何らかの関連を持っているということは十分に考えられる。つまり、「行動を取る」⇒「感謝・賞賛を得る」⇒有能感を持つ⇒「職務満足」という流れや、「職務に満足」⇒動機づけ⇒「行動」など。
まあ、要するに、「敏感さ」と「職務満足」は何らかの媒介変数の存在を考えないことには、直接の因果関係は想像しにくい。要するに擬似相関だと考えられる。
�感情労働、感謝・賞賛が満足感に及ぼす影響(重回帰分析)
・ 新人群においては、「賞賛→職務満足(正の影響)」のみ有意。
・ 特に、感情労働の経験(頻度)から職務満足へのパスは有意ではなかった点について、新人は感情管理スキルが習得されていないため、新人における感情労働は職務満足感に影響するほど強いものではないと推測される。
⇒理由はどうあれ、とりあえず、新人君に於いては感情労働を強いられることと、職務満足とは直接的な因果関係が無いということ。
・ 非新人群においては、「敏感さ→職務満足(正の影響)」のみ有意。
・ つまり、「敏感さ」を示すこと自体が職務満足感に影響を示している、ということ。
・ また、「感謝・賞賛→満足」のパスが有意でなかった点について、ほめ言葉が職務満足感に影響するのは、比較的接客経験の浅い新人期だけであって、客の扱いになれた中堅やベテランにとっては職務満足感に影響するほどのことではないのかもしれない。
⇒これは面白い。、「敏感さ」を示すこと自体が、自分自身の有能感を感じさせ、それを感じれる時間・状況である「職務」に対して満足感を持っているということか。
階層的回帰分析だから、「敏感さ⇒感謝・賞賛⇒満足」というパスも調べられているはず。こちらが有意でないというのは意外。要するにベテランになると、感謝や賞賛は、しょっちゅうもらうものなので、それへの喜び感は失われて、そういう外的な報酬から、自分自身の中から内発的に生み出される有能感や自律感への、満足に影響を与える要因が変っていく。
感想
2010年7月28日水曜日
観光業と職務満足—旅行会社の場合
タイトル
観光業と職務満足—旅行会社の場合
Tourism and Job Satisfaction - The Case of Travel Agents
著者
山口 一美
掲載
立教大学国際学部紀要, Vol.17, No.1, pp.13-27, 2006.
アブストラクト
The purpose of this study was to investigate the relationship among job satisfaction, years of service to the company, years experiences, overtime hours, age, and personalities (self-monitoring, social anxiety, and optimism). 48 staff in travel agents completed a questionnaire of these. A factor analysis on the job satisfaction yield four factors: management satisfaction, human relationship satisfaction, growth satisfaction, and recognition by others' satisfaction. The multiple regression analysis showed that optimism, years experience, and social anxiety were the top three important predictors of job satisfaction.
キーワード
要約
〔研究の目的〕
「満足している従業員は適切な態度で顧客に接する」という仮説を前提に、職務満足に影響を与える要因を同定すること(その要因を元に採用や教育などを施すこと)を目的として、旅行業従事者を対象に、
�職務満足の下位因子(構成概念)の検討(因子分析)
�下位因子と、対象者のバイオフィー(具体的には:性別、勤務年数、経験年数、残業時間、年齢)や対象者のパーソナリティ(具体的には:セルフモニタリング、対人不安、楽観主義)との関係を、相関係数による分析と重回帰分析
の二つを実施した。
なお、セルフモニタリングは以下の2点から構成されるとして、それぞれを要素として取りあげている。
・自己呈示の修正能力
他者の要望に対して自分の行動を変えることが出来る能力
・他者の表出行動への感受性
他者の行動に敏感で何が適切かをすぐに見つけ出す能力
〔結果〕
職務満足は、以下の4つの下位因子からなることが分かった。(要するに「今の仕事の内容に満足している」というのは、以下の4つの因子について満足しているということ)
(1)経営満足 :収入、会社の経営や昇進に対する満足など
(2)人間関係満足 :同僚や上司との人間関係への満足など
(3)成長満足 :仕事によって成長する、やりがいがあるなど
(4)承認満足 :仕事に適している、認められているなど
そして、これらの因子間の関係については
経営満足は、他者からの承認など仕事に対する動機づけに関する満足とかかわりがあることが明らかになった。このことから、旅行業において、給与が単なる経済的欲求の充足手段ではなく、仕事の達成度のかくにんや会社からの評価につながることが示された。また、この傾向は女性の方で顕著であり、女性は給与による評価を望んでいることが示された。
職務満足の下位因子とバイオグラフィーとの関係に関しては、男女全体では、以下の2点の間のみ有意な相関があった。
・経験年数−人間関係満足(負の相関)
・経験年数−成長満足(正の相関)
このことから、職場の人間関係は重要ではあるものの旅行業の業務の場合には、個人的な顧客との対応が主な仕事であることから、仕事自体にやりがいを感じる機会が多く、その仕事を経験し続けることが可能であることが示された。
男女別では、女性については以下の2点の間に有意な相関があった。
・勤続年数−経営満足(負の相関)
・経験年数−人間関係満足(負の相関)
男性については、以下の1点の間に有意な相関があった。
・年齢−承認満足(正の相関)
このことから、旅行業に従事している女性は長く勤務あるいは経験しているものの、給与、会社の経営、人間関係に不満を持っていることが示された。また、人から認められているという感覚が強い男性ほど年齢が高く(年齢が高い男性ほど人から認めれれていると感じている)、また、承認満足の男女差においても男性が高いという結果からも、旅行業における管理者は女性が満足して仕事を続けることが出来るように、処遇制度の見直しや職場の人間関係の整備などを実施する必要があろう。
職務満足とパーソナリティとの関係に関しては、男女全体では以下の点で有意な相関があった。
セルフモニタリングにおける自己呈示の修正能力—成長満足(正の相関)
対人不安−承認満足(負の相関)
楽観主義−経営満足、成長満足、承認満足(それぞれ正の相関)
これらから、旅行業に従事するものは「楽観主義でセルフモニタリングの中の自己呈示の修正能力が高く、対人不安が低い」ことが、満足して積極的に仕事を行っていくために重要であることが示された。サービス業において、セルフモニタリングの中の自己呈示の修正能力が高いというパーソナリティを有していることが重要であるという先行研究を支持する結果であった。
重回帰分析から、旅行業に於いて、以下の2点のパーソナリティを持っていることが、高い職務満足につながるが明らかになった。
・楽観主義傾向が強い、
・(男性では)対人不安が低い
このことは採用の際に、これらのパーソナリティを持っているかに留意することの必要性を示唆しているといえよう。
今後の課題として、
1.給与額や昇給時期などと職務満足との関わりの検討⇒衛生要因である給与がどの程度、満足度に影響するのか
2.公的自己意識と職務満足との関わり、自尊心と職務満足との関わり、など他のパーソナリティとの関わりの検討
サービス業においては、これらが重要であるという知見がある。
※ 公的自己意識:他者から見られる自分を意識する傾向
3.エンパワーメントと職務満足との関係
エンパワーメントをもつことでどのような職務満足が向上するのか、それが従業者の定着率やロイヤリティにどのような影響を与えるのかを検討するべし。
旅行業では、個々の顧客のニーズに合わせたホスピタリティを提供する際に、マニュアルで決められた行動のみで体操することが難しいため。
※ エンパワーメント:従業者に自分の業務についての決定能力と権限を持たせること
感想
セルフモニタリングを「スキル」ではなく「パーソナリティ」に含めている点には違和感がある。。。まあ、結果は結果で考えれば良いが。
観光業と職務満足—旅行会社の場合
Tourism and Job Satisfaction - The Case of Travel Agents
著者
山口 一美
掲載
立教大学国際学部紀要, Vol.17, No.1, pp.13-27, 2006.
アブストラクト
The purpose of this study was to investigate the relationship among job satisfaction, years of service to the company, years experiences, overtime hours, age, and personalities (self-monitoring, social anxiety, and optimism). 48 staff in travel agents completed a questionnaire of these. A factor analysis on the job satisfaction yield four factors: management satisfaction, human relationship satisfaction, growth satisfaction, and recognition by others' satisfaction. The multiple regression analysis showed that optimism, years experience, and social anxiety were the top three important predictors of job satisfaction.
