2010年1月29日金曜日

私と経営学02 コンティンジェンシー理論−組織の環境適合論は、もはや死んだ理論なのか

タイトル
私と経営学02 コンティンジェンシー理論−組織の環境適合論は、もはや死んだ理論なのか
 
著者
野中 郁次郎
 
abstract
野中氏は、博士論文「組織と市場」中で組織の情報処理モデルを展開したが、コンティンジェンシー理論は、組織の環境適合論である。ハーバード・A・サイモンの情報処理モデルとともに、知識創造理論に影響を与えたコンティンジェンシー理論について、今号では紐解いている。
 
引用元
三菱総研倶楽部 200802, pp.20-23, 2008.
 
Keyword
なし
 
独自のKeyword
コンティンジェンシー理論
 
要約・感想
コンティンジェンシー理論を調べようとググってみて見つけた資料。
 
ようするに、ベストなパフォーマンスを発揮できる組織の構造はあくまで、環境との相互作用の中で決まるものである。組織過程は個人、集団、組織、環境をダイナミックに結びつける連続的な行動である。
 
ふと思ったのだけど、パフォーマンスが良い・悪いは別にして、組織のパフォーマンスの状態を定義するのが、コンティンジェンシーモデルなのではないか?つまり、悪い場合でも、アウトプットが悪いものとなるように各要素が均衡状態・バランスが取れた状態となっているということ。「均衡」というものを考えると、どのような要素に対しても変化を起こすだけで全体が変る一方で、小さな変化にむけた力は「均衡」を保とうとする力が逆方向にかかってくるということか。均衡を保とうと元に戻ろうとする力に打ち勝てるだけの「変化を生む力」が必要だろう。
 
また、「ある均衡状態から別の均衡状態への遷移過程」はどのようなものなのだろうか?「変革を起こす力」というものを研究テーマとするなら、そこがポイントになる気がする。
 
コンティンジェンシー理論は、もう枯れた理論と先生は見ているようだ。

2010年1月25日月曜日

安全のための小さな試みを促進する職場活動—原子力発電所の安全文化醸成に向けて—

タイトル
安全のための小さな試みを促進する職場活動—原子力発電所の安全文化醸成に向けて—
 
著者
福井 宏和, 杉万 俊夫  

abstract
Activities that could possibly grow into learning activities for developing safety culture were explored by intensive fieldwork in a nuclear power plant depending on Engestrom's activity theory. As a first step to achieve this goal,  worker's small attempts that might contribute to nurturing a safety culture were investigated. Eight kinds of activity were observed and interpreted as having the possibility to facilitate small recognition and small practice, i.e., activity including (1) workgroup as community, (2)other workgroups and other departments as community, (3) meeting drawing remarks as mediating artifacts, (4) study session and Off-the-Job-Training as mediating artifact, (5) award as mediating artifact, (6) extended leave as mediating artifact, (7) check sheet as mediating artifact, and (8) skill-transfer system as mediating artifact. 

引用元
 INSS Journal Vol.14 pp.2-10, 2007. 
 
keyword
safety culture, activity theory, learning activity, small attempts 

独自のkeyword
小さな気付きを促す要因, 小さな試みを促す要因, 組織のパフォーマンスを向上させる要因
     

要約・感想
組織内での従来の活動は、まさに従来から繰り返されてきて、今なお繰り返されている活動である。それは、その活動に内在している欠陥や支障は「日々繰り返される」ことが可能な程度に克服されており、致命的な問題もなく、つつがなく繰り返されている。従来からの活動の中でも、「ふとした気付き」はあるものだ。それは、その活動において、日々繰り返しの中で「ふとした気付き」でしか顕在化しない程度の大きさのものである。その気付きは普通は、すぐに忘れられ、気付きなど無かったかのように従来からの活動が続いていく。その「ふとした気付き」を蒸発させないためには、誰かに語る必要がある。また、語った後に、「じゃあ、こうしてみよう」という「小さな試み」を起こさなければ、その気付きは、やはり蒸発してしまい、従来からの活動⇒「ほんの少し新しい」活動という変化につながることは無い。
 
