2011年5月31日火曜日

主観的な職業威信とPro-Social行動—消防官をサンプルに用いた検討—

[タイトル]
主観的な職業威信とPro-Social行動—消防官をサンプルに用いた検討—

[著者]
堀 洋元, 鎌田 晶子, 岡本 浩一

[掲載]
社会技術研究論文集, Vol.3, pp,118-127, 2005.

[アブストラクト]
ある職業に就く人それぞれが職業に感じている誇らしさを主観的な職業威信といい、主観的な職業威信を高く保つことによって組織内の違反防止が促進されると考えられる。本研究では、消防官を対象として取り上げ、彼らの主観的な職業威信について検討した。研究1では消防官の主観的な職業威信を探索的に検討し、一般市民との結びつきが誇りの高さに影響を与える可能性を示した(n=73)。研究2では、消防間の主観的な職業威信の構造が一般有職者のものとは異なることを示し、さらに、主観的な職業威信の高さが組織におけるPro-Social行動(組織のためになる行動)と関連することを示した(n=187)。これらの結果から、高邁な職業意識が違反防止に活用可能であることを提言する。

[キーワード]
主観的な職業威信、組織的違反、消防官、Pro−Social行動、Nobless Oblige

[要約・感想]
いろいろと前段部分の論述は突っ込みどころが満載な論文。ワロタ。

まさにタイトルに書いてあることの方が正解で、下手に違反や隠蔽と絡めて議論しないほうがよかったのに・・・。

研究としては、結局は消防官の職業意識と組織市民行動との関連性を調べているもの。まあ、それはそれでよいとは思うが。。。
(論文では「誇り」と言っているが、項目だけみれば、これは「誇り」ではなく「自分の仕事をどのようなものと捉えているか」だと思う。だって、論文の中でも「誇りに影響を与えている要因」と言ってるんだもの。つまりは、これらと「誇り」は因果関係にあり、基本的に相互に別概念である、と言ってる)

まあまとめると、
消防官は自分の仕事を
「社会に貢献するしごとかどうか」「社会的に認められているか」
「やりがいがあるか」「知識や技能を活かせるか」「家族に求められているか」
と関連する因子
(「承認とやりがい」因子)

「人を幸せにしてあげられるかどうか」「人に感動を与えられるかどうか」
と関連する因子
(「社会的奉仕」因子)

2つの因子(観点)で捉えているといえる。
そしてそれぞれの因子で、
組織市民行動との相関が若干弱いながらも有意であった

ということ。考察は勝手にしてください、という感じ。

FW: 組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—

職業威信を社会一般に対する職に対するステレオタイプとすれば、そのようなステレオタイプの存在を強く認識すればするほど、そのステレオタイプに合わせた行動を取るようになると考えられる。

これは、ステレオタイプ、というよりは認知的不協和理論—認知的斉一性理論の一つと見る方が自然か。

結局、「職業威信」という言葉がイマイチ腑に落ちない。よく意味が分からない概念だ。人からどのような職と思われているか、にさらに「よい」や「望ましい」「信望」などの評価が結び付けられている概念ということか。

これって結局、態度の認知的側面と感情的側面を捉えているということじゃないか??

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Tuesday, May 31, 2011 12:23 PM
To: '論文DB'
Subject: 組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—


[タイトル]
組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—

[著者]
上瀬 由美子, 下村 英雄, 今野 裕之, 堀 洋元, 岡本 浩一

[掲載]
社会技術研究論文, Vol.3, pp.111-117, 2005.

[アブストラクト]
本研究では、組織における違反の背景に職業威信を位置づけ、職場風土、職行属性、個人属性と合わせて関連を検討することを目的としている。サンプリングによって抽出した501人の成人男女の回答を分析した結果、不正かばいあいの違反経験は、違反を抑制する雰囲気のある職場であるほど少なくなっていた。その一方、自分の職業について社会的責任が高いと考えている回答者ほど、違反を経験する傾向のあることが明らかになった。

[キーワード]
違反、職業威信、自尊心、職業適スティグマ、職場風土

[要約・感想]
要約すると。。。
職場における違反と職業威信がどのように関連するかを明らかにすることを目的とした研究。
結果・・・

相関分析から
1.職業的自尊心は、個人的違反への抵抗感、組織的違反への抵抗感と関連している。
2.職業的スティグマは、組織的・個人的違反への抵抗感と不正かばいあいの経験、個人的違反の経験と関連している。
3.社会的責任は不正かばいあいの経験と関連している。

さらに重回帰分析から、
1.個人的違反を行うか否かは、個人的違反への抵抗感が大きく作用する。また、個人的違反への抵抗感は、加齢以外にも、違反を排除しようとする職場の雰囲気の影響も受ける。個人的違反の低減には命令系統の整備が重要であり、それが組織のける違反容認の雰囲気を抑制する、という知見があることから、本研究の結果からは、命令系統の整備が行われた場合、組織の風土が変わるだけでなく、そのことがそこで働く人々の個人的違反への抵抗感を高め、結果として個人的違反の経験が低減するという流れが生じることが示唆される。
→ 要するにグループダイナミクス

2.不正かばいあいの経験は、違反を容認したり排除するのに消極的である職場風土が影響を与えていた。一方で、社会的責任も影響を与えていた。相関分析の結果と同様に、社会的責任が高いと思われている職業についている回答者の方が不正かばいあいの経験をしているという結果であった。このことから、警察や自動車業界、鉄道業界など、「自分の仕事には社会的責任があり、絶対に違反や事故を起こしてはいけない」と強く思い込むことが、逆に不祥事の隠蔽などにつながることを示唆している。社会が特定の職業に対して清廉潔白であることを強く期待することが、逆に組織での違反のいっぺんに結びつくことを示唆している。
→ 「社会的責任(ステレオタイプ)を認知してしまう→不正の隠蔽」というパス

感想として、
後半の知見が非常に興味深い。直感的には納得がいく。
また、「世間から社会的責任が高いと思われている職業」というのもステレオタイプの一つ。このようなステレオタイプは如何にして築かれるのか。維持されているのか。直感的には、ここにメディアの影響があるように思う。
また、「社会的責任→隠蔽」のパスは、今回、業界をまたいだ結果である点も興味深い。やっぱり「人だから」そういうステレオタイプへの反応をしてしまう、ということか。

ちょうど、今ステレオタイプの本を読んでいるので面白い。

ただ、研究として「認知された職業威信」を「客観的な職業威信の認知」としている点はどうかと思う。本来であれば、「世間から〜〜〜だと思われていると思う」というのが正解だと思う。まあ、この尺度はこの尺度として、それはそれで「その人のその職業に対するステレオタイプ(期待されている姿)」を表しているからよいと思うが。

結局、「職業威信」という言葉がイマイチ腑に落ちない。よく意味が分からない概念だ。人からどのような職と思われているか、にさらに「よい」や「望ましい」「信望」などの評価が結び付けられている概念ということか。

なお、誇りの文脈では、職業的自尊心として、価値、世の中への貢献、自慢、満足、尊敬、肯定的—否定的などのイメージで捉えられている。

組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—

[タイトル]
組織における違反と職業威信—有職者を対象としたサンプリング調査から—

[著者]
上瀬 由美子, 下村 英雄, 今野 裕之, 堀 洋元, 岡本 浩一

[掲載]
社会技術研究論文, Vol.3, pp.111-117, 2005.