キーワード
要約
〔研究の目的〕
「満足している従業員は適切な態度で顧客に接する」という仮説を前提に、職務満足に影響を与える要因を同定すること(その要因を元に採用や教育などを施すこと)を目的として、旅行業従事者を対象に、
�職務満足の下位因子(構成概念)の検討(因子分析)
�下位因子と、対象者のバイオフィー(具体的には:性別、勤務年数、経験年数、残業時間、年齢)や対象者のパーソナリティ(具体的には:セルフモニタリング、対人不安、楽観主義)との関係を、相関係数による分析と重回帰分析
の二つを実施した。
なお、セルフモニタリングは以下の2点から構成されるとして、それぞれを要素として取りあげている。
・自己呈示の修正能力
他者の要望に対して自分の行動を変えることが出来る能力
・他者の表出行動への感受性
他者の行動に敏感で何が適切かをすぐに見つけ出す能力
〔結果〕
職務満足は、以下の4つの下位因子からなることが分かった。(要するに「今の仕事の内容に満足している」というのは、以下の4つの因子について満足しているということ)
(1)経営満足 :収入、会社の経営や昇進に対する満足など
(2)人間関係満足 :同僚や上司との人間関係への満足など
(3)成長満足 :仕事によって成長する、やりがいがあるなど
(4)承認満足 :仕事に適している、認められているなど
そして、これらの因子間の関係については
経営満足は、他者からの承認など仕事に対する動機づけに関する満足とかかわりがあることが明らかになった。このことから、旅行業において、給与が単なる経済的欲求の充足手段ではなく、仕事の達成度のかくにんや会社からの評価につながることが示された。また、この傾向は女性の方で顕著であり、女性は給与による評価を望んでいることが示された。
職務満足の下位因子とバイオグラフィーとの関係に関しては、男女全体では、以下の2点の間のみ有意な相関があった。
・経験年数−人間関係満足(負の相関)
・経験年数−成長満足(正の相関)
このことから、職場の人間関係は重要ではあるものの旅行業の業務の場合には、個人的な顧客との対応が主な仕事であることから、仕事自体にやりがいを感じる機会が多く、その仕事を経験し続けることが可能であることが示された。
男女別では、女性については以下の2点の間に有意な相関があった。
・勤続年数−経営満足(負の相関)
・経験年数−人間関係満足(負の相関)
男性については、以下の1点の間に有意な相関があった。
・年齢−承認満足(正の相関)
このことから、旅行業に従事している女性は長く勤務あるいは経験しているものの、給与、会社の経営、人間関係に不満を持っていることが示された。また、人から認められているという感覚が強い男性ほど年齢が高く(年齢が高い男性ほど人から認めれれていると感じている)、また、承認満足の男女差においても男性が高いという結果からも、旅行業における管理者は女性が満足して仕事を続けることが出来るように、処遇制度の見直しや職場の人間関係の整備などを実施する必要があろう。
職務満足とパーソナリティとの関係に関しては、男女全体では以下の点で有意な相関があった。
セルフモニタリングにおける自己呈示の修正能力—成長満足(正の相関)
対人不安−承認満足(負の相関)
楽観主義−経営満足、成長満足、承認満足(それぞれ正の相関)
これらから、旅行業に従事するものは「楽観主義でセルフモニタリングの中の自己呈示の修正能力が高く、対人不安が低い」ことが、満足して積極的に仕事を行っていくために重要であることが示された。サービス業において、セルフモニタリングの中の自己呈示の修正能力が高いというパーソナリティを有していることが重要であるという先行研究を支持する結果であった。
重回帰分析から、旅行業に於いて、以下の2点のパーソナリティを持っていることが、高い職務満足につながるが明らかになった。
・楽観主義傾向が強い、
・(男性では)対人不安が低い
このことは採用の際に、これらのパーソナリティを持っているかに留意することの必要性を示唆しているといえよう。
今後の課題として、
1.給与額や昇給時期などと職務満足との関わりの検討⇒衛生要因である給与がどの程度、満足度に影響するのか
2.公的自己意識と職務満足との関わり、自尊心と職務満足との関わり、など他のパーソナリティとの関わりの検討
サービス業においては、これらが重要であるという知見がある。
※ 公的自己意識:他者から見られる自分を意識する傾向
3.エンパワーメントと職務満足との関係
エンパワーメントをもつことでどのような職務満足が向上するのか、それが従業者の定着率やロイヤリティにどのような影響を与えるのかを検討するべし。
旅行業では、個々の顧客のニーズに合わせたホスピタリティを提供する際に、マニュアルで決められた行動のみで体操することが難しいため。
※ エンパワーメント:従業者に自分の業務についての決定能力と権限を持たせること
感想
セルフモニタリングを「スキル」ではなく「パーソナリティ」に含めている点には違和感がある。。。まあ、結果は結果で考えれば良いが。
2010年7月27日火曜日
感情労働が職務満足感・バーンアウトに及ぼす影響についての研究動向
タイトル
感情労働が職務満足感・バーンアウトに及ぼす影響についての研究動向
A Review of Studies on the Effect of Emotional Labor on Job Satisfaction and Burnout
著者
須賀 知美, 庄司 正美
掲載
目白大学心理学研究第4号 137-153, 2008
アブストラクト
感情労働が職務満足感やバーンアウトに及ぼす影響については、これまでの研究で一貫した結果が得られていない。本稿は、これまでの研究を概観し、研究対象や測定方法などを整理することを目的とした。その結果、さまざまな職業が調査対象とされ、感情労働の測定指標も様々であることが明らかになった。この測定指標の混在が、一貫した結果が得られてない理由の一つと考えられる。また、感情労働以外の独立変数や調整変数、媒介変数について、仕事の自律性やソーシャル・サポートなどの労働条件や職場環境に関する変数は多いが、パーソナリティや態度のような変数が少ないこと、労働者が感情労働を行なうことによるクライエントや客からの感謝・商人を含めた検討が殆ど無いことが指摘された。また、感情労働と他の変数の交互作用の検討も少ないことが示された。さらに、日本での分件数は外国の分件数と比較するとはるかに少ないことが明らかになった。これまでの研究の問題点に対する今後の課題について言及された。
About the influence of emotional labor on job satisfaction and burnout, empirical studies so far have not found consistent results. The puropse of this article was to review previous studies about the effect of emotional labor on job satisfaction and burnout. As a result, we clarified that the participants were chosen from various occupations, and various kinds of index were used as the measurement of emotional labor. In addition, it is revealed that many variables about working conditions and workplace environments, such as autonomy and social support, were used as indepenedent variables except emotional labor, moderator and mediator. On the other hand, the variables such as personality, attitude and thanks or approval from clients or customers were examined hardly. Moreover, we found that the studies for interaction of emotinal labor and other variables were very few. Futhermore, the number of studies in Japan is far few compared with foreign studies. To address these issue, study problems in the future discussed.
