2012年6月6日水曜日

職場に対する従業員のささやかな抵抗:組織阻害行動とその規定要因の研究

[タイトル]
職場に対する従業員のささやかな抵抗:組織阻害行動とその規定要因の研究

[著者]
田中 堅一郎

[掲載]
経営行動科学, Vol.14, No.2, pp.87-97, 2001.

[アブストラクト]
The present study examined oraganizational retaliatory behavior (ORB), proposed by Skarlicki & Folger (1997, 1999), in Japanese organizations. ORB was defined as the behavioral responses of employees that casuse the loss of performance in the workplase, and result in a loss to effective functions of the organization, though not haming employees. Two handred and twenty Japanese employees completed questionnaires about ORB, organizational justice, and mood in the workplace. The results of factor analysis indicated that ORB scale had two factors (interpersonal deviant behavior, sabotage), though the previous study reported the existence of single factor. Results demonstrated that the interpersonal deviant behavior had the negative relationship to oranizatinal justice (procedural and interactive) and associated positively with the negative mood in workplace; sabotage had the positive relationsihp to negative mood in workplace and associated negatively with the positive mood in workplace. These results suggested that mood in the workplace, as compared with oragnizational justice, had stronger infuluence on ORB.

[キーワード]
組織市民行動、組織阻害行動、公正、気分、組織文化、マネジメント

[要約・感想]

以前読んだ産業組織心理学会の職場無作法の話に似てる気がした。特に、対人的逸脱行為に関して。

以下、抜粋。
「回答者が職場でネガティブな気分でいるときには職場の同僚や上司に無礼な言動をするといった「対人的逸脱行為」や、仕事を意図的に遅らせるといった「怠業」を行いやすいとみなされる。」

「従業員の業務に対して不適切な(非建設的な)ネガティブ・フィードバックを行うことは彼らの気分をひどく害することとなるので避けるべきだし、従業員の成功を褒めることなく失敗をことさら咎める組織風土が見られば改める必要がある。」

「回答者が自分の所属する組織(会社)内でのさまざまな手続きを公正であると考えているほど、あるいは上司による職務上の意思決定や回答者への接し方が公正であるとみなしているほど、「対人的逸脱行為」を行いにくいことを示している。」

「従業員が会社や組織で対人的な問題を引き起こさないためには、会社や組織のシステムや手続きが従業員にとって一貫性があること、会社や組織の行った重要な決定に関して従業員が説明を求めたり情報を要求でき、意見を述べる機会が十分あること、さらには従業員の上司が誠実な対応を心がけ、部下を感じることなく親身になって考えることが必要となってくるであろう」

それと、興味深いなと思ったのが、
分配的公正と組織市民行動や組織阻害行動に関連性がないということ。要するに、給与や待遇というものは具体的な行動として規定された行動以外の行動との関連性は見出せないということ。ようするに、少なくとも日本においては給与や待遇がいいからといって組織市民行動が増えたり、組織阻害行動が減ったりすることはないし、逆に給与や待遇が悪いからといって組織市民行動が減ったり、阻害行動が増えたりすることはない。給与以外のものがこれらを規定しているということ。



また、職場における気分の改善には温度や湿度などの住環境としての物理的環境と組織文化の二つにアプローチする必要があるという点について、私個人としては、それに加えて「情報環境」も加えたい。なんとなく2重の構図だと思う。
つまり、
物理的環境   −−┐
普段の対人行動 −−┴− 人の価値観は前提として、その時々の気分を直接描く
(狭い意味での組織文化)

情報環境 −−┐
組織文化 −−┴− 人の価値観そのものにアプローチ。価値観が変われば、当然その場その場の気分も変わる!