[アブストラクト]
本研究では、組織における違反の背景に職業威信を位置づけ、職場風土、職行属性、個人属性と合わせて関連を検討することを目的としている。サンプリングによって抽出した501人の成人男女の回答を分析した結果、不正かばいあいの違反経験は、違反を抑制する雰囲気のある職場であるほど少なくなっていた。その一方、自分の職業について社会的責任が高いと考えている回答者ほど、違反を経験する傾向のあることが明らかになった。

[キーワード]
違反、職業威信、自尊心、職業適スティグマ、職場風土

[要約・感想]
要約すると。。。
職場における違反と職業威信がどのように関連するかを明らかにすることを目的とした研究。
結果・・・

相関分析から
1.職業的自尊心は、個人的違反への抵抗感、組織的違反への抵抗感と関連している。
2.職業的スティグマは、組織的・個人的違反への抵抗感と不正かばいあいの経験、個人的違反の経験と関連している。
3.社会的責任は不正かばいあいの経験と関連している。

さらに重回帰分析から、
1.個人的違反を行うか否かは、個人的違反への抵抗感が大きく作用する。また、個人的違反への抵抗感は、加齢以外にも、違反を排除しようとする職場の雰囲気の影響も受ける。個人的違反の低減には命令系統の整備が重要であり、それが組織のける違反容認の雰囲気を抑制する、という知見があることから、本研究の結果からは、命令系統の整備が行われた場合、組織の風土が変わるだけでなく、そのことがそこで働く人々の個人的違反への抵抗感を高め、結果として個人的違反の経験が低減するという流れが生じることが示唆される。
→ 要するにグループダイナミクス

2.不正かばいあいの経験は、違反を容認したり排除するのに消極的である職場風土が影響を与えていた。一方で、社会的責任も影響を与えていた。相関分析の結果と同様に、社会的責任が高いと思われている職業についている回答者の方が不正かばいあいの経験をしているという結果であった。このことから、警察や自動車業界、鉄道業界など、「自分の仕事には社会的責任があり、絶対に違反や事故を起こしてはいけない」と強く思い込むことが、逆に不祥事の隠蔽などにつながることを示唆している。社会が特定の職業に対して清廉潔白であることを強く期待することが、逆に組織での違反のいっぺんに結びつくことを示唆している。
→ 「社会的責任(ステレオタイプ)を認知してしまう→不正の隠蔽」というパス

感想として、
後半の知見が非常に興味深い。直感的には納得がいく。
また、「世間から社会的責任が高いと思われている職業」というのもステレオタイプの一つ。このようなステレオタイプは如何にして築かれるのか。維持されているのか。直感的には、ここにメディアの影響があるように思う。
また、「社会的責任→隠蔽」のパスは、今回、業界をまたいだ結果である点も興味深い。やっぱり「人だから」そういうステレオタイプへの反応をしてしまう、ということか。

ちょうど、今ステレオタイプの本を読んでいるので面白い。

ただ、研究として「認知された職業威信」を「客観的な職業威信の認知」としている点はどうかと思う。本来であれば、「世間から〜〜〜だと思われていると思う」というのが正解だと思う。まあ、この尺度はこの尺度として、それはそれで「その人のその職業に対するステレオタイプ(期待されている姿)」を表しているからよいと思うが。

結局、「職業威信」という言葉がイマイチ腑に落ちない。よく意味が分からない概念だ。人からどのような職と思われているか、にさらに「よい」や「望ましい」「信望」などの評価が結び付けられている概念ということか。

なお、誇りの文脈では、職業的自尊心として、価値、世の中への貢献、自慢、満足、尊敬、肯定的—否定的などのイメージで捉えられている。

2011年5月30日月曜日

職業威信と安全性拡充のための社会心理学的装置の検討

[タイトル]
職業威信と安全性拡充のための社会心理学的装置の検討

[著者]
下村 英雄、堀 洋元

[掲載]
社会技術研究論文, Vol.1, pp.258-267, 2003.

[アブストラクト]
本研究では、職業威信に関する先行研究を検討することによって、安全性拡充のための社会心理学的な装置の可能性を探索することを目的とした。その結果、職業威信は各国間、世代間で不偏であるという特徴が見られた。次に、職業威信に関する社会心理学的な研究を概観した。社会心理学では、職業威信はおもにジェンダーやキャリアガイダンスとの関連で論じられていた。最後に、認知された職業威信として、自分の職業に対する誇りの変数に焦点を当てた。いくつかの調査研究をもとに誇りの変数が、年齢や性別によって異なること、違反や事故と関連が見られる可能性があることなどを論じた。

[キーワード]
職業威信、安全性、ジェンダー、キャリアガイダンス

[要約・感想]
職業威信という概念を勉強しろ、と芳賀先生から薦められて読んだ論文。

とりあえず、「職業威信」という言葉の意味がよく分からなかったが、ようするに、「職に対する格付け」ということか。その職を「すごい」とか「格好いい」など「よいもの・のぞましいもの」と思っている程度のこと。

今回の論文はレビュー論文。

もともと職業威信は社会階層論で論じられていたもの。職による人々の格付けという人に対する観点が社会的に存在しているという文脈。それに対して、その格付けの存在が人々の個々人の行動・心理にどのように与えているかを論じることを「社会心理学的観点」とし、著者らの取る観点としている。

興味深い点を上げると、
1.職業威信はステレオタイプの一つであり、ある程度、各国間、世代間で固定されている。すなわち、子供たちは世の中に威信の高い職業と低い職業があることを大人の世代から学び、自分が大人になったときに次世代に伝達している。
2.職業威信は「社会的・一般的・統計的」に言われているものと、個人の実際の受け止め方としてのものとの2つの捉え方がある。具体的に言うならば、同じ収入・同じ威信の職業につく両者のうち、片方は自分の職業を高く評価し、もう一方は低く評価することがありえる。これは、個人個人の主観的な職業威信を反映しているといえる。
3.「自分の職業に対する威信」を「自分の職業に対する誇り」として定義すると、「職場や職業に対する誇り」は「自分の働きを通じて広く社会とつながっているという感覚と類似した意識」である可能性が既往研究から示されている。また、専門的職業では「仕事そのものが誇り」の源泉になっている可能性がある。さらに、l職場や仕事に対する誇り」は大きく3つの側面に分類できる可能性がある。すなわち「社会的に承認されることによって感じる誇り」「人々の生活を支えたり、幸せにできることによって感じる誇り」「自分で納得のいく仕事できることによって感じる誇り」の3つ。

特に、3つ目の点は、自分のこの間のアンケートの「働きがい・ほこり」の因子分析結果とも結構近い結果といえる。

2011年5月20日金曜日

介護福祉士の就労意欲に関する研究—佐世保市およびその近接地域の介護福祉士—

[タイトル]
介護福祉士の就労意欲に関する研究—佐世保市およびその近接地域の介護福祉士—

[著者]
北村光子、山崎久子、大江千恵子、綿祐二

[掲載]
長崎国際大学論叢, Vol.3, pp.185-193, 2003

[アブストラクト]
わが国は高齢社会に入りさまざまな社会問題や生活問題を抱えている。その中でも介護に関しては、施設介護や在宅介護に限らず注目されており、現場で働く介護職の量と質の向上に各方面から力を注がれている。
介護職の中でも、国家資格保持者である介護福祉士は、単に身辺介護にとどまらず専門性をもって、利用者をとりまく生活全般の改善・向上に努めている。しかし、このように介護の現場で専門の知識と技術を提供している介護福祉士の認知度や、過酷な労働でありながら業務の評価については決して高いと言えず、"やりがい"と"現実"の間でジレンマを起こしている状態である。よりよい介護を目指して、介護職のリーダー的役割を担う介護福祉士の職業意識や社会的地位、あるいは就労意欲について、もっと客観的に放火する必要があるといえる。
そこで本研究では、介護福祉士の現状を調査士、さらに介護福祉士の就労意欲に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする。調査の結果、就労意欲の現状においては、仕事面で「身体的負担」「精神的負担」を感じると就労意欲を欠き辞職を考えるようになるという結果を得た。また、その理由として「賃金の低さ」や「仕事内容のきつさ」「運営方針への不満」「社会的地位の低さ」などが挙げられた。
また、介護福祉士にとって、職場内に「良き理解者」が存在すると介護福祉士の「将来性」や「職に対する誇り」が得られるという結果を得た。この「良き理解者」についての詳細な記述はできなかったが、このことは介護福祉士の役割を多職種間で共有することの重みを現しているといえる。
今回の調査では、良き理解者が存在することが自己研鑽に直接結びつくという結果は得られらなかったが、もっと介護福祉士の就労意欲や社会的地位を向上させるためには、自己研鑽できる環境設定や講習内容の充実が必要と考える。