キーワード
感情労働, 職務満足感, バーンアウト
要約
感情労働の定義・・・・
「職場には職業上適切な感情やその表出方法、または不適切な感情が定められた『感情規則』というものが存在している。労働者はその規則に従い、客に対し適切な感情を持っているように見える表情やしぐさをする『表層演技』と、そう感じるように自らの感情を誘発する『深層演技』を行なう。つまり、職業上適切な感情状態を保つための感情管理が職務内容の一部になっている。Hochschild(1983)は"Emotinal Labor"を"公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行なう感情の管理"と定義している。そして"感情労働は賃金と引き換えに売られ、したがって交換価値を有すると述べている。」
感情労働の特徴・・・
(1)対面あるいは超えによって人と接することが不可欠な職種に生じる。
(2)他人の中に何らかの感情変化(感謝や安心など)を起こさなければ成らない
(3)雇用者が研修や管理体制を通じて労働者の感情をある程度支配する。
感情労働と職務満足の関係性・・・
これまでのところ一貫した結果は得られていない。
その理由として以下のものを挙げている。
(1)調査対象者
調査対象となる職業について、異なる感情規則を持つ職種を整理・分類しないまま分析しているため。異なる感情規則を持つ職種を混在させてしまうと、ある職種に特徴的な感情労働の性質をとらえることができない危険性がある。
(2)測定変数・尺度について
感情労働を測定する尺度は大きく分けて以下の3つに分類される。前者2つは個人の行動や内的な状態を測定していることから心理学的な測定方法である。後者は個人を職業によって分類することから社会学的な方法である。このような「感情労働」を測定する指標が複数混在している状況が、一貫した結果が得られない要因の一つであると考えられる。
〔1〕Brotheridge & Lee(1998)の「表層演技・深層演技」の下位尺度を持つ感情労働尺度
〔2〕Zapf et al.(1999)の「ポジティブ感情の表出の要求・ネガティブ感情の表出と抑制の要求・クライエントへの感情への敏感さの要求・相互作用の統制・感情の不協和」の下位尺度を持つFrankfurt Emotinon Work Scales
〔3〕職業分類を用いて感情労働を行なう職業であるか否かによって調査参加者をグループ分けする方法
(要するに、感情労働と目される職業についているか・否かと、職務満足度が関係があるか)
感情労働性を測定する尺度の適切さに関しては、感情労働の捉え方についての議論と、感情労働性を測定する際の指標に関する議論がある。
〔1〕感情労働の捉え方についての議論
Grandey(2000b)は、「感情の不協和」はネガティブな状態であるのに対して「表層演技」「深層演技」は本質的意味として肯定的でも否定的でもない。したがって、感情労働は「表層演技」と「深層演技」から構成されると考えた方が適切だと主張している。・・・あくまで「こういう行動を多く取るものは感情労働」という捉え方。
Zapf et al.(1999)では、action theory が感情労働の構成概念と関連しうる理論的枠組みを提供していると考えている。この視点からFarnkfurt Emotion Work Scaleを作成している。
〔2〕感情労働性を測定する際の指標に関する議論
これまでの尺度や分類の多くは、個人の感情労働を「する/しない」や、頻度や程度の測定に着目しており、「感情労働を行なうことがどのくらい大変か」という負担感を測定したものは無い。同じ感情動労働でも個人の負担感は異なると考えられる。このようなことから、個人の負担感を用いることが感情労働の測定指標として有用であると思われる。
⇒ さらには、「個人の負担感の違い」がどこから来るのか、ということについても研究対象として取りあげることもいいのではないか。
(3)その他の変数による感情労働や職務満足感への影響について
セルフ・モニタリングの自己呈示変容能力、対人不安や二面性、傾聴性が職務満足に影響を与えるとする研究結果があるが、これらは感情労働にも関連することが予想される。
また、感情労働を行なうことはストレスだが、それを通してクライエントや顧客から感謝や高い評価を与えられ、それによってストレスが減じられ精神的健康を保つ可能性もある。小村(2004)は、感情労働を受容し、顧客に積極的に接近することによって自己承認や職務上の喜びなどが感情労働のもたらす心理的影響をポジティブなものにしていると指摘している。
感想
なんとなく家庭生活も感情労働か・・・。
感情労働が職務満足感・バーンアウトに及ぼす影響についての研究動向
A Review of Studies on the Effect of Emotional Labor on Job Satisfaction and Burnout
著者
須賀 知美, 庄司 正美
掲載
目白大学心理学研究第4号 137-153, 2008
アブストラクト
感情労働が職務満足感やバーンアウトに及ぼす影響については、これまでの研究で一貫した結果が得られていない。本稿は、これまでの研究を概観し、研究対象や測定方法などを整理することを目的とした。その結果、さまざまな職業が調査対象とされ、感情労働の測定指標も様々であることが明らかになった。この測定指標の混在が、一貫した結果が得られてない理由の一つと考えられる。また、感情労働以外の独立変数や調整変数、媒介変数について、仕事の自律性やソーシャル・サポートなどの労働条件や職場環境に関する変数は多いが、パーソナリティや態度のような変数が少ないこと、労働者が感情労働を行なうことによるクライエントや客からの感謝・商人を含めた検討が殆ど無いことが指摘された。また、感情労働と他の変数の交互作用の検討も少ないことが示された。さらに、日本での分件数は外国の分件数と比較するとはるかに少ないことが明らかになった。これまでの研究の問題点に対する今後の課題について言及された。
About the influence of emotional labor on job satisfaction and burnout, empirical studies so far have not found consistent results. The puropse of this article was to review previous studies about the effect of emotional labor on job satisfaction and burnout. As a result, we clarified that the participants were chosen from various occupations, and various kinds of index were used as the measurement of emotional labor. In addition, it is revealed that many variables about working conditions and workplace environments, such as autonomy and social support, were used as indepenedent variables except emotional labor, moderator and mediator. On the other hand, the variables such as personality, attitude and thanks or approval from clients or customers were examined hardly. Moreover, we found that the studies for interaction of emotinal labor and other variables were very few. Futhermore, the number of studies in Japan is far few compared with foreign studies. To address these issue, study problems in the future discussed.
キーワード
感情労働, 職務満足感, バーンアウト
要約
感情労働の定義・・・・
「職場には職業上適切な感情やその表出方法、または不適切な感情が定められた『感情規則』というものが存在している。労働者はその規則に従い、客に対し適切な感情を持っているように見える表情やしぐさをする『表層演技』と、そう感じるように自らの感情を誘発する『深層演技』を行なう。つまり、職業上適切な感情状態を保つための感情管理が職務内容の一部になっている。Hochschild(1983)は"Emotinal Labor"を"公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行なう感情の管理"と定義している。そして"感情労働は賃金と引き換えに売られ、したがって交換価値を有すると述べている。」
感情労働の特徴・・・
(1)対面あるいは超えによって人と接することが不可欠な職種に生じる。
(2)他人の中に何らかの感情変化(感謝や安心など)を起こさなければ成らない
(3)雇用者が研修や管理体制を通じて労働者の感情をある程度支配する。
感情労働と職務満足の関係性・・・
これまでのところ一貫した結果は得られていない。
その理由として以下のものを挙げている。
(1)調査対象者
調査対象となる職業について、異なる感情規則を持つ職種を整理・分類しないまま分析しているため。異なる感情規則を持つ職種を混在させてしまうと、ある職種に特徴的な感情労働の性質をとらえることができない危険性がある。
(2)測定変数・尺度について
感情労働を測定する尺度は大きく分けて以下の3つに分類される。前者2つは個人の行動や内的な状態を測定していることから心理学的な測定方法である。後者は個人を職業によって分類することから社会学的な方法である。このような「感情労働」を測定する指標が複数混在している状況が、一貫した結果が得られない要因の一つであると考えられる。
〔1〕Brotheridge & Lee(1998)の「表層演技・深層演技」の下位尺度を持つ感情労働尺度
〔2〕Zapf et al.(1999)の「ポジティブ感情の表出の要求・ネガティブ感情の表出と抑制の要求・クライエントへの感情への敏感さの要求・相互作用の統制・感情の不協和」の下位尺度を持つFrankfurt Emotinon Work Scales
〔3〕職業分類を用いて感情労働を行なう職業であるか否かによって調査参加者をグループ分けする方法
(要するに、感情労働と目される職業についているか・否かと、職務満足度が関係があるか)
感情労働性を測定する尺度の適切さに関しては、感情労働の捉え方についての議論と、感情労働性を測定する際の指標に関する議論がある。
〔1〕感情労働の捉え方についての議論
Grandey(2000b)は、「感情の不協和」はネガティブな状態であるのに対して「表層演技」「深層演技」は本質的意味として肯定的でも否定的でもない。したがって、感情労働は「表層演技」と「深層演技」から構成されると考えた方が適切だと主張している。・・・あくまで「こういう行動を多く取るものは感情労働」という捉え方。
Zapf et al.(1999)では、action theory が感情労働の構成概念と関連しうる理論的枠組みを提供していると考えている。この視点からFarnkfurt Emotion Work Scaleを作成している。
〔2〕感情労働性を測定する際の指標に関する議論
これまでの尺度や分類の多くは、個人の感情労働を「する/しない」や、頻度や程度の測定に着目しており、「感情労働を行なうことがどのくらい大変か」という負担感を測定したものは無い。同じ感情動労働でも個人の負担感は異なると考えられる。このようなことから、個人の負担感を用いることが感情労働の測定指標として有用であると思われる。
⇒ さらには、「個人の負担感の違い」がどこから来るのか、ということについても研究対象として取りあげることもいいのではないか。
(3)その他の変数による感情労働や職務満足感への影響について
セルフ・モニタリングの自己呈示変容能力、対人不安や二面性、傾聴性が職務満足に影響を与えるとする研究結果があるが、これらは感情労働にも関連することが予想される。
また、感情労働を行なうことはストレスだが、それを通してクライエントや顧客から感謝や高い評価を与えられ、それによってストレスが減じられ精神的健康を保つ可能性もある。小村(2004)は、感情労働を受容し、顧客に積極的に接近することによって自己承認や職務上の喜びなどが感情労働のもたらす心理的影響をポジティブなものにしていると指摘している。
感想
なんとなく家庭生活も感情労働か・・・。
2010年6月25日金曜日
「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果—優勢職員と民間企業従業員との比較—
タイトル
「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果
—優勢職員と民間企業従業員との比較—
著者
山下 京
掲載
産業・組織心理学研究, Vol.11, No.2, pp.147-157, 1998.