「小さな気付きの語り」と「小さな試み」を促進・阻害する要因、組織的活動は何か?参与観察から見て取った。
<促進要因>
(1)コミュニティとしての作業グループ・・・作業経験に基づいたリーダーの選出、ベテランによる若手のインフォーマルな教育、相互サポート、作業Grとしての業務遂行を目的としたグループマネジメント
(2)コミュニティを形成している他の作業グループと他の関連部署、・・・専門的知識・技能の共有、数個のGrで構成される部署全体の統括役のリーダーシップ、他Gr.にもパイプを築いているベテランの動き、+組織の風土・文化
(3)道具としての発言促進的な会合、
(4)道具としての勉強会・研修、
(5)道具としての表彰制度、・・・かなり間接的、これがコミットメントを高め、「小さな気付き」を引き出す。
(6)道具としての長期休暇、・・・他のメンバとのワークシェアリング
(7)道具としての各種チェックシート、・・・チェックシートの不備を見つけて改訂していく活動が伴っている
(8)道具としての技術伝承システム・・・内発的なデータベース
<阻害要因>
効率化圧力の増大による、時間の切り詰め
 
 

Positiveな活動(組織市民行動)を促進する要因 、
 Positiveな活動(組織市民行動)を阻害する要因
Negativeな活動(不安全行動)を促進する要因、Negativeな活動(不安全行動)を抑制する要因
 
とりあえず、要因をこの四つの次元で考えるか。。。
       
   |   P  |    N
 —┼——┼———
 促| +  |     -
 —┼——┼———
 阻| −  |  + 
この4次元で、具体的な要因を書き込んでいく。PとNのところには、具体的行動を書き込んでいく。
 

2010年1月19日火曜日

組織市民行動を規定する集団的アイデンティティ要因と動機要因の探索—職場集団と大学生集団との比較から—

タイトル
組織市民行動を規定する集団的アイデンティティ要因と動機要因の探索—職場集団と大学生集団との比較から—
 
 著者
潮村 公弘, 松岡 瑞希 
 
abstract
We investigated the relationship among organizational citizenship behavior, motivation sources, and collective identity through the comparisons between workplace groups and (hobby-oriented) university student groups. We mainly focused on exploring the functions of four kinds of motivations assessed by the Motivation Sources Inventory; 1) Intrinsic Process motivation, 2) Internal Self-concept-based motivation, 3) External Self-concept based motivation, 4) Instrumental motivaion, on organizational citizenship behavior. The results were the following: In both workplace group and university student groups, there was a negative connection of Intrinsic Process motivation and a positive connection of Internal Self-concept-based motivation with organizational citizenship behavior. Only in workplace groups, there was a marginally significant positive connection of Instrumental motivation with organizational citizenship behavior. As for functions of collective identity, in workplace groups, no connections were found amoung collective identity, the gour elements of motivation sources, and organizational citizenship behavior.On the contrary, in university student groups there were some understandable connections. This differences based on the groups were interpreted by the role of free will toattend each kind of group. In the discussion we focus on the findinds that the kind of motivation to encourage/inhibit organizational citizenship behavior depends on the nature and situations of organizations. 
 
引用元
信州大学 人文科学論文集 人間情報学科編, Vol. 39, pp.27-472005 
 
keyword
 Organizational Citizenship Behavior, Motivation Sources Inventory, Collective Identity. 
 