[キーワード]
介護福祉士、就労意欲、満足度

[要約・感想]
サンプル数が360もある中で相関係数の有意性だけからの分析をするのはどうかと思う・・・。

アブストラクトが結構詳しく書いているので、一文だけ引用。
「自分の気持ちや考えの理解者が存在することによって介護福祉士という資格に対しても誇りが持て、今まで習得した専門的技術・知識にも確信がもてるのではないだろうか」

2011年5月17日火曜日

スチュワードシップ理論に基づくNPOのマネジメントの検証

[タイトル]
スチュワードシップ理論に基づくNPOのマネジメントの検証

[著者]
柏木 仁、東出 浩教

[掲載]
ノンプロフィット・レビュー, Vol.5, No.1, pp.29-42, 2005

[アブストラクト]
本研究では,スチュワードシップ理論で示唆される組織運営に関する要因がNPOのパフォーマンスを向上させると仮説をたて,中規模NPOの中から無作為抽出した200法人に対して質問票調査を実施(回収率57%),定量分析により仮説の検証を行った.結果,スチュワードシップ理論を基に構築された要因は,パフォーマンスの中でも,特に,人材の成果といえるソフト・パフォーマンスの向上に寄与することが示された.具体的には,使命の共有はパフォーマンスの向上に最も強く貢献し,意思決定への参加,情報収集・能力形成は,ソフト・パフォーマンスと組織の効果性を高めることに強く寄与し,フィードバックは,ソフト・パフォーマンスの向上と会員数の増加に寄与していた.自律活動の奨励は,ソフト・パフォーマンスに加え,総収入の増加率,組織の効果性を高めることにも寄与していた.本研究は,中規模NPOにおける参加型マネジメントの検証となった.

[キーワード]
非営利組織, スチュワードシップ理論, 組織パフォーマンス, 従業員参加型の組織運営, 使命の共有、自己実現、内発的動機付け、成長、達成、パフォーマンス、愛着的コミットメント、組織市民行動、ジョブデザイン、
[要約・感想]
NPOのマネジメントについて論じたもの。
全体として、NPOを対象にアンケート調査をしている、という点がポイント。モデルや仮説自体は「NPOだから」という点はあまり反映されていない。
背景で結構まとまって、そこそこの内容をうまく説明している。このあたりは勉強になる。
特にスチュワードシップ理論なるものは初めて耳にした。

結果の面から行くと、パフォーマンスという点で「愛着的コミットメント」「組織市民行動」が挙げられている点、説明変数で「使命の共有」を挙げている点はなかなか面白い。また、「使命の共有」がこれらに強く影響を与えていることも示されている。
特に、NPOの組織メンバについてはこれが言えたということ。

多分、これは一般の組織でも言えることなんじゃないかなぁ〜。。。

精神科看護師のストレス要因とその対処行動

[タイトル]
精神科看護師のストレス要因とその対処行動

[著者]
野中 真由子

[掲載]
心身健康科学, Vol. 4, No. 1, pp.47-53, 2008.

[アブストラクト]
精神科看護師は,看護師のストレス要因に加え,精神疾患を抱える患者とのコミュニケーションの困難さ,患者の病状の把握や看護介入の困難さ,疾患の特徴から再発を繰り返しやすいという状態に起因するストレスがあると考えられる.また,精神疾患の多様化に伴い,ストレスは増強することが予想され,臨床で働く精神科看護師はその多様なストレスに柔軟に対処する力が必要となる.したがって,これまで以上に職場におけるメンタルヘルスが維持され,職業性ストレスを起こさない対策が求められると考える.
本研究では,精神科病院に勤務する女性の精神科看護師76名を対象にストレス要因とその対処行動の実態についてのアンケート調査を行い,有効回答72名を対象にt-検定を用いて解析した.この結果,仕事のストレス要因は『心理的な仕事の質的負荷』『身体的負荷』『職場環境』であった.対処行動では,ストレス要因の大きい群と小さい群の比較を行ったところ,ストレス要因の大きい群に『仕事や生活の満足度』が少なく,『回避的認知・行動』が大きかった.しかし,これは精神科看護師に特有な対処行動とは考えにくかった.そこで,サポート体制の大きい群と少ない群での比較をした結果,サポート体制が多い群に『活気』があり,『不安』『抑うつ感』が少なかった.
これらから,ストレス低減のための一つとして緩衝効果の高いサポート体制をより強化していくことが,ストレス要因が多い精神科看護師にとってもより健康的な対処行動を形成する上で有効であることが示唆された.

[キーワード]
精神科看護師, ストレス要因, 対処行動, ソーシャルサポート、ストレス・コーピング

[要約・感想]
精神科看護師のストレスについての研究。
なんとなく、あ〜そうなんだ〜、という感じ。
用いているストレス尺度は構成から見ると、先の感情労働の研究と同じ質問紙をつかっているのかな?

感情労働としての看護労働が職業性ストレスに及ぼす影響

[タイトル]
感情労働としての看護労働が職業性ストレスに及ぼす影響

[著者]
片山 はるみ

[掲載]
日本衛生学

[アブストラクト]
<Objective> : To clarify the effects of factors of emotinal labor, defined as the suppression of own emotions to better maintain other peoples' emotinal condition, on job-related stress responses among hospital nurses, the relationship between emotional labor and job-related stress was analyzed.

<Subjects and Methods> A self-reported questionnaires was distributed among 147 nurses of five hospitals in Japan. Complete answers were collected from 123 nurses (83.7%, 107 females and 16 males). Emotional labor was assessed by the Emotinal Labor Inventory for Nurses (ELIN) (26items), which consisted of five subscales, i.e., "suppressed expression." Job-related stress was evaluated using the Brief Job Stress Questionnaire (BSQ) consiting of 57 items. Stepwise mulitple regression analysis was performed to examine the relationships of stress (BSQ) with ELIN and job stressors (BSQ).

<Results> Subjects working in an inpatient department showed significantly higher total ELIN scores tha those working in an outpatient department. The stepwise multiple regression analysis showed the following: Scores on "anger" and "fatigue" in BSQ positively related to "suppressed expression" scoress in ELIN; those on "anxiety" positively related to "deep adjustmen" scores; and those on "depression" positively related to "surface adjustment" scores. Similarly, scores on negative stress responses (BSQ) such as "anger", "fatigue", "anxiety", "depression", and "somatic stress respons" positively related to scores on job stressors (BSQ), e.g, physical work load, whereas "vigor" scores positively related to "job worhwhileness"in BSQ.

<Conclusion>The aspects of "suppression expression", "deep adjustment", and "surface adjustment" of emotional labor seem to be the major occupational stressors for nurses, as well as job-related stressors measures by BSQ. Working in inpatient department appears to be a potent stressor for nurses.