アブストラクト
To examine the possible differences in the structures of work motivations between employees of postal offices and private organizations, a survey measuring the levels of the work motivation in both 10,852 postal workers and 2,396 private organizations employees were analyzed. The data showed that almost all of the postal employees had lower work motivation than their private organization counterparts. The present result, howerver, indicated that a particular department of postal employees were motivated more by jobs providing enjoyment. The further results drawn with covariance-structure analysis revealed that the higher work motivation in departments of postal saving or postal life insurance were inspired by intrinsic factors such as autonomy, but less by extrinsic factors such as money. The present study suggets that the work motivations in the goverment postal workers could be promoted to the compatible level to their private sector counterparts by introducing job enrichment and improving the reward system.
キーワード
郵政職員,仕事の楽しさ,内発的動機づけ要因,外発的動機づけ要因,報酬構造
要約
(1)民間企業の職員では、「仕事の楽しさ」(働きがい・ワークモチベーション)に外発的要因よりも自律感なんどの内発的要因が強く効く事が分かっている。
(2)一方で、公務員においては外発的要因による動機づけ・内発的要因による動機づけはともに低い、また、それらよりも人間関係を重視する、ということも分かっている。
(3)(2)から公務員に於いては有能感や自律感を支援することによって「仕事の楽しさ」を向上させるという方法はあまり機能しないとも考えられる。
そこで、公務員として郵政職員を取り上げ、
(P.1)郵政職員のワークモティベーションの水準や職務の特性などを、民間企業従業員との比較に基づいて整理・把握する。
(P.2)公務員の「仕事の楽しさ」の構造を明らかにし、民間企業従業員の「仕事の楽しさ」の構造が、公務員においてもいえるのかどうかを検討する。
(P.3)なお、さらに郵政職員は郵便・貯金・保険の3つの全く異なる業務が存在する。例えば簡保の営業系外務職員では、営業成績に対する歩合給が付加されている。このことに注目し、個人のパフォーマンスと報酬の随伴性の程度が「公務員」のワークモチベーションに及ぼす影響についても調べる。
データは国際経済労働研究所の全国規模の調査から。
モチベーションの測度として、「仕事の楽しさ」「仕事の生きがい感」「仕事の継続意志」
内発的要因、感情的要因として、「自律感」「有能感」
仕事そのものに関る認知的要因として、「職務状況の自律性の存在の認知」「多様性の存在の認知」「フィードバックの存在の認知」
←ここの二つを分けているところは、結構ポイントな気が個人的にする。
その他の要因(外的要因)として、「給与水準への満足度」「職場の人間関係」
結果・・・
(R1)全体としては、郵政職員は民間企業従業員に比べ「仕事の継続意志」は高いが、一部の職種を除いて「仕事の楽しさ」は低い。つまり、「仕事は楽しくないが、勤めは続けたい」と思っている。
ただ、郵便内・外務は「仕事の楽しさ」が低く、単調感も強い一方で、保険外務や貯金外務など歩合給となっている職種では、「仕事の楽しさ」や「仕事の継続意志」「給与の満足感」が高い。このように、公務員として同じ組織に属していてもその従事する職種によって差がある。
(R.2)共分散構造分析の結果から、これまで民間企業従業員で検討されてきた「仕事の楽しさ」の構造が、郵政職員(公務員)に於いても適用可能であることが支持された。つまり、基本的には公務員に於いても「仕事の楽しさ」に「自律感」「有能感」が民間企業と同じように大きく影響する。一方で、「給与への満足度」と「仕事の楽しさ」については、民間企業と類似した保険外務・貯金外務では、郵便・事務に比べ、関係は薄く、郵便・事務では逆に関係が強い。このことから、同じ公務員でも職務が異なると、「仕事の楽しさ」に影響を与える要因は異なっている。すなわち、「公務員」、「民間企業従業員」ということ「そのもの」は「仕事の楽しさ」の構造に影響を与えているわけではない。
感想
「公務員だから」モチベーションが低いのではない、ということ。ただ、これは「それよりも職種や業務内容、職務設計、遂行状況が影響を与えている」ということを意味しているわけではない。あくまで、私企業の社員と公務員として、モチベーションに影響を与えている要因の「構造」はそれほど大きくは違わない、ということ。
「仕事の楽しさ」に及ぼす内発的報酬と外発的報酬の効果
—優勢職員と民間企業従業員との比較—
著者
山下 京
掲載
産業・組織心理学研究, Vol.11, No.2, pp.147-157, 1998.
アブストラクト
To examine the possible differences in the structures of work motivations between employees of postal offices and private organizations, a survey measuring the levels of the work motivation in both 10,852 postal workers and 2,396 private organizations employees were analyzed. The data showed that almost all of the postal employees had lower work motivation than their private organization counterparts. The present result, howerver, indicated that a particular department of postal employees were motivated more by jobs providing enjoyment. The further results drawn with covariance-structure analysis revealed that the higher work motivation in departments of postal saving or postal life insurance were inspired by intrinsic factors such as autonomy, but less by extrinsic factors such as money. The present study suggets that the work motivations in the goverment postal workers could be promoted to the compatible level to their private sector counterparts by introducing job enrichment and improving the reward system.
キーワード
郵政職員,仕事の楽しさ,内発的動機づけ要因,外発的動機づけ要因,報酬構造
要約
(1)民間企業の職員では、「仕事の楽しさ」(働きがい・ワークモチベーション)に外発的要因よりも自律感なんどの内発的要因が強く効く事が分かっている。
(2)一方で、公務員においては外発的要因による動機づけ・内発的要因による動機づけはともに低い、また、それらよりも人間関係を重視する、ということも分かっている。
(3)(2)から公務員に於いては有能感や自律感を支援することによって「仕事の楽しさ」を向上させるという方法はあまり機能しないとも考えられる。
そこで、公務員として郵政職員を取り上げ、
(P.1)郵政職員のワークモティベーションの水準や職務の特性などを、民間企業従業員との比較に基づいて整理・把握する。
(P.2)公務員の「仕事の楽しさ」の構造を明らかにし、民間企業従業員の「仕事の楽しさ」の構造が、公務員においてもいえるのかどうかを検討する。
(P.3)なお、さらに郵政職員は郵便・貯金・保険の3つの全く異なる業務が存在する。例えば簡保の営業系外務職員では、営業成績に対する歩合給が付加されている。このことに注目し、個人のパフォーマンスと報酬の随伴性の程度が「公務員」のワークモチベーションに及ぼす影響についても調べる。
データは国際経済労働研究所の全国規模の調査から。
モチベーションの測度として、「仕事の楽しさ」「仕事の生きがい感」「仕事の継続意志」
内発的要因、感情的要因として、「自律感」「有能感」
仕事そのものに関る認知的要因として、「職務状況の自律性の存在の認知」「多様性の存在の認知」「フィードバックの存在の認知」
←ここの二つを分けているところは、結構ポイントな気が個人的にする。
その他の要因(外的要因)として、「給与水準への満足度」「職場の人間関係」
結果・・・
(R1)全体としては、郵政職員は民間企業従業員に比べ「仕事の継続意志」は高いが、一部の職種を除いて「仕事の楽しさ」は低い。つまり、「仕事は楽しくないが、勤めは続けたい」と思っている。
ただ、郵便内・外務は「仕事の楽しさ」が低く、単調感も強い一方で、保険外務や貯金外務など歩合給となっている職種では、「仕事の楽しさ」や「仕事の継続意志」「給与の満足感」が高い。このように、公務員として同じ組織に属していてもその従事する職種によって差がある。
(R.2)共分散構造分析の結果から、これまで民間企業従業員で検討されてきた「仕事の楽しさ」の構造が、郵政職員(公務員)に於いても適用可能であることが支持された。つまり、基本的には公務員に於いても「仕事の楽しさ」に「自律感」「有能感」が民間企業と同じように大きく影響する。一方で、「給与への満足度」と「仕事の楽しさ」については、民間企業と類似した保険外務・貯金外務では、郵便・事務に比べ、関係は薄く、郵便・事務では逆に関係が強い。このことから、同じ公務員でも職務が異なると、「仕事の楽しさ」に影響を与える要因は異なっている。すなわち、「公務員」、「民間企業従業員」ということ「そのもの」は「仕事の楽しさ」の構造に影響を与えているわけではない。
感想
「公務員だから」モチベーションが低いのではない、ということ。ただ、これは「それよりも職種や業務内容、職務設計、遂行状況が影響を与えている」ということを意味しているわけではない。あくまで、私企業の社員と公務員として、モチベーションに影響を与えている要因の「構造」はそれほど大きくは違わない、ということ。
2010年6月22日火曜日
検査課題における不安全行動の効果的な防止
タイトル
検査課題における不安全行動の効果的な防止
Preventing unsafe acts in inspection tasks
著者
田中 孝治, 加藤 隆
掲載
心理学研究, Vol. 81, No.1, pp.35--42, 2010.