独自のkeyword
動機傾向, 集団的アイデンティティ     
 
要約・感想
 いい分析をしているのに、考察が非常にもったいないな・・・。論文を要約すると、
<B><U>方向性:</B></U>
「組織市民行動を規定する人の動機傾向を探る」 
 
<B><U>目的:</B></U>
組織市民行動を規定する動機傾向や組織特性の影響を調べること
 
<B><U>方法:</B></U>
「組織市民行動、モチベーション(マクレラントの動機傾向)、集団的アイデンティティを用いたパス解析」という分析を、職場と大学サークルの両方で行い、それらを比較検討する。
 
<B><U>結果:</B></U>
モチベーションと組織市民行動について、職場・大学生共に、「内因的な過程(情緒的「楽しみ」を求める傾向)」は組織市民行動と負の関係、「内的自己概念(自分が思い描く「状況のあるべき姿」の実現を求める傾向)は組織市民行動と正の関係性を持っている。また、職場においてのみ、「道具性(具体的明示的報酬を求める傾向)」は組織市民行動と正の関係性を持っているか可能性がある(有意傾向)。
一方で、集団的アイデンティティとして測った「内集団の重要性(自分が所属している集団の自分にとっての重要性)」「内集団の評価(自分が所属している集団に対する自分自身による評価)」は、大学サークルではモチベーションとの関連や、組織市民行動との関連があったが、職場では両者との関係は無かった。
 
<B><U>考察:</B></U>
・組織市民行動は、個人の内部の自己評価を高める行動である。
・組織市民行動は他者に認めてもらいたいという動機によっては促進されない。
・特に両方の組織に対する負の関係への考察から、人の一般的傾向として、内因的な過程動機に基づく活動や課題に恵まれていない人たちが、組織市民行動を積極的に行なうことを通して、地震の役割や、自身の活動や課題の価値を見出しているというダイナミクスが推量される。
・職場という収入を得るために少なくとも幾分かは強制的に所属しなければならない組織では、内集団に対する評価は、組織への自発的な貢献行動や個人の動機に影響しないと考えられる。すなわち、職場における組織市民行動は、内集団への評価や重要性からは独立した、個人の性質や職場の風土によって、動機づけや自発的な行動が決定されていると考えられる。
 
 
で、感想としては、、、
〔�〕
ここで出している動機は、「動機傾向」であって、その人の個人特性として、そういうものを求める傾向の強さ。なので、内因的過程との負の関係については、「活動や課題に『恵まれていない』」と捉えるのではなく、「そういうものを求めていない」ということを言っているはず。ということは、今回の結果から言えることとしては、以下のことであろう。
 
�「自分自身が『楽しい』と思える行動をしたい」あるいは「自分自身とる行動は『楽しい』行動であってほしい」という思いが弱い人、
また、
�「自分自身が思い描く『あるべき姿』を達成したい、それにつながる行動をとりたい」という思いが強い人
は、
(A)組織市民行動を取る傾向が強い。
 
�'「自分自身が『楽しい』と思える行動をしたい」あるいは「自分自身とる行動は『楽しい』行動であってほしい」という思いが強い人、
または、
�'「自分自身が思い描く『あるべき姿』を達成したい、それにつながる行動をとりたい」という思いが弱い人
は、
(B)組織市民行動を取らない傾向が強い。
 
〔�〕
細かい話だが、そもそも「組織特性を調べる」として集団的アイデンティティを組織特性を反映したものとして持ってきているのは良いとしても、測度として「内集団の重要性」と「内集団の評価」を因子として持ってくるのは良いのか?「重要性」と「評価」の違いが分からない。直感的には、互いに独立なものではないように思う。使う両者の違いをもう少し細かく説明してほしい。
 
また、同じく細かい話だが、考察の中の「個人の性質や『職場の風土』によって」という行、今回測定しているのは全て動機傾向であって個人特性だろう。組織特性として集団的アイデンティティを引っ張ってきてて、それと組織市民行動やモチベーションが関連があるというのなら、まだ何か言い様があるかもしれないが、今回の結果からはそれは関連がない。となると、ここで「職場の風土」が行動を引き出している考えるためのデータが全く出されていないように思う。大学と組織との違いから一般的に言えることとしたら、組織への参加における「自由意志」によって、「内集団の評価」・「内集団の重要性」と、モチベーションや組織市民行動との関係が変ってくるということだけだろう。