[キーワード]
感情労働、職業性ストレス、病院看護師、メンタルヘルス

[要約・感想]
看護師を対象とした感情労働に関する研究。
序論部で感情労働について端的にまとめられており勉強になる。
調査結果からは、
(1)感情労働の一つである「表出抑制」(その場にふさわしくないと判断した感情を抑制する意識的な努力)は、イライラ感や疲労感などの複数のストレス反応に影響を及ぼす。
(2)同じく感情労働の一つである「深層適応」(患者にとって適切と判断する感情表現を意図的に喚起させる)や「表層適応」(その時々の状況に応じた表面的な対応をする)も看護師の負担となっている。
(3)一方で、「探索的理解」(対象の理解につとめる)と「ケアの表現」(ケア行動によって優しさなどの感情を伝える)はストレスとは結びつくとはいえない。
ということが分かった。

なんとなく、感情労働は接客業の現場に出る車掌や駅員が当てはまるが、それ以外でも、現場の管理層も当てはまるのではないか。

組織の心理的問題改善への意識調査の寄与に関する一事例

[タイトル]
組織の心理的問題改善への意識調査の寄与に関する一事例

[著者]
高原 龍二

[掲載]
産業衛生学雑誌, Vol.52, No.1, pp.28-28, 2010.

[アブストラクト]
組織における心理的問題への対策のために用いられる意識調査は、対策が必要であるかを検証することと、必要であるならばどういった点が問題の要因であるのかを数量的に明確化することで組織的判断の材料とすることが主な目的といえる。本稿では、組織の心理的問題への対策の必要性を明らかにし、有効な対策へのヒントとなるように、共同調査項目と組織特有の問題や対策についての独自項目を組み合わせた意識調査を受託し、対策後にその有効性を確認するために経年調査を行った事例を報告する。従業員の負担感が高く、精神疾患求職者数が多い大手メーカー系企業の地方工場にて、労働組合を通じてヒアリングを行い、その結果に基づいて設計した項目を含んだ質問紙調査を行った。共同調査項目を用いた分散分析からは、従業員のメンタルヘルスや労働意欲が優位に低いことが示され、多母集団同時分析による意識構造の比較や、独自項目との相関からは、人の入れ替わりの激しさや指揮系統の混乱といった該当組織特有の状況の中で、仕事量の多さと雰囲気の悪さによって人間疎外的な状況が形成されていることが示された。結果は労働組合によって経営陣に伝えられ、労使での対策が実施された。一年後、労使での対策を項目化したものを加えて再調査を実施し、対策の検証を行った。分散分析からは優位な改善が示され、経年対応させたアグリゲート・データを用いた銃回帰分析からは、労使での対策の一部が有効であった可能性が示唆された。本事例のように、調査の受託主体と対策の主体が異なる場合、組織的判断への資料の効果性の確認のために、調査設計や統計的分析を工夫して、実証的に組織の実態を提示することは有益な手段であると考えられる。

[キーワード]
アクション・リサーチ、メンタルヘルス、分析手法、労働環境

[要約・感想]
アクションリサーチ→質問紙の設計→アンケート実施→分析→結果のフィードバック・・・・(現場による改善)・・・・>経年比較による改善の効果検証
という流れを示した論文。面白い。
特に、職場のメンバのモチベーションやメンタルヘルスにはこういった手続きが基本的な流れとなるということ。
自分自身の研究も基本的にこういう流れになるということだろう。勉強になる。

「働きがい」という点では、Deciの内発的動機づけや、仕事の楽しさ、メンタルヘルス、職業ストレス、有能感、自己決定といった文脈で捉えている。

労使双方向によるモチベーションの向上と働きがいのある企業に関する研究

[タイトル]
労使双方向によるモチベーションの向上と働きがいのある企業に関する研究

[著者]
冨士村 里彩、小野田 清香、西崎 雅仁

[掲載]
経営情報学会2010年秋季全国研究発表大会発表要旨集, pp.2-5, 2010

[アブストラクト]
日本企業は、成果主義をどうにゅうすることで、日本的経営の特質を自己否定し国際協力を弱める結果となった。その結果、新たな人的管理システムを考察する時期に来ている。そこには、労使が協調し、働きがいのある企業を目指す必要がある。そのキーワードとなるのが、モチベーションである。更なる女性の社会進出のためにはワーク・ライフ・バランスの必要性は増している。従業員の質を向上させることと、企業の利益を挙げることはトレードオフ関係ではない。老若男女が健康で意欲的に高付加価値のサービスを生み出すために、企業がすべきこととは何かを考察する。

[キーワード]
働きがい、モチベーション、メンタルヘルス、ワークライフバランス、女性の社会進出

[要約・感想]
う〜ん、、、、

学部生のゼミ発表レベルのもの。。。

なぜ突然、女性の社会進出の話がでてくるの??

他団体における生涯学習システム

[タイトル]
他団体における生涯学習システム

[著者]
金子 誠喜

[掲載]
埼玉理学療法, Vol.2, pp.49-53, 1994.

[アブストラクト]
None

[キーワード]
専門職、生涯教育、生涯学習、看護、医療、

[要約・感想]
専門職として、社会の変化、技術の変化に合わせて、自分自身のスキルを磨き続けることの必要性を述べたもの。
専門職だけでなく、あらゆる職業においても言えることのような気がする。
おそらく鉄道会社の管理部門みたいなところでも同じだろう。

ちょっと「生涯学習」という言葉のイメージが変わったかも。前までは、高齢者のリタイア後の学びをイメージしていた。

専門職の生涯学習か・・・。

「生涯学習は・・・医師としての社会に対する責務である」という文言はすごく重いね。

働きがい、という点では、職業能力の向上を通して、社会に貢献し、それによって自己の充実や啓発、生活上の向上、人生の豊かさを図るという捉え方が見え隠れする。

組織における個人の転職行動に関する諸モデル

[タイトル]
組織における個人の転職行動に関する諸モデル

[著者]
武田圭太

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.25, No.2, pp.163-170, 1986

[アブストラクト]
None

[キーワード]
転職、職務満足、

[要約・感想]
転職行動の理解のためのモデルのレビュー論文。
転職行動を研究する上では勉強になるのかも。。。

FW: 仕事の特性とワークモチベーション

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Tuesday, May 17, 2011 9:24 AM
To: '論文DB'
Subject: 仕事の特性とワークモチベーション


[タイトル]
仕事の特性とワークモチベーション

[著者]
田尾雅夫

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.18, No.1, pp.1-9, 1978

[アブストラクト]
百貨店の従業員 (n=369) における仕事の特性とワークモチヴェーションの関係が, Hackman & Lawler (1971) の枠組にもとずいて分析された。とくに, いわゆる成長欲求のようなより高次のニーズの, それらの関係におよぼす媒介的な効果について検討された。
得られた結果は, ほぼ従来の知見を支持するものであった。つまり, 仕事の特性はワークモチヴェーションと有意な相関関係を示した。そして, 成長欲求の強い従業員では, いくつかの仕事の特性次元とモチヴェーション変数との関係が有意に高いことが示され, 仲介的効果が実証された。しかし, 従来の欧米の研究と比べて, その差は著しいものではない。
加えて, ワークデザィンにおける方法論的な問題が提起された。すなわち, 1) 充実化された仕事に対する反応の個人差に配慮した時, 仕事の複雑さを1つの尺度にまとめることは難かしいこと。2) 人間関係に対する満足感と仕事の複雑さに対する積極的な反応は逆の関係を示す傾向がみられること。つまり, 仕事の特性のワークモチヴェーシ藝ンに対する効果は, そのコンテクストを無視しては得られないことを意味している。3) 公平感のように, 直接仕事の特性とは関係しないにもかかわらず, 仲介的効果を示す外部的な要因が存在しうることなどである。
今後の課題として, 仲介変数などの概念をより明確にしながら, より広範な職種について, 仕事の特性とモチヴェーションの関係の比較検討をおこなうべきである。

[キーワード]
モチベーション、職務満足、職務設計論、職務充実、Hackman & Lawler、

[要約・感想]
ハックマンの職務設計論を基本的枠組みとして、京都の百貨店従業員を対象に調査した研究。書籍「仕事の革新」のベースになっている研究。
付録で質問項目がすべて挙げられているのは参考になる。

「働きがい」という点では「ワークモチベーション(モチベーションと有意味感)」と「外部的要因への満足感(上司との人間関係、同僚との人間関係、公平感、企業との一体感)」を挙げている。