アブストラクト
Unsafe acts such as ignoring scheduled inspection can cause serious consequences. This study examines the effects of two reinforcing stimuli and four reinforcement schedules in maintaining sampling behavior in a virtual inspection task. Participants were asked to decide (yes or no) for each "product" wheteher it should be sampled for inspection. In Experiment 1, "yes" responses were reinforced with the message that defectives were found, once for every one to nine (on average five) times (VR), only the first time (FTO), or never (None). The sampling behavior declined gradually in FR and VR and somewhat surprisingly more sharply in FTO than in None. In Experiment 2, the sampling behavior was effectively maintained when the participants were regulary provided with the evaluative feedback on their sampling behavior, although they were kept informed that defectives were not found. These results indicate the importance of utilizing reinforcing stimuli whose administration is independet of the outcome (e.g. defective or not) of the response (e.g., inspection) to be reinforced.
キーワード
unsafe act, reinforcing stimuli, reinforcement schedule, inspection task.
要約
要するに、まず前提として、
(theme)品質管理や安全管理が的確に成されていればいるほど、不良品や不具合の発生頻度は低くなり、不良・不具合発見という強化刺激を受ける機会は少なくなる。一方で、ある程度の割合で不具合・不良発見が行なわれなければ、それは、「検査行動」に対する正の強化刺激が与えられないということになるので、検査行動の実施頻度の低下を招きうる、というジレンマのモデルが考えられている。
(Objective)検査行動をいかに適切に持続させるか、という点での人の不安全行動の防止策を検討する。そのための手掛かりとして、2つの実験を行なった。
(Exp1)「最初の検査行動に対して、一発、強化刺激を与えた後、その後は検査行動に強化刺激を与えない」という強化刺激スケジュールの行動維持に対する効果は、全く強化刺激を与えない場合や、すでにある程度の効果が認められている強化スケジュール(要するに、固定比率で強化刺激をあたえるスケジュールと、変動比率で強化刺激を与えるスケジュール)に比べて、どの程度のものなのか?
→結果として、無強化条件、固定比率条件、変動比率条件に比べ、初回刺激条件では、行動が維持されなかった。原因は、この実験からは明確には分からないが、少なくとも、安易に「練習」的に最初のうちに集中して強化を与える(不良品の発見を体験させる)というのは、何もしないよりも却って結果を悪くする可能性があることが示唆された。
(Exp2)「強化刺激」に位置づけるものとして、「不良品の発見」を用いるのではなく、「検査が一定の割合以上で行なわれているか(行われていれば「合」、行われていなければ「否」)の評価の定期的フィードバック」を用いた場合の、行動維持の効果はどの程度のものなのか?対象実験にあたる条件として、実験1の無強化条件、変動比率条件も実施
→結果として、検査が行なわれているかの合否評価を与えた場合の方が、行動は維持される。
(総合考察)
本実験の実験1の結果から、以下のようなことが起こる可能性があることが示唆されている。
すなわち、初期には不良品が比較的多く発見されたとしても、その後の品質管理によって発生頻度が抑制されるはずである。しかし、実験1の初回のみ条件の結果は、品質管理の工場が皮肉にも品質検査の怠りに結びつき、それが不良品や不具合の検出の妨げになる可能性があることを示唆している。
(要するに、「ラインの立ち上げ時には不良率は高い。そのため、検査行動はその高い不良率でもって強化される。しかしながら、ラインが成熟してくると不良率は当然低下する。すると、それによって検査行動は、何の強化もされない場合よりも一層、消去される」というモデルが具現化される可能性は確かに存在する)
さらに実験2について、「リスク認知が不安全行動を抑制させる」という知見があるが、今回の「評価」というものを与えることは、実験参加者に対して「ある事柄」へのリスクを認知させることになったといえる。それは、すなわち、「自分自身の検査行動の評価(つまり、自分自身の評価)が悪くなること」である(検査をサボタージュして不良を見逃すというリスクではないことがポイント!!)。「検査をサボタージュして不良を見逃す」というリスクよりも「評価」というより分かり易いパーソナルなリスクに変換できたため、容易にリスク認知でき、検査行動が効果的に維持されたと考えられる。
・・・・ここはちょっと疑問。「検査をサボタージュして不良を見逃す」というのも、「自分の評価を下げる」という意味でリスクなのではないかな?ポイントなのは、「たまにしか出てこない、殆ど出てこないかもしれない、0.00・・・%ということが起って、評価が下がる」というリスクと、「それをしないと、確実に評価が下がる」というリスクとの比較だからこそ、認知しやすかったのではないかなぁ・・・。
本研究の結果は、人の検査行動に対する強化の利活用について重要な示唆をしている。すなわち、検査院が自分自身でてきかっくにリスク認知を行なうことには限界があることから、不安全行動による事故の責任を検査員個人に帰するのではなく、検査行動そのものを評価するなどの制度を組織として構築していくことの必要性を示している。検査員のリスク認知を容易にすると言うメリットが期待でき、さらに、リスクが自分自身の評価というパーソナルなものであるため、肯定的・否定的どちらの評価結果も、自分自身の評価を向上させようとする動機によって、検査行動の維持に効果を持つものと期待できる。つまり組織自体が検査の継続そのものを明示的に制度として評価するならば、その評価は検査員に対する効果的な強化刺激となり、検査員の不安全行動による事故を防ぐことが出来るものと期待できる。
感想
結構、最後の総合考察は面白い!!
特に、個人の行動が組織の制度によっても規程されるのだから、上手く制度設計するべきだと述べている点はまさに納得!
さらに、上記の結果の考察としてはなんとも言えないが、少なくとも「パーソナルな評価」というものに対する「リスク」は、人は敏感だということ。
これは、人の特性みたいなものとして考えてもよいだろう。
難しいリスクを言うより、パーソナルなリスクに置き換えてやるほうがよいだろうね。
さらには、そのパーソナルなリスクにしても、そのリスクが顕在化する確率を、制度を上手く設計することで高める(リスクの質は変るとしても)ことが出来る。
パーソナルなリスクと、本来、組織として避けたいリスクが直接に結びつかなくても、間接的に、結果として結びツテいればよい。
その意味で、「やったかどうかを評価する」というのは、「やる」と言う行動は誘発する。そして、「やる」ことによって不良発見率も高まる。間接だが、それでよい。
こういう考え方で、うまく制度設計してやれないか。
検査課題における不安全行動の効果的な防止
Preventing unsafe acts in inspection tasks
著者
田中 孝治, 加藤 隆
掲載
心理学研究, Vol. 81, No.1, pp.35--42, 2010.
アブストラクト
Unsafe acts such as ignoring scheduled inspection can cause serious consequences. This study examines the effects of two reinforcing stimuli and four reinforcement schedules in maintaining sampling behavior in a virtual inspection task. Participants were asked to decide (yes or no) for each "product" wheteher it should be sampled for inspection. In Experiment 1, "yes" responses were reinforced with the message that defectives were found, once for every one to nine (on average five) times (VR), only the first time (FTO), or never (None). The sampling behavior declined gradually in FR and VR and somewhat surprisingly more sharply in FTO than in None. In Experiment 2, the sampling behavior was effectively maintained when the participants were regulary provided with the evaluative feedback on their sampling behavior, although they were kept informed that defectives were not found. These results indicate the importance of utilizing reinforcing stimuli whose administration is independet of the outcome (e.g. defective or not) of the response (e.g., inspection) to be reinforced.
キーワード
unsafe act, reinforcing stimuli, reinforcement schedule, inspection task.
要約
要するに、まず前提として、
(theme)品質管理や安全管理が的確に成されていればいるほど、不良品や不具合の発生頻度は低くなり、不良・不具合発見という強化刺激を受ける機会は少なくなる。一方で、ある程度の割合で不具合・不良発見が行なわれなければ、それは、「検査行動」に対する正の強化刺激が与えられないということになるので、検査行動の実施頻度の低下を招きうる、というジレンマのモデルが考えられている。
(Objective)検査行動をいかに適切に持続させるか、という点での人の不安全行動の防止策を検討する。そのための手掛かりとして、2つの実験を行なった。
(Exp1)「最初の検査行動に対して、一発、強化刺激を与えた後、その後は検査行動に強化刺激を与えない」という強化刺激スケジュールの行動維持に対する効果は、全く強化刺激を与えない場合や、すでにある程度の効果が認められている強化スケジュール(要するに、固定比率で強化刺激をあたえるスケジュールと、変動比率で強化刺激を与えるスケジュール)に比べて、どの程度のものなのか?
→結果として、無強化条件、固定比率条件、変動比率条件に比べ、初回刺激条件では、行動が維持されなかった。原因は、この実験からは明確には分からないが、少なくとも、安易に「練習」的に最初のうちに集中して強化を与える(不良品の発見を体験させる)というのは、何もしないよりも却って結果を悪くする可能性があることが示唆された。
(Exp2)「強化刺激」に位置づけるものとして、「不良品の発見」を用いるのではなく、「検査が一定の割合以上で行なわれているか(行われていれば「合」、行われていなければ「否」)の評価の定期的フィードバック」を用いた場合の、行動維持の効果はどの程度のものなのか?対象実験にあたる条件として、実験1の無強化条件、変動比率条件も実施
→結果として、検査が行なわれているかの合否評価を与えた場合の方が、行動は維持される。
(総合考察)
本実験の実験1の結果から、以下のようなことが起こる可能性があることが示唆されている。
すなわち、初期には不良品が比較的多く発見されたとしても、その後の品質管理によって発生頻度が抑制されるはずである。しかし、実験1の初回のみ条件の結果は、品質管理の工場が皮肉にも品質検査の怠りに結びつき、それが不良品や不具合の検出の妨げになる可能性があることを示唆している。
(要するに、「ラインの立ち上げ時には不良率は高い。そのため、検査行動はその高い不良率でもって強化される。しかしながら、ラインが成熟してくると不良率は当然低下する。すると、それによって検査行動は、何の強化もされない場合よりも一層、消去される」というモデルが具現化される可能性は確かに存在する)
さらに実験2について、「リスク認知が不安全行動を抑制させる」という知見があるが、今回の「評価」というものを与えることは、実験参加者に対して「ある事柄」へのリスクを認知させることになったといえる。それは、すなわち、「自分自身の検査行動の評価(つまり、自分自身の評価)が悪くなること」である(検査をサボタージュして不良を見逃すというリスクではないことがポイント!!)。「検査をサボタージュして不良を見逃す」というリスクよりも「評価」というより分かり易いパーソナルなリスクに変換できたため、容易にリスク認知でき、検査行動が効果的に維持されたと考えられる。
・・・・ここはちょっと疑問。「検査をサボタージュして不良を見逃す」というのも、「自分の評価を下げる」という意味でリスクなのではないかな?ポイントなのは、「たまにしか出てこない、殆ど出てこないかもしれない、0.00・・・%ということが起って、評価が下がる」というリスクと、「それをしないと、確実に評価が下がる」というリスクとの比較だからこそ、認知しやすかったのではないかなぁ・・・。
本研究の結果は、人の検査行動に対する強化の利活用について重要な示唆をしている。すなわち、検査院が自分自身でてきかっくにリスク認知を行なうことには限界があることから、不安全行動による事故の責任を検査員個人に帰するのではなく、検査行動そのものを評価するなどの制度を組織として構築していくことの必要性を示している。検査員のリスク認知を容易にすると言うメリットが期待でき、さらに、リスクが自分自身の評価というパーソナルなものであるため、肯定的・否定的どちらの評価結果も、自分自身の評価を向上させようとする動機によって、検査行動の維持に効果を持つものと期待できる。つまり組織自体が検査の継続そのものを明示的に制度として評価するならば、その評価は検査員に対する効果的な強化刺激となり、検査員の不安全行動による事故を防ぐことが出来るものと期待できる。
感想
結構、最後の総合考察は面白い!!
特に、個人の行動が組織の制度によっても規程されるのだから、上手く制度設計するべきだと述べている点はまさに納得!
さらに、上記の結果の考察としてはなんとも言えないが、少なくとも「パーソナルな評価」というものに対する「リスク」は、人は敏感だということ。
これは、人の特性みたいなものとして考えてもよいだろう。
難しいリスクを言うより、パーソナルなリスクに置き換えてやるほうがよいだろうね。
さらには、そのパーソナルなリスクにしても、そのリスクが顕在化する確率を、制度を上手く設計することで高める(リスクの質は変るとしても)ことが出来る。
パーソナルなリスクと、本来、組織として避けたいリスクが直接に結びつかなくても、間接的に、結果として結びツテいればよい。
その意味で、「やったかどうかを評価する」というのは、「やる」と言う行動は誘発する。そして、「やる」ことによって不良発見率も高まる。間接だが、それでよい。
こういう考え方で、うまく制度設計してやれないか。
2010年6月4日金曜日
食品の安全性と企業逸脱
タイトル
食品の安全性と企業逸脱
著者
宝月 誠
掲載
立命館産業社会論集, Vol.42, No.3, pp.1-23, 2006.