今となっては古典だな・・・。

なお、Hackman & Lawlerが職務特性としてあげている「多様性」「自律性」「仕事のアイデンティティ」「フィードバック」の4項目を「仕事の認知的な特性」と言っている点は興味深い。田尾先生もこれらが「認知」であって、「仕事そのものの本質」ではないということを理解していたということ。
「認知」であった場合には、これらを高めることは「認知を変えること」なので、「本質的にそういうものを付け加える」というよりも信念の改変→説得的アプローチが必要だということ。

仕事の特性とワークモチベーション

[タイトル]
仕事の特性とワークモチベーション

[著者]
田尾雅夫

[掲載]
実験社会心理学研究, Vol.18, No.1, pp.1-9, 1978

[アブストラクト]
百貨店の従業員 (n=369) における仕事の特性とワークモチヴェーションの関係が, Hackman & Lawler (1971) の枠組にもとずいて分析された。とくに, いわゆる成長欲求のようなより高次のニーズの, それらの関係におよぼす媒介的な効果について検討された。
得られた結果は, ほぼ従来の知見を支持するものであった。つまり, 仕事の特性はワークモチヴェーションと有意な相関関係を示した。そして, 成長欲求の強い従業員では, いくつかの仕事の特性次元とモチヴェーション変数との関係が有意に高いことが示され, 仲介的効果が実証された。しかし, 従来の欧米の研究と比べて, その差は著しいものではない。
加えて, ワークデザィンにおける方法論的な問題が提起された。すなわち, 1) 充実化された仕事に対する反応の個人差に配慮した時, 仕事の複雑さを1つの尺度にまとめることは難かしいこと。2) 人間関係に対する満足感と仕事の複雑さに対する積極的な反応は逆の関係を示す傾向がみられること。つまり, 仕事の特性のワークモチヴェーシ藝ンに対する効果は, そのコンテクストを無視しては得られないことを意味している。3) 公平感のように, 直接仕事の特性とは関係しないにもかかわらず, 仲介的効果を示す外部的な要因が存在しうることなどである。
今後の課題として, 仲介変数などの概念をより明確にしながら, より広範な職種について, 仕事の特性とモチヴェーションの関係の比較検討をおこなうべきである。

[キーワード]
モチベーション、職務満足、職務設計論、職務充実、Hackman & Lawler、

[要約・感想]
ハックマンの職務設計論を基本的枠組みとして、京都の百貨店従業員を対象に調査した研究。書籍「仕事の革新」のベースになっている研究。
付録で質問項目がすべて挙げられているのは参考になる。

「働きがい」という点では「ワークモチベーション(モチベーションと有意味感)」と「外部的要因への満足感(上司との人間関係、同僚との人間関係、公平感、企業との一体感)」を挙げている。

2011年5月16日月曜日

QWLとIE

[タイトル]
QWLとIE

[著者]
八巻 直躬

[掲載]
日本経営工学会誌, Vol. 27, No.3, pp.226-230, 1976.

[アブストラクト]
現在世界の工業化社会で, 組織における「人間疎外」が注目され, 一般に「働く生活の質(Quality of Working Life-QWL)」の問題として研究されている.本稿では, この問題を「生きがい」, 「働きがい」の問題として解説し, IEの立場からの解決のアプローチとして, 新しい職務設計の基本的考え方, 現在試行されている小集団活動, 職務拡大(job enlargement), 職務充実(job enrichment), 自主管理方式について, その内容と限界および今後の課題を概説する.

"Humanization of work" is drawing more and more attention of the industrialized societies of the world today. The problem is discussed under the subject of "Quality of Working Life-QWL." In this paper, the nature of the problem is reviewed from the standpoint of industrial engineering and a new concept of job design is discussed as an approach to the problem. Along with the basic concept of job design, the plans which are currently tried out in Japanese industries; namely, "small group activities, " "job enlargement, " "job enrichment, " and "self-management plan, " are outlined. Their limitations so far experienced and future tasks expected in this area are also discussed.


[キーワード]
働きがい、ハーズバーグ、Quality of Working Life、

[要約・感想]
「働きがい」を経営工学における「労働の人間化」の文脈で、QWL(Quality of Working Life)と結び付けて捉えている。より具体的には、人間は本質的に「自由、創造、成長というよう内在的欲求」などのハーズバーグが述べている動機付け要因への欲求を持っており、これらが満たされることで「生きがい」「働きがい」を感じると述べている。より具体的には、「作業者自身が、作業自体のほかに、自分の仕事の計画、目標の設定、および目標を基準とする統制を行うことによって、仕事の達成感を味わい、働きがいを感じるような仕事の与え方をしなければならない。・・・作業者自身が自分の仕事について、plan-do-seeのサイクルに従うようにすることである。またそれによって、作業者のモラルが向上し、生産性が上がることが期待されるのである」と述べている。これは「働きがい」を目標管理と結びつけて捉えていることを示していると考えられる。
なお、「働きがい」を向上させるための手法として挙げられているものは、当時の論壇の様子を反映して、「小集団活動」「職務拡大」「職務充実」「自主管理方式」を挙げている。ただ、これらの中での論説では、今でも当てはまるようなものもあると思う。
(1)小集団活動では、作業者同士の「グループ討議」が行われる。
(2)小集団活動では、グループ間の活動や成果に格段の差が見られる。活発なグループの中でも、形式的、消極的に参加しているに過ぎない人が散見される。といって、その人々を除外することは、人事管理上いろいろな問題の根源になる。
(3)最近多くなったパートタイマーなどには、職務拡大や、職務充実による挑戦に立ち向かって、働きがいを感じようとする気風は少ない。

生きがい・働きがいの構造(II)—実態調査を通してみた—

[タイトル]
生きがい・働きがいの構造(II)—実態調査を通してみた—

[著者]
安藤 喜久雄

[掲載]
駒澤大學文學部研究紀要 35, A115-A159, 1977

[アブストラクト]
None

[キーワード]
働きがい、生きがい、

[要約・感想]
全体として感じたこと。
(1)Short−LengthとLong−Lengthということで「生きがい・働きがい」を2段階に分けて、「生きがい・働きがいとはどのようなもののか」「何に生きがい・働きがいを感じるか」というものをLong−Lenght、「生きがいを感じるときは主にどんなときであるか」をShort−Lenghtとおいている。この視点は重要。自分の研究でも、このいずれを採用するかをポイントとしている。

(2)生きがい・働きがいが損なわれると、その人の興味そのものが仕事に向かなくなり、「仕事を良くしたい」という考えが出てこなくなる。さらに、余暇の過ごし方についても積極的な過ごし方をしたいとは思わなくなり、全人的な活力の低下をもたらしている様子が描かれている。
←特に、「P.131:「仕事への不満感」の高さにもかかわらず「やりがいのある仕事をしたい」という欲求に見られるように仕事や社会に対する欲求はあまり強くなく、また、休養とか遊びに対する欲求も低い傾向にある」という行から。

・・・
結局、結論が見えてこない論文。要するに何がいいたいのかをまとめてくれていない。
結局データを語っただけで、データをもとに、この人は何を考えたのだろうか??