アブストラクト
食べ物の安全性について、本研究は企業逸脱の観点からアプローチする。食べ物の大半が商品として生産・流通している現状からすれば、食品の製造・販売企業の行動に焦点を定めて安全性の問題を考えることは意義がある。第1に安全性を損なう食品企業の逸脱がどのようにして生じるのかを明らかにし、第2に職の安全性を高めるために企業に対する社会的コントロールのあり方を論じ、第3に安全性について考え方を再検討する。明らかにされたことは以下の点である。(1)食品企業の逸脱のタイプは、「安全軽視型」「利益本位型」「逸脱誘因型」「組織弛緩型」に分類される。これらいずれのタイプについても説明するのは、「企業は絶えず、なんらかの問題状況に直面しているが、違法な手段によってその解決が可能であると『状況の定義』をする経営者や担当者がおり、またそれを指示する企業文化が存在するときに、企業逸脱の可能性は増す」という命題である。(2)食品企業の逸脱はこの要因に加えて6つの他の要因のどれかが関連している。現実的な対応としては、コントロールしやすいいずれかの要因を取り除くことが有効である。(3)食品の安全性を高めるには、「日常生活感覚」や「科学的根拠」、「最悪のケースの想起」に基づく安全性の考え方を超えた新たな意味世界が必要となる。
キーワード
食品の安全性、食品企業の逸脱、コントロール
要約
食品の安全性という観点から食品関連企業の「逸脱」について、(1)逸脱発生の原因と対策、(2)そもそもの「安全」というものに対する考え方、の2点について論じている。
ここで「逸脱」とラベル付けしているものは、要するに食品の安全性・信頼性を損なう行為を行なうことを指す。
(1)逸脱発生の原因と対策について・・・・
既往研究のレビューから、「企業逸脱がどのようにして生じるか」について以下の7つの命題を提起する。
【命題1】過度な市場競争の状態であるか、あるいは、集中化・寡占化が進んでいる状態など、市場環境が企業や業界に逸脱機会を与え易いものであるほど、企業逸脱の可能性は増す。
【命題2】技術的に不確実性が高い・信頼性が低いものである場合や、人による操作ミスが起こり易い(不注意・能力不足・過労などによって)場合であればあるほど、企業逸脱の可能性が増す。(→ここでの逸脱は悪意のあるものだけでなく、結果として社会から「逸脱した」とラベル付けされたもの全般を「逸脱」と呼んでいる。)
【命題3】行政や司法機関による効果的なコントロールが機能していない場合や、規制緩和などで規範が緩やかになった場合では、企業は身勝手な行為を行ない易くなり、企業逸脱の可能性が増す。逆に、被害者・大衆・メディアによる批判が強いほど、コンプライアンスのポーズをとることが多くなる。
【命題4】絶えず直面している問題に対して、違法な手段によってその解決が可能であると「状況の定義」をする経営者・担当者がおり、それを支持する企業文化が存在する時に、企業逸脱の可能性は増す。
→より具体的には以下のような場合に逸脱に踏み出す可能性が高い。
<第1>:企業が直面する問題状況の解決を迫るプレッシャーが強く、これらの問題を解決できない経営者・担当者を無能とみなす企業文化の強い場合。
<第2>:企業の社会的責任や信頼性を重視する意識が弱い組織文化の下では逸脱は生じ易い。逆に、これらが強い場合には逸脱をするモチベーションは規制されるし、行なったところで組織内部で支持されない。
<第3>:第2のような文化の違いは、経営者や担当者が、どれだけ広い社会的視点と長期的な時間的パースペクティブを有しているのかという点に如実に表れる。(→これだけ、第2の補足になっている・・・)
<第4>:企業を取り巻く社会そのものが、安全性を重視する集合意識を思っている場合には、企業内部や業界もそれを意識して(「反映して」の方が正しいと思うが・・・)社会的責任を強調する。逆に、社会のあらゆるもの(たとえばスポーツ活動や学校、医療などまでも)が市場化され、競争や利益追求が強調されると、企業も相した社会潮流の影響を受け、社会的責任意識が希薄化する。社会が市場化へと向かうと、個の利害関心に基づく合理的計算は増えても、意味世界の公共性は弱まる。
【命題5】企業犯罪が実行されるのは、組織の管理システムが逸脱をサポートする体制となっているときである。ここで管理システムとは、「逸脱を命じる強制的な権力」、「社員に逸脱行為を引き受けさせる魅力的な報酬」、「愛社精神(組織が生き残るためには違法行為もやむなし、と自ら正当化する)」、「他の企業が違法なことをしている」、というものを指す。
【命題6】組織内部で企業行為を相互にチェックする機能が働きにくい組織ほど、企業逸脱を予防しにくい。ここでは、特に相互チェックは他者への干渉であるので下手をすれば組織の部門間の軋轢を生むことになりかねず、組織内でその実施に消極的になる場合が多く、そうした組織では逸脱を事前に回避できる力は弱まる。
【命題7】組織内部で情報共有が円滑におこなわれておらず、企業行為のミスやリスク情報が共有されることが少ないほど、逸脱は回避されにくくなる。一部の部門や担当者に認知されたリスクも、隠蔽されたり、特定の部門・担当者にとどめられ内部で処理されたり、時には放置されたりする傾向が強いと、小さなミスやリスクの認識が放置されたままになって、ミスやリスクが新たなミスやリスクを惹き起し、最終的に重大な事故を招くこともある。
以上の7つの命題は仮説であるが、実際の食品関連企業の逸脱の説明においては、どの命題がより関連しているか。それを調べた。結果として、逸脱のタイプは、「安全軽視型(命題2+4+7)」「利益本位型(命題1+4+5)」「逸脱誘因型(命題3+4+6)」「組織弛緩型(命題4*3)」に分類された。(特に組織弛緩型とは、企業やそのメンバの利益は重視しても企業活動の社会的責任に対する意識は比較的希薄で、かつコントロールかんきょうもそしきにたいして 庇護的であり、また組織内部で相互に行為をチェックする体制に欠けている場合を指す。要するに、ぬるま湯につかっている組織)
これらから、命題4が全てに共通していることが分かった。
企業逸脱をコントロールするためには、安全軽視型においては、経営者や担当者の社会的・時間的パースペクティブに働きかけて、彼らの意思決定の仕方を変更させる取り組みが重要。利益本位型は逸脱をサポートするような管理システムを改善していくべき。逸脱誘因型は、外部のコントロール環境はメディアの報道や消費者運動によってになわれるが、企業の不祥事を契機にして、企業批判が高まる。こうした動きによって行政や政府もフォーマルなコントロールの改善を示さざるを得なくなる。組織弛緩型は、外部のコントロールが必要。
(2)食べ物の「安全性」についての考え方・・・・
安全に対する考え方は企業や消費者、行政、専門家の間で必ずしも同じではない。
安全に対する考え方は3つ
・生活感覚に基づく安全性・・・・素朴に「これは危ないのではないか」と感じるもの。消費者、メディア。
・科学的根拠に基づく安全性・・何%の確率での危険性を示すもの。さらには、それを基にリスクを如何に制御するか、受容するか検討するもの。リスクコントロール=「リスク評価」「リスク管理」「リスクコミュニケーション」。業者と政府・行政。ただ、厳密に有害性・危険性が証明されなければ、現状の流れを止めない・対策しない(そのほうが、業者にとっては都合が良い)、という不作為も生み出す。
・最悪ケースの想起に基づく安全性・・・最悪のケースが起こる場合を想起し、それに基づいて備え、対応し、災害を回復しようとする戦略。市民グループ。
このようなそれぞれの安全性の捉え方の分裂が、食の安全に対する問題の解決(社会的な意味での解決)の足を鈍らせている。互いに相手の視点を取得し、相互理解を府負ける相互作用に、分裂解消の可能性がある。科学的な知見を取り入れ、イマジネーションを膨らませ、日常生活の状況で現実的に安全性について考えるようになることで、安全性に関する意味世界も新たなレベルになる。そのためには、以下のような事柄の議論が必要である。
【感覚の共有】
・消費者が生活感覚で「不安」と感じる食品に対して、生産者・行政はどれだけその不安を共有し、解消できるか。
・安全性に対して「不確実性が高い」と感じる食品を、業者が開発・販売したり、行政が認可する場合に、どれだけ懸念を解消できるか。
【持続性(サスティナビリティ)への認識】
・現在のことだけでなく、「子孫への影響」も考慮して、安全性を確保する必要性についての共通認識はどれだけ可能か。
・「環境への影響や資源の浪費」といった点についてもどれだけ関係者の間で共通認識を持つことが可能か。
感想
う〜ん。。。根拠がいまいちというか、目からうろこがないというか。やってることに対しても、結果に対しても。
まあ、安全に対する考え方が3つあるという、後半部分はそこそこかなぁ。
食品の安全性と企業逸脱
著者
宝月 誠
掲載
立命館産業社会論集, Vol.42, No.3, pp.1-23, 2006.