生きがい・働きがいの構造

[タイトル]
生きがい・働きがいの構造

[著者]
安藤 喜久雄,和田 光一,田草川 僚一

[掲載]
駒沢社会学研究, Vol.8, pp.1-16, 1976

[アブストラクト]
None

[キーワード]
生きがい、働きがい、欲求、マズロー、

[要約・感想]
前半は研究の中での仮説モデルの説明。後半はマズローなどの諸知見の整理。
「生きがい」「働きがい」をどのようなものと捉えているか、という点では具体的に定義がなされている(別の良く知られた概念で捉える)わけではないが、個人が持っている欲求・価値観・志向性・かかわり方の結果に対する自己評価の結果の表現(感情的反応・行動的反応)と捉えている。
具体的には、C次元がポジティブ(P)であった場合、「安心感・充実感・満足感や達成感等の主観適所帰結をもたらし」、Nであった場合、「それは不安感・不満感・疎外感や挫折感等の主観的帰結をもたらす」を述べている。さらには、Pであった場合、上記のようなEmotionalな反応と共に、行動的反応としてポジティブなら「目標及び欲求の達成ないし充足、個人の志向するか価値の実現と維持に対して、そのかかわり方の姿勢を活性化させ(積極的・意欲的・活動的に対象にかかわろうとする)てくる」。ネガティブなら「そのかかわり方の姿勢を非活性化させ(消極的・無気力的・非活動的に対象とかかわろうとし、極端な場合には無関心や拒否ないし拒絶等を生み出す)てくる」。

欲求から環境を媒介として自己評価が行われ、それに対する主観的・行動的反応という流れを単純な因果関係ではなくて、フィードバックループを持ったダイナミックなプロセスとして描いている。

A次元:          
欲求・価値観        ←−−自己の再評価−−−−┐
(志向性・かかわり方)                     |
↓                                 |
B次元:                              |
生活環境          ←−−環境の再評価−−−−┤  
ないし                               |
産業労働環境                          |
↓                                 |
C次元:                              |
自己評価                             |
(志向性・かかわり方の結果)                 |
(および、環境評価)                       |
(P) or (N)                            |
↓                                 |
D次元:                              |
自己評価の結果                         |
(P)→・生きがい・働きがいの実現・達成          |
(N)→・生きがい・働きがいの喪失              |
変容・修正   −−−−−−−−−−−−−−−−−┘

後半では主にマズローの著書を整理している。
そのなかでも以下のような行がある。
「・・・こうした表出行動にともなう精神状態をマズローは、海洋的フィーリングと呼び、「果てしない水平線が眼前に開けた感じ、いままでになく強くなったと同時に力が抜けてしまったという感じ、大きな恍惚、驚愕、畏敬の感じ、時と所の忘却、そして最後に、なにか極度に重要で貴重なことがおきたという確信」であると描写している。・・・これがわれわれが問題とする"生きがい"すなわち、"さわやかさ"であると思われる。」
ちょっと、宗教的というか哲学的というか幸福論が混じっている感じがするが、仕事の中でそういうものを感じている状態を「働きがい」を感じている状態と見ているということだろう。まあ、要するに自己実現。

勤労者のQuality of Life(働きがい感)とライフスタイル・健康度との関連性

[タイトル]
勤労者のQuality of Life(働きがい感)とライフスタイル・健康度との関連性

[著者]
丸山 総一郎、佐藤 寛、白川 太郎、三浦 邦彦、森本 兼曩

[掲載]
産業医学, Vol.32, No.2, pp.150-151, 1990

[アブストラクト]
None

[キーワード]
働きがい、QOL,Quality of Life、ライフスタイル、健康度

[要約・感想]
先の論文とまったく同じ内容。

勤労者の働きがい感とライフスタイル・精神的健康度との関連性

[タイトル]
勤労者の働きがい感とライフスタイル・精神的健康度との関連性

[著者]
丸山 総一郎, 森本 兼曩

[掲載]
丸山 総一郎, 森本 兼曩:" 勤労者の働きがい感とライフスタイル・精神的健康度との関連性", 心身医学, Vol.30(抄録), p.146, 1990

[アブストラクト]
None

[キーワード]
QOL、Quality of Life, 働きがい

[要約・感想]
先の論文と同じ。あまり面白くない。

メンタルヘルスとクオリティ・オブ・ライフ(QOL)に関する予防医学的研究 : (第2報)労働者の働きがい感(QOL)とライフスタイル・メンタルヘルスとの関連について

[タイトル]
メンタルヘルスとクオリティ・オブ・ライフ(QOL)に関する予防医学的研究 : (第2報)労働者の働きがい感(QOL)とライフスタイル・メンタルヘルスとの関連について

[著者]
丸山 総一郎, 森本 兼曩

[掲載]
産業医学, Vol.33, No.7, p.723, 1991

[アブストラクト]
None

[キーワード]
働きがい、QOL、Quality of Life、抑うつ度、メンタル・ヘルス

[要約・感想]
労働者の働きがい感をメンタルヘルスの観点からQuality of Life (QOL)と捉え、さらに、抑うつ傾向との関連性を見出している。

FW: 行動随伴性から見た社会人の働きがい

-----Original Message-----
From: 藤野 秀則
Sent: Thursday, May 12, 2011 6:08 PM
To: '論文DB'
Subject: 行動随伴性から見た社会人の働きがい

2回目に読んだら、結構いいことを書いている。

すなわち、「働きがい」を感じる人では、「直接仕事に関係する作業をすること」「ほめ言葉」「人が喜ぶ姿」が影響を与えているということが示されている。
この「直接仕事に関係する作業をすること」という点がポイント。つまり、その人が「これは自分の仕事」と思っている仕事については、その仕事に関わる作業に対してはモチベーションが高く、その作業をすることそのものへの満足度が高い、ということ。

一方、「家庭と仕事の両立にやりがいを感じる」という点については、「働きがい」という点ではなく、「生きがい」という点、生きることへの満足感、自分の人生への満足感というまた別の(一段上の?)満足感で捉えているということだろう。

2011年5月13日金曜日

高齢者の働きがいの行動分析

[タイトル]
高齢者の働きがいの行動分析

[著者]
長谷川 芳典

[掲載]
日本行動分析学会第17回年次大会発表論文集, pp.108-109, 1999.

[アブストラクト]
None

[キーワード]
高齢者 働きがい モチベーション 行動随伴性

[要約・感想]
高齢者の働きがいをテーマとして、ヒアリング調査を行っている。その中では「人生をよりよいものとする」という観点からの要因(たとえば、「体を動かすこと健康によい」「小遣い稼ぎによい」など)からくる仕事へのモチベーションが主に語られているが、仕事そのものと関連するものとして「行動に対して行動内在的な結果が直後に確実に随伴する労働」という点が高齢者の「働きがい」要因としてあげている。これは達成感に関わるものと考えられる。

上司による効果的なほめ方・叱り方等に関する研究(II)—ほめ・叱りに対する上司—部下間の認識のギャップとその影響—

[タイトル]
上司による効果的なほめ方・叱り方等に関する研究(II)—ほめ・叱りに対する上司—部下間の認識のギャップとその影響—

[著者]
堀下 智子、金山 正樹、山浦 一保

[掲載]
産業組織心理学会第24回大会発表論文集, pp.17-20, 2008.

[アブストラクト]
Non

[キーワード]
ほめ 叱り 関係性 上司 部下 ギャップ 安全意識

[要約・感想]
(1)運転士の「現実にほめられた経験」が多いほど係長への評価が高いことから、上司のほめは上司部下の関係によい影響をもたらす。
(2)運転士は「ほめられるに値するのに、ほめられていない」、しかし係長は「ほめているつもり」という認識のギャップの存在
    → ほめのポイントのずれ が現実にあるのかもしれないし、実際には褒めてるんだけど、褒めてもらっているとは思っていないということがあるのかもしれない。
面白い結果。

上司による効果的なほめ方・叱り方等に関する研究(I)—上司-部下間の関係性の観点からの実験的検討—

[タイトル]
上司による効果的なほめ方・叱り方等に関する研究(I)—上司-部下間の関係性の観点からの実験的検討—

[著者]
山浦 一保、堀下 智子、金山 正樹

[掲載]
産業組織心理学会第24回大会発表論文集, pp.13-16, 2008.

[アブストラクト]
None

[キーワード]
ほめ 褒め 関係性 上司 部下

[要約・感想]
まとめると、、、

上司—部下の関係性がよい場合には、
(1)ポジティブなフィードバックを受けると、普段の関係性と一致しているので、部下は上司との安定的な相互作用を確証でき、結果として、部下は職務に集中しモチベーションが高まるだろう。
(2)なんらのフィードバックも受けないと、普段の関係性と一致しないので、部下は上司に対して疑念や仕事に対する方向性の曖昧さを感じ、結果としてモチベーションを低下させるだろう。場合によっては、自分の仕事のパフォーマンスに対する上司の関心や期待の低下を感じ、暗黙の叱責を受けた気分になるかもしれない。
一方、関係性が低い場合には、
(1)ポジティブなフィードバックを受けると、普段の関係と一致しないので、上司の対応が一貫していないと認知し、部下のモチベーションを向上させることはないだろう。場合によっては低下させることになるかもしれない。 (※ちょっと、ここでモチベーションが低下するプロセスは、もう少し理論的な結びつきが必要な気がする。なぜ、上司の対応が一貫していないと、モチベーションが下がるのか、の因果の関係のピースが足りてない気がする)
ということが考えられる。
そこで、このことが成り立っているかを確認するための実験を行った。
実験の結果、良好な関係を築いているからこそ、上司は部下の日ごろの努力や取り組みに即して評価しなければ、その部下の熱意や継続的な責任感を低減させること、暗黙のうちに叱責を受けた気分にさせてしまうことが認められた。また、褒め行動の効果を十分に発揮するためには、関係性が良好に保たれていることが必要条件であるといえる。

2011年5月12日木曜日

「働きがいを育てるCSRコミュニケーション」—CSRコミュニケーションが従業員の働きがい、および企業文化醸成にもたらす価値形成—

[タイトル]
「働きがいを育てるCSRコミュニケーション」—CSRコミュニケーションが従業員の働きがい、および企業文化醸成にもたらす価値形成—

[著者]
宮田 穣

[掲載]
相模女子大学紀要. A, 人文・社会系 70, 31-43, 2006

[アブストラクト]
This report clearly demonstrates through two surveys and two case studies that proactive efforts in CSRby a corporation leads to the activation of internal communication activities, revitalizes employee labor, and leads to the development of corporate culture which looks ahead to the future generations.
In paticular, the analysis focuses on how concepts of values of individual employees can be qualitatively changed by communication, and highlights the importance of a communication style that shares "narratives" in the organization along with development steps of sharing the information and concept of values in the oranizaion.

[キーワード]
CSR, Mental Health, Narrative, employee Communication, Corporate Culture

[要約・感想]
「CSRに関して、従業員同士てコミュニケーションを行うことによって、従業員の働きがいを向上させると共に、企業文化にCSRの内容を価値観として浸透させる」ということを論文の核として論じている。論文の流れとしては、現状の問題点を調査し、その結果分かった課題に対して「こうすればよいのではないか」ということを検討する、という流れ。

(1)要するに、CSRを果たすとは、環境レポートとか地域貢献といった部分だけを取り出すのではなく、「仕事の社会的価値」「そもそも何のために働いているのか」を十分に理解・浸透させることである。

(2)CSRの取り組み・浸透に関する調査の結果、現状では従業員の意識レベルは「自社の基本方針や姿勢が理解、共有化されているレベル」にとどまっており、「CSRと日常業務との関わり」への理解や共有、「CSRを意識した業務遂行」までは至っていない。また、CSRをテーマにした会議が多くなったり、問題がおきたときにCSRの視点からの検討もなされるようになっているが、まだ始まったばかりであり、人によって知識もレベルが違う、という現状が明らかになった。

(3)CSRのための議論をすることによって企業組織と外部社会との関係の認識と認識の再構築やコミュニケーションが促進されること、従業員自身の働き方や生き方への再考を促す契機となること、それを通じて「従業員の企業との関係の再構築、および自己発見」が起こるという効果が期待できる。ただ、その効果を起こすためには、上記の現状を改善していかなければならない。そこでは、「従来から続いてきた価値観とそれに基づく関係(従業員と企業)を引きずりつつ、新たな関係構築を内包しながら、いかに質的転換を図っていくか」が課題となる。

(4)本論で提起するのは以下のフェーズのどれにいるかを意識したうえで、それぞれを実現する上でのコミュニケーション(CSRコミュニケーション)の姿を具現化することである。
「従業員が自社のCSRの考え方や取り組み状況を情報として共有化する」フェーズ
  ↓
「それぞれの仕事とCSRとの具体的な繋がりを明確にし、それを理解し納得する」フェーズ
  ↓
「CSRをということを意識しなくても、働き方そのものにその企業が考えるCSRそのものがすでに内在している」フェーズ
具体的には第1フェーズでは、「情報の共有化」「従業員の認識の統一」のための「教養的コミュニケーション」が求められる。第2フェーズでは、従業員個々の仕事の関わりを踏まえながら、その場その場で納得いくまで価値観を議論しあう「教育的なコミュニケーション」が求められる。第3フェーズでは「お互いの仕事のありようをごく自然にやり取りする中で、お互いを認め合い、価値観を改めて確認しあう「理想的なコミュニケーション」が求められる。

(5)さらに加えて、ナラティブを活用したコミュニケーションが効果的と期待される。ナラティブによって共感、感情移入、想起、想像といったプロセスにより伝えたい内容が膨らみ、ときに伝え手の構想委譲の内容が高い納得とともに伝わることがある。

介護と"看護"の視点からの「ケアの連携」に関する考察

[タイトル]
介護と"看護"の視点からの「ケアの連携」に関する考察

[著者]
榊原 和子

[掲載]
四条畷学園短期大学紀要, Vol.40, pp.19-29, 2007

[アブストラクト]
21世紀に入った日本は、少子・高齢化という2つの問題を同時に抱え、国民的課題として個々人が様々な負担を強いられている。我々の最大の関心事である健康についても、老後の生活や健康に直接的に関係している厚生年金や健康保険などの見直しが進み、平成12年に導入された介護保険も2005(平成17)年から見直され、2006年度(18年度)から実施されることになった。特記することとして、新予防給付及び新たなサービス体系の確立などが挙げられ、「医療と介護の連携」を強化した内容になっている。人間がこの世に生を受け健康を享受し、心身ともに豊かな生活をおくり死に至るまでのあいだに保健・医療及び福祉は欠くべからざるものであり、一人の人間の一生の過程で常に何らかの関わりを持っている。"ケア"という言葉を共有する"看護"と"介護"の立場で、それぞれが「健康的で尊厳ある生活」を質・量共に保障し、連携を深めながら役割と責任を果たす意義を確認する。また、2006(平成18)年7月に取りまとめられた厚生労働省社会援護局福祉基盤課による「これからの介護を支える人材について-新しい介護福祉士の養成と生涯を通じた能力開発に向けて-」検討委員会報告があり、介護福祉士をめぐる状況の変化や魅力と働きがいのある職場づくりについて今後の方向性と課題が提示されていることなどを含め、「医療と介護の連携」について考察する。

[キーワード]
健康, ケア, 尊厳ある生活, 看護と介護, 介護保険

[要約・感想]
介護職の現状を展望した論文。特に新しいものを報告した論文ではない。
論文の中で「介護職のコンピテンシー」が示されている。
また、プロフェッションについても触れられている。このあたりは参考となる。

「自分をみつめなおすゆとり」か・・・。

働きがいという言葉の捉え方という点では、「魅力と働きがいのある職場づくり」という言葉を用いている。さらに論文の中では、「高いといわれる離職率」といった言葉や、「関心・興味及びモチベーション」「やりがい」という言葉を出している。「やりがい」については、以下のような行がある。「「知」は普遍的な知の体系で、「知恵」は、正しく物事を認識し判断する能力、正しく判断する心の働きである。今の若者は活字離れや読解力不足などさまざまな言い方をされるが、時間をかける事によって知識が知恵になり、仕事に従事する過程で物事を成し遂げることのできる力、すなわち「能力」が身につき仕事に自信と誇りを持つことができ、やりがいに結びつくと考える。」この行から、まずは職務遂行能力を身につけることが必要であり、それが身につくことによって仕事における自身のパフォーマンスに対して「自信」と「誇り」を持てるようになり、それによって「やりがい」がもてるようになる、という流れを想定していると考えられる。加えて、「魅力と働きがいのある職場づくり」を英文アブストラクトでは" the improvement of work place to make it a more attractive profession"と記述している。"profession"は論文中では「(1)誰にでもできない職業であること(厳密な資格制度と養成制度)、(2)仕事をする上で、個人あるいは職業集団の大幅な自主性・自律性があること(仕事をする上で、あれこれ指揮命令を受けない)」と説明されている。このことから、「自主性・自律性」といった言葉も「働きがい」と関連したものとして捉えられていると考えられる。

2011年5月11日水曜日

目標管理の効果的運用—管理機能としてのモチベーション—

[タイトル]
目標管理の効果的運用—管理機能としてのモチベーション—

[著者]
中村 悦子、瀬賀 裕子

[掲載]
新潟青陵大学紀要, Vol.7, pp.131-143, 2007.

[アブストラクト]
アメリカの経営学者、ドラッカーによる「目標と自己統制による管理」が1954年に提示され、日本への導入は1960年より始まった。医療機関における目標管理の導入は、多くは看護部門主導で進められ、専門職としての看護職員の自己実現を支援し、組織の目標を達成するという目的で行われた。導入の目的は、(1)職員の意識改革、(2)職場風土の活性化、(3)能力開発、(4)師長と武官のコミュニケーションの促進、(5)働きがいの向上などである。目標管理の導入の実態から、肯定的要因、否定的要因を明らかにすることができた。その結果、看護管理者が、管理機能として職員のモチベーションに関わることの重要性を確認することができた。

[キーワード]
目標管理、モチベーション、看護職員、管理機能、人事考課

[要約・感想]
看護職に対する目標管理における心理プロセス(目標管理によって達成感ややる気が高まる肯定的プロセス、やらされ感が高まる否定的プロセス)を、ヒアリング調査から描いている。モデルはなかなか面白い。
後の考察においては、まあ、一般論を書いている程度。研究というよりは解説・論説といったところか。
目標管理を成功させるための看護師長の役割の中であげている、看護師長に求められている点というのはなかなか興味深い。
(1)目標管理導入の目的を伝える
(2)組織の理念・方針を職員と共有する。
(3)面接技法を身につける
(4)職員に目標を意識させる

個人的には、「目標設定の技術」というのもあるように思う。
曖昧にしか目標をかけない、書こうとしないメンバ。
書類に起こすのを面倒くさがるメンバ。
書類に書き起こすのが苦手なメンバ。(語れるけど、書けない)
そういう部分が結構あるんじゃないだろうか・・・。

最後に、インセンティブに対しては従業員の信頼性と納得性という言葉がでている。
ようするに、適正に評価される仕組みがあるか(適性に評価されるんだ、という期待・信頼が持てるか)と、実際に評価されたと思えるか(納得)が人事考課上のポイントとなっているということだろう。

なお、「働きがい」という言葉で引っかかったのだが、実際には、中村ら自身は「働きがい」という言葉をそれほど大きく取り上げているわけではない。

アメリカ型成果主義の導入とコンピテンシー—個と集団の調和—

[タイトル]
アメリカ型成果主義の導入とコンピテンシー—個と集団の調和—

[著者]
岡本 英嗣

[掲載]
目白大学経営学研究, Vol.7, 55-67, 2009

[アブストラクト]
日本の主要企業はアメリカ型成果主義の導入によって幾多の問題に直面しており、今なお試行錯誤が続けられている。その結果、多くの従業員は働きがいを喪失させている。そこで本稿は、企業で取り組まれている成果主義の現状と問題点を実装事例や調査事例等によって分析し、働きがいある職場環境をはぐくむためには、どのような雇用システムを採用すべきであるか、これについて考察するものである。
今までの研究成果(岡本c,2008)から「働きがい要因」を組織にかもし出すためには、伝統的な日本的経営よりも成果主義の方が優れていることを明らかにした。しかし企業の現場では第1に従来からの日本的経営とその後の新しく導入した成果主義との二重構造になっているのが現実である。第2に成果主義が導入されて以来、個人と集団の葛藤がみられ、これを如何に調和させていくかが大きな課題となる。同じく第3に成果主義を単なる仕事の「結果」ではなく、その従業員の組織での活躍の程度、プロセスでの役割、能力、資格などの客観的評価によって総合的に評価する方策が考えられる。
このように個人の成果を総合的に捉えて報酬を決めていこうとするのがコンピテンシーである。これを推進するためには社内外の教育訓練による自己啓発支援システムの設置が必要不可欠であると考えられある。

[キーワード]
働きがい、自己啓発支援システム、成果の総合評価、コンピテンシー、教育訓練

[要約・感想]
全体としては、根拠に乏しく、あくまで「説」を唱えているだけに見える論文。
ただ、内容そのものは示唆を与えてくれる。
特に賃金体系の歴史やコンピテンシーのまとめは参考になる。
研究の問題意識は
「成果主義は原則的にはよいのだが、今までの見える成果だけを評価したり、個人主義で仕事をしたりするのを助長してしまった。大切なのは「成果を出す能力」を評価することである、それはどのようなもので、それを伸ばすにはどのようにすればよいか」
ということ。その流れでコンピテンシーが紹介されている。

なお、「働きがい」という言葉に関して、この論文では、モチベーションを高めるものを「働きがい要因」という呼称をしている。具体的にその内容は、(1)業績を反映した賃金システムの存在、(2)その職場での良好な人間関係、(3)直属の管理者の思いやりのある態度、(4)責任ある仕事が与えられ、その成果に達成感がえられていること(5)個人の仕事の成果についての適正な業績評価と適正な報酬が実際にあたえられること、の5つを挙げている。なお、(1)と(5)は似ているが、(1)はそういうシステムが存在していること、すなわち(5)に対する期待がもてることを示しており、(5)は実際にそれら得られたことによって得られる満足感を指しているものと考えられる。

「やりがい」の制御変数:大学生を対象とした探索的実験

[タイトル]
「やりがい」の制御変数:大学生を対象とした探索的実験

[著者]
島宗 理、宇佐美 徳真

[掲載]
日本行動分析学会第28回年次大会発表論文集, p.76

[アブストラクト]
none

[キーワード]
none

[要約・感想]
「働きがい」という言葉が学術的にどういう文脈でどういう意味合いで用いられているかを調べる中で遭遇した論文。

「働きがい」とは何なのか、どのような状況で人は「働きがい」を感じるのか、ということについて実験的な研究を通して探究していく、という文脈を持った基礎研究。
「課題」、すなわち仕事に対応するものとして、相対的に「面白い」ゲームと相対的に「つまらない」ゲームを用意し、そこに「独立変数」として「共同作業」と「出来高制」という二つの変数を容易した。従属変数として「やりがい」「満足度」「面白さ」の5段評定を用いた。
結果として、(1)「やりがい」、「満足度」、「面白さ」の評定値が友人と一緒に取り組むという共同作業条件によって向上した。社会的刺激や社会的強化随伴性が「やりがい」に影響することを示唆している。(2)出来高制では、このような効果がみられなかった。

全体として、行動分析学の人の言葉でかなり戸惑うのだが、要するに、出来高制よりも社会的な要因の方が「やりがい」「面白さ」「満足度」に影響を与えている、という結論。

また、この論文では、「働きがい」を課題に対する「やりがい」「満足度」「面白さ」に類するものとして捉えているようだ。