アブストラクト
食べ物の安全性について、本研究は企業逸脱の観点からアプローチする。食べ物の大半が商品として生産・流通している現状からすれば、食品の製造・販売企業の行動に焦点を定めて安全性の問題を考えることは意義がある。第1に安全性を損なう食品企業の逸脱がどのようにして生じるのかを明らかにし、第2に職の安全性を高めるために企業に対する社会的コントロールのあり方を論じ、第3に安全性について考え方を再検討する。明らかにされたことは以下の点である。(1)食品企業の逸脱のタイプは、「安全軽視型」「利益本位型」「逸脱誘因型」「組織弛緩型」に分類される。これらいずれのタイプについても説明するのは、「企業は絶えず、なんらかの問題状況に直面しているが、違法な手段によってその解決が可能であると『状況の定義』をする経営者や担当者がおり、またそれを指示する企業文化が存在するときに、企業逸脱の可能性は増す」という命題である。(2)食品企業の逸脱はこの要因に加えて6つの他の要因のどれかが関連している。現実的な対応としては、コントロールしやすいいずれかの要因を取り除くことが有効である。(3)食品の安全性を高めるには、「日常生活感覚」や「科学的根拠」、「最悪のケースの想起」に基づく安全性の考え方を超えた新たな意味世界が必要となる。
キーワード
食品の安全性、食品企業の逸脱、コントロール
要約
食品の安全性という観点から食品関連企業の「逸脱」について、(1)逸脱発生の原因と対策、(2)そもそもの「安全」というものに対する考え方、の2点について論じている。
ここで「逸脱」とラベル付けしているものは、要するに食品の安全性・信頼性を損なう行為を行なうことを指す。
(1)逸脱発生の原因と対策について・・・・
既往研究のレビューから、「企業逸脱がどのようにして生じるか」について以下の7つの命題を提起する。
【命題1】過度な市場競争の状態であるか、あるいは、集中化・寡占化が進んでいる状態など、市場環境が企業や業界に逸脱機会を与え易いものであるほど、企業逸脱の可能性は増す。
【命題2】技術的に不確実性が高い・信頼性が低いものである場合や、人による操作ミスが起こり易い(不注意・能力不足・過労などによって)場合であればあるほど、企業逸脱の可能性が増す。(→ここでの逸脱は悪意のあるものだけでなく、結果として社会から「逸脱した」とラベル付けされたもの全般を「逸脱」と呼んでいる。)
【命題3】行政や司法機関による効果的なコントロールが機能していない場合や、規制緩和などで規範が緩やかになった場合では、企業は身勝手な行為を行ない易くなり、企業逸脱の可能性が増す。逆に、被害者・大衆・メディアによる批判が強いほど、コンプライアンスのポーズをとることが多くなる。
【命題4】絶えず直面している問題に対して、違法な手段によってその解決が可能であると「状況の定義」をする経営者・担当者がおり、それを支持する企業文化が存在する時に、企業逸脱の可能性は増す。
→より具体的には以下のような場合に逸脱に踏み出す可能性が高い。
<第1>:企業が直面する問題状況の解決を迫るプレッシャーが強く、これらの問題を解決できない経営者・担当者を無能とみなす企業文化の強い場合。
<第2>:企業の社会的責任や信頼性を重視する意識が弱い組織文化の下では逸脱は生じ易い。逆に、これらが強い場合には逸脱をするモチベーションは規制されるし、行なったところで組織内部で支持されない。
<第3>:第2のような文化の違いは、経営者や担当者が、どれだけ広い社会的視点と長期的な時間的パースペクティブを有しているのかという点に如実に表れる。(→これだけ、第2の補足になっている・・・)
<第4>:企業を取り巻く社会そのものが、安全性を重視する集合意識を思っている場合には、企業内部や業界もそれを意識して(「反映して」の方が正しいと思うが・・・)社会的責任を強調する。逆に、社会のあらゆるもの(たとえばスポーツ活動や学校、医療などまでも)が市場化され、競争や利益追求が強調されると、企業も相した社会潮流の影響を受け、社会的責任意識が希薄化する。社会が市場化へと向かうと、個の利害関心に基づく合理的計算は増えても、意味世界の公共性は弱まる。
【命題5】企業犯罪が実行されるのは、組織の管理システムが逸脱をサポートする体制となっているときである。ここで管理システムとは、「逸脱を命じる強制的な権力」、「社員に逸脱行為を引き受けさせる魅力的な報酬」、「愛社精神(組織が生き残るためには違法行為もやむなし、と自ら正当化する)」、「他の企業が違法なことをしている」、というものを指す。
【命題6】組織内部で企業行為を相互にチェックする機能が働きにくい組織ほど、企業逸脱を予防しにくい。ここでは、特に相互チェックは他者への干渉であるので下手をすれば組織の部門間の軋轢を生むことになりかねず、組織内でその実施に消極的になる場合が多く、そうした組織では逸脱を事前に回避できる力は弱まる。
【命題7】組織内部で情報共有が円滑におこなわれておらず、企業行為のミスやリスク情報が共有されることが少ないほど、逸脱は回避されにくくなる。一部の部門や担当者に認知されたリスクも、隠蔽されたり、特定の部門・担当者にとどめられ内部で処理されたり、時には放置されたりする傾向が強いと、小さなミスやリスクの認識が放置されたままになって、ミスやリスクが新たなミスやリスクを惹き起し、最終的に重大な事故を招くこともある。
以上の7つの命題は仮説であるが、実際の食品関連企業の逸脱の説明においては、どの命題がより関連しているか。それを調べた。結果として、逸脱のタイプは、「安全軽視型(命題2+4+7)」「利益本位型(命題1+4+5)」「逸脱誘因型(命題3+4+6)」「組織弛緩型(命題4*3)」に分類された。(特に組織弛緩型とは、企業やそのメンバの利益は重視しても企業活動の社会的責任に対する意識は比較的希薄で、かつコントロールかんきょうもそしきにたいして 庇護的であり、また組織内部で相互に行為をチェックする体制に欠けている場合を指す。要するに、ぬるま湯につかっている組織)
これらから、命題4が全てに共通していることが分かった。
企業逸脱をコントロールするためには、安全軽視型においては、経営者や担当者の社会的・時間的パースペクティブに働きかけて、彼らの意思決定の仕方を変更させる取り組みが重要。利益本位型は逸脱をサポートするような管理システムを改善していくべき。逸脱誘因型は、外部のコントロール環境はメディアの報道や消費者運動によってになわれるが、企業の不祥事を契機にして、企業批判が高まる。こうした動きによって行政や政府もフォーマルなコントロールの改善を示さざるを得なくなる。組織弛緩型は、外部のコントロールが必要。
(2)食べ物の「安全性」についての考え方・・・・
安全に対する考え方は企業や消費者、行政、専門家の間で必ずしも同じではない。
安全に対する考え方は3つ
・生活感覚に基づく安全性・・・・素朴に「これは危ないのではないか」と感じるもの。消費者、メディア。
・科学的根拠に基づく安全性・・何%の確率での危険性を示すもの。さらには、それを基にリスクを如何に制御するか、受容するか検討するもの。リスクコントロール=「リスク評価」「リスク管理」「リスクコミュニケーション」。業者と政府・行政。ただ、厳密に有害性・危険性が証明されなければ、現状の流れを止めない・対策しない(そのほうが、業者にとっては都合が良い)、という不作為も生み出す。
・最悪ケースの想起に基づく安全性・・・最悪のケースが起こる場合を想起し、それに基づいて備え、対応し、災害を回復しようとする戦略。市民グループ。
このようなそれぞれの安全性の捉え方の分裂が、食の安全に対する問題の解決(社会的な意味での解決)の足を鈍らせている。互いに相手の視点を取得し、相互理解を府負ける相互作用に、分裂解消の可能性がある。科学的な知見を取り入れ、イマジネーションを膨らませ、日常生活の状況で現実的に安全性について考えるようになることで、安全性に関する意味世界も新たなレベルになる。そのためには、以下のような事柄の議論が必要である。
【感覚の共有】
・消費者が生活感覚で「不安」と感じる食品に対して、生産者・行政はどれだけその不安を共有し、解消できるか。
・安全性に対して「不確実性が高い」と感じる食品を、業者が開発・販売したり、行政が認可する場合に、どれだけ懸念を解消できるか。
【持続性(サスティナビリティ)への認識】
・現在のことだけでなく、「子孫への影響」も考慮して、安全性を確保する必要性についての共通認識はどれだけ可能か。
・「環境への影響や資源の浪費」といった点についてもどれだけ関係者の間で共通認識を持つことが可能か。
感想
う〜ん。。。根拠がいまいちというか、目からうろこがないというか。やってることに対しても、結果に対しても。
まあ、安全に対する考え方が3つあるという、後半部分はそこそこかなぁ